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財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー プレスリリース

新調査結果
先進工業国で毎年3,500人の子どもが虐待によって死亡

豊かな国々における子どもに対するひどい扱いについて初の比較分析

【ベルリン、2003年9月18日】

 本日、ユニセフ・イノチェンティ研究センターから発行された、子どもに対する虐待等ひどい扱いについての新しい調査結果によると、毎年、先進工業国において、およそ3,500人の15歳未満の子どもたちが虐待によって亡くなっています。
 このレポートは世界27カ国の豊かな国々における、子どもの身体的虐待について比較した結果をあらわした初めてのものです。

 ユニセフの調査によると、先進工業国において、毎年、身体的虐待および放置により、15歳未満の子ども3,500人が毎年亡くなっていると推定されます。もっともリスクが高いのは、より幼い子どもたちです。スペイン、ギリシャ、イタリア、アイルランド、ノルウェーといった国々では、ひどい扱いによる子どもの死亡件数は例外的に低くなっています。それに比べて、ベルギー、チェコ、ニュージーランド、ハンガリー、フランスは4〜6倍と件数が多くなっており、米国、メキシコ、ポルトガルでは10〜15倍にのぼります。

 良いニュースとしては、ひどい扱いによる子どもの死亡は、大多数の先進工業国で減少傾向にあるということです。

 ユニセフ・イノチェンティ研究センター所長のマルタ・サントス・パイス氏と子どもに対する暴力の専門家パオロ・ピンへリオ氏にによって発表されたユニセフ・イノチェンティ・レポート・カードは、先進工業国27カ国における、子どもの虐待についての統計を示しています。

同じでない統計

 子どもの死亡の分類における不整合や、“虐待”という言葉の共通定義の欠如により、子どもに対するひどい扱いについての国際的な比較データはほとんど存在しません。研究は、「ひどい扱いによる子どもの死亡が確実に高まっているのに、使用できる統計の中でそれらを十分に表すことはできなかった」と述べています。報告書は子どもの虐待についてのすべての統計は、非常に注意深く扱われるべきで、子どもの保護に関する政策を知らしめ、導くために、首尾一貫した調査方法と全国にわたる改善されたデータ収集が必要であると論じています。

 子どもの死亡の分類における不一致について述べる試みの中で、ユニセフの研究者達は、各国の虐待や放置による分かっている子どもの死亡数(これらの子どもの死亡は“死因不明”と記録されている)の合計を順位表に表しました。この仮定は、その他の死因が何も明らかにならないとき、およそその死は、法に基づく裁判所で証明され得ないひどい扱いの結果であるだろう、という考えに基づいています。こうして見直された推定値によると、ある国々のケースにおいては、子どもの死亡が2倍にもなりました。

 毎年、何千人もの子どもたちが、家庭、学校、またはコミュニティ内の暴力により亡くなっています。これは、世界が組織的に子どもたちを守ることに失敗しつつある明らかな証拠です。子どもたちは、虐待や搾取から守られ、保護を受けられる環境で生きる当然の価値があります。報告書は、子どもに対するひどい扱いと、子どもに対する暴力の範囲が広まっていることとの間の明らかな関連性を指摘し、子どもの虐待への真剣な取り組みは、子どもに対する非暴力的な文化の促進と併せて行われなければならないと論じています。

社会における暴力

 研究によると、ひどい扱いによる子どもの死のレベルと社会全体の暴力のレベルとの間に明らかな関連が見受けられます。ひどい扱いによる子どもの死亡の割合が低い国々では、殺人によるおとなの死亡の割合も低くなっています。同様に、ひどい扱いによる子どもの死亡率がひときわ高い3カ国では、おとなの死亡率も極めて高くなっています。

 ユニセフの報告書は、身体的虐待ともっとも共通して関係のあるさまざまな要素について、各国が幅広く調査するよう働きかけています。貧困やストレスは、まだその関連性が固まっているとは言えないにせよ、子どもの虐待や放置と密接に結びついている要素です。一般的な認識とは反対に、子どもを虐待する者の80%は血のつながりのある親です。

 子どもに対してひどい扱いを行う環境に関する調査で指摘された家族の問題の中でも、最も一般的でかつ深刻なのが、麻薬とアルコールによる虐待です。子どもに対する身体的な虐待と、家庭内で子どもが一緒に暮らしているおとな同士の暴力とを結び付ける強力な証拠も存在しています。しかし、報告書はまた、家庭でしばしばおとな同士の暴力を目撃している子どもの50%以上が、今まで身体的虐待を受けたことがない、あるいは、めったにない、というドイツの調査結果があることにも言及しています。

 また、レポート・カードは、すべてのOECD加盟国における体罰の法的な状況についての新しい調査もまとめています。これらの国のうち7カ国−オーストリア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン−で、子どもに対する体罰を明確に禁止する法律が定められています。また、現在のOECDに加盟するすべての国は、司法システムの中での体罰を禁止しています。また、大多数の国で、学校においても体罰は違法です。そして、数カ国以上で、現在、より広い法的な基準の導入が検討されています。

 報告書は、「子どもの権利条約」を思い起こし、政治的、法的、モラル的な圧力を高め、子どもに対する暴力は、家庭内で起こるものも含めて、人権の侵害にあたるということを法的に定めるよう論じています。

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