ユニセフ（国連児童基金）・WHO（世界保健機関）合同プレスリリース
世界の麻疹（はしか）による死亡　過去6年で48％減少
〜アフリカで劇的な改善〜

[2006年3月9日、ジュネーブ／ニューヨーク発］

ケニアのはしか予防接種キャンペーンのようす（2002年）

WHO（世界保健機関）とユニセフ（国連児童基金）は、9日、1999年から2004年の間に、世界の麻疹（はしか）による死亡がほぼ半減したと発表した。

1999年に87万1000件だったはしかの死亡件数は、2004年には推計で45万4000件となり、この6年間で死亡数が48％も減少したことになる。WHOとユニセフは、世界各地で展開された、国を挙げての麻疹予防接種キャンペーンの成功や、より多くの子どもたちが、各国で基礎保健医療サービスの一環として整備されてきた定期予防接種サービスにアクセスできるようになったことが、この成果につながったと説明している。

この間、死亡数が最も減少したのはサハラ以南のアフリカ。世界でも麻疹による「被害」が一番大きい（はしかの蔓延がひどい）この地域では、麻疹の発生件数・死亡件数共に60％の減少を達成した。

WHO事務局長李鍾郁は、「これは、世界の医療保健支援に関わる我々にとって、大変大きな成果と言える。このペースでゆけば、麻疹による死亡を半減させるという世界的な目標も容易に達成できるのではないだろうか」と述べている。

麻疹は非常に伝染性の強い病気の一つである。安全で効力が高く、かつ安価なワクチンは1960年代から存在しているが、この疾患により誘発される重度の下痢や肺炎等により、2004年だけで5歳未満の子ども41万人の命が奪われたとされている。また、命を奪われなくとも、失明や脳障害等の後遺症を負う子どもも少なくない。麻疹の発生が多い国々の多くでは、定期予防接種サービスが充分に整備されていないために、子どもたちが予防接種を受けられない情況に置かれている。

ユニセフ事務局長アン・ベネマンは、次のように訴えた。「麻疹は途上国の子どもたちの命を奪う最大の原因の一つだが、この情況は変えられるはずだ。安価で安全でどこでも手に入るはずの麻疹のワクチン。そのたった2回分の予防接種が確保できれば、全てでは無いとしても、ほとんどの子どもたちを麻疹から守ることができるのだから。」

WHOとユニセフは、世界の麻疹による死亡の98％が起こっている47の重点国*に、その麻疹対策の努力を集中させている。定期予防接種サービスの向上、麻疹に罹患した子どもの治療、疾患調査網の構築がその主な内容である。また、予防接種キャンペーンの展開も効果を上げており、1999年から2004年にかけ、5億もの子どもたちがこうしたキャンペーンを通じて麻疹の予防接種を受けた。

リベリアのはしか予防接種キャンペーンのようす（2004年）

アフリカ諸国が劇的な改善を見せた一方、南アジア地域の改善は遅れている。この地域では、まず予防接種率を最低でも90％にまで引き上げる必要がある。また、定期予防接種サービスを通じて、全ての子どもが生後9カ月の時点で1度目の麻疹ワクチンの接種を受けられるようにし、2度目のワクチン投与を定期サービスもしくは予防接種キャンペーンのどちらかでなされるようにしなければならない。

麻疹による死亡数の減少に、国際的な支援の枠組み：「はしかイニシアティヴ」（Measles Initiative）が果たした役割は大きい。2001年以来、ワクチンと予防接種のための世界的同盟（the Global Alliance for Vaccines and Immunization）等の協力を得て、1億5000万ドル以上の資金を確保し、アフリカ40カ国における予防接種活動をサポートした。こうした支援は、今後、サハラ以南のアフリカ地域を除いて世界で一番麻疹の死亡率が高い南アジア諸国に向けられる。また、これまでの支援で実施されてきた各国での子どもの保健キャンペーンを通じ、麻疹の予防接種のみならず、ポリオの予防接種、マラリア予防のための殺虫剤処理済の蚊帳やビタミンA、虫下し薬の普及を図ってゆく。

「はしかイニシアティヴ」　( www.measlesinitiative.org )

麻疹の発生と同疾患による死亡数を減少させるため、国連財団、米国赤十字、米国疾病予防管理センター、ユニセフ、WHOが2001年に発足させたパートナーシップ。

ワクチンと予防接種のための世界的同盟（the Global Alliance for Vaccines and Immunization）の他、日本の国際協力機構（JICA）も重要なパートナーの一員である。

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