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静かな緊急事態に直面する世界〜清潔な水と基礎的な衛生設備へのアクセスを絶たれた数十億人にのぼる人々 ユニセフと世界保健機関(WHO)が報告書で警告 ニューヨーク/ジュネーブ 「世界で26億人を超える人々(世界総人口の40%強)が基礎的な衛生サービスを享受できず、10億人を超える人々がいまだに安全でない水源から得られた水を飲んでいる」世界保健機関(WHO)とユニセフは本日発表した報告書の中で、こう警鐘を鳴らしています。 “Meeting the Millennium Development Goals drinking water and sanitation target - A mid-term assessment of progress”(「飲料水と衛生分野におけるミレニアム開発目標の実現に向けて〜中間評価」:仮訳)と題された報告書は、ミレニアム開発目標の基準年となる1990年から、目標達成までの中間点となる2002年までの間の進展状況を、国・地域別、そして世界全体について詳細に報告しています。この報告書では、今日までの進展状況に基づいて、2015年までの目標達成に関して2つの重要な予測を立てています:
ユニセフとWHOは、世界的な都市化の流れが農村部の貧困人口をさらに社会の周辺に追いやり、都市部において提供される基礎的な社会サービスに過大な負担をかけていると警告しました。結果として、農村地帯や都市部のスラムに住む家族は、常に病気と貧困の悪循環に苦しむことになります。汚れた水と不適切な衛生設備のために真っ先に病気になるのはいつも子ども達です。さらに、非衛生的な環境は経済成長を妨げ、優れたガバナンスの成果をそいでしまうなど、より広範なマイナスの影響をもたらすのです。 「今日も世界中の各地で何百万人もの子ども達が、生きるために最も必要なものがないという静かな緊急事態の中で生まれつつあります」と、ユニセフ事務局長のキャロル・ベラミーは述べました。「基礎的な社会サービスにアクセスできる人とできない人の間で格差がますます広がりつつあり、このため毎日4,000人の子どもが命を落とし、さらに間接的に毎年1,000万人の子ども達の死に結びついています。今世界がこの差を縮める努力をしなければ、子どもの死亡数はますます増えるでしょう」 「水と衛生は公衆衛生分野における最重要因子の一つです。水と衛生は、WHOが掲げる基礎保健ケアのリストの中でも上位に位置しています。安全な飲料水と十分な衛生環境へのアクセスが確保された地域では、人々はさまざまな病気との闘いに勝利をおさめているのです」とWHO長官のリー・ジョン・ウック博士は述べました。 水と衛生の分野で最も危険にさらされているのは、サハラ以南のアフリカのような開発途上にある地域です。しかし報告書は同時に、先進工業国におけるいくつかの懸念すべき傾向についても指摘しています。1990年から2002年の間に、きれいな水と基礎的な衛生設備の普及率が2%減少しているのです。旧ソ連圏では、適切な衛生整備へのアクセスがあったのは83%に過ぎませんでした。経済面、人口面での負荷が増大しつつある今、この比率は低下する恐れがあります。 今行動を起こさなければ深刻な結果を招くことになると、ユニセフとWHOは警告しています。下痢性疾患が原因で毎年180万人もの人々が死亡しており、その大部分は5歳未満の子どもです。さらに数百万人の人々が生涯にわたって続く衰弱体質に陥っています。アフリカでは、飲み水を運ぶために400億時間の労働時間が浪費されています。また、多くの子どもたち、特に女の子たちがトイレがないために学校へ通うことができず、知的・経済的な可能性を活かすことができずにいます。 「こういった傾向を逆転させ、水と衛生の分野における世界目標に向けて前進するためには、資金的な援助だけでは十分ではありません」とキャロル・ベラミーとリー博士は述べています。多くの国々で、「一部の人々にすべてを」ではなく、むしろ「すべての人々に少しずつ」という原則に基づく国の政策が改善のための鍵となってきました。また地方レベルでは、最貧困コミュニティを配分の対象に含むよう資源配分を見直し、地方政府と民間部門が協力して経済的に実施可能な解決策を導入しなければなりません。 「2015年の目標を達成するためには、新たに都市に住むようになる10億人の人々にサービスを提供するという政治的意志を各国が確立し、資源を確保するとともに、適切な衛生設備へのアクセスを持たない農村人口を10億人近く減らす必要があります。さもなければ、数十億とはいわなくとも、数百万人の人々を開発プロセスから取り残す恐れがあるのです」とリー博士は述べています。 水と衛生の分野における進展を評価する一連の報告書の最初のレポートとなるこの報告は、世界中のすべての指導者に対する警鐘になるとユニセフとWHOは言います。基礎的なサービスでの格差を取り除くために、すべての国でまだまだ努力が必要です。2015年のミレニアム開発目標の達成期限までに、どのようにしたらこの格差是正を達成することができるのか、データは明らかな答えを示しています。 また、非常に勇気づけられる兆しも見られます。多くの国々で、非常に困難な状況にも関わらず、水と衛生分野の普及率に大きな改善が見られました。この前進は、政府が積極的に水と衛生問題解決に優先的に取り組んだり、地域に合った対応策を模索した結果の表れです。 「最貧国でさえ、短期間の間に大きな改善を実現することが可能だということを今回の報告書は明らかにしました。そういった点でこの報告書は重要なものです」とキャロル・ベラミーは述べました。「今日の傾向を明らかにし、対策を見直すことによって、生きるために最も必要なもの——清潔な水と適切な衛生設備——を、2015年までにすべての人々の手にいきわたらせることができるのです」 ※ 2000年に開催された「国連ミレニアム・サミット」において、国連加盟国は8項目のミレニアム開発目標に合意しました。この目標では、改善された水源へのアクセスを持たない人の割合、および適切な衛生設備へのアクセスを持たない人々の割合を、1990年の基準年から2015年の間で半分に減らすことをうたっています。 ■ 報告書に関する詳細はユニセフ本部のホームページをご覧ください。(英語)
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