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財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー プレスリリース

ユニセフ、アガニスタンの子どもの現状を警告

【2007年10月25日 ジュネーブ/カブール発】

アフガニスタンでは、タリバン政権崩壊後、子どもたちの状況が改善された一方、多くの子どもたちが、いまだに深刻な状況に晒されていることを警告するユニセフの報告書、「チャイルド・アラート・アフガニスタン」が発表されました。報告書は、最近急激に状況が悪化したアフガニスタン南部の状況が特に不安定であると訴えています。

近年、保健、栄養、教育の各分野では、著しい改善が見られました。アフガニスタンの大多数の人が、基本的保健サービスへのアクセスが可能となりました。

例えば予防接種の普及率。2001年は56%にすぎませんでしたが、2006年には90%にまで上昇しました。ビタミンAの普及率は95%、2%以下だったヨード塩の利用は30%近くまで向上しています。就学率も大きく改善され、しかも、学校へ通う子どもたちのうち3分の1は女の子です。タリバン政権下では、女の子の就学率はおよそ3%に過ぎませんでした。

© UNICEF/HQ07-1284/Noorani
英国のユニセフ親善大使
マーティン・ベル氏

しかし、これらの成果は、非常に脆弱な基盤の上に成り立っています。最近アフガニスタンを訪れた英国のユニセフ親善大使マーティン・ベル氏は、「チャイルド・アラート」の中で、アフガニスタンの何百万人もの子どもたちが危険に晒されていることを報告しています。

「アフガニスタンの平和と発展のために、多くの計画や提案、プロジェクトが実施され、多くのパートナーや国が協力しているにもかかわらず、学校が次から次へと閉校となり、また殺害される子どもの数が増加しているという状況を目の当たりにしました。」 ベル氏のアフガニスタン訪問は、今回が二度目。この報告書の制作のために訪問しました。「特に、アフガニスタン南部に暮らす家族は、激しい内戦の最中にあるため、人道支援の手が届きにくい状況です。」

ベル氏は、大変苦しい状況にある人々を訪れました。ヘラートにある仮設工場では、毎日9時間半、ヤギの毛を分別して、一日2ドルしか稼げない女性たちに会いました。彼女たちの赤ちゃんは、仕事の間は、工場の天井から吊るされていました。首都カブールでは、ストリートチルドレンをはじめ、社会から最も取り残されている人々に会いました。女性用の刑務所には、49人の女性と彼女らの子どもたち35人が収容されていましたが、そこでは、祖父ほど年の離れた男性と結婚させられた少女たちにも会いました。

© UNICEF/HQ07-1110/Noorani

タリバン政権時代、女の子は正式には学校に行くことができませんでしたが、この5年で、女の子の小学校就学率は劇的に向上しました。教育省によると、2007年は、これまでにおよそ600万人の子どもたちが学校に入学しています。これは、30年におよんだ紛争が終わり、教育システムがつい最近回復し始めたという状況を考えると、驚くべき成果と言えます。

学校での栄養・水・衛生サービスの提供、女性教師の訓練、学校へ通えない女の子の支援など、「子どもにやさしい学校」を促進するための新しい計画は、女の子の就学率のさらなる向上につながります。ユニセフは、また、元子どもの兵士に対しても、大工仕事や電気工学などの役立つ技術を教え、彼らが訓練を受けて、社会に復帰できるような支援を実施しています。

激しい戦闘に悩むアフガニスタン南部でも、今年、多くの子どもたちが学校へ戻ることができました。しかし、いまだ何百校もの学校が、不安定で危険な状態にあります。 人道支援のアクセスがますます難しくなっている地域があります。国連は、激しい戦闘などから、人道援助スタッフの安全が確保できない極度に危険な地域が少なくとも78箇所あるとしています。

© UNICEF/HQ07-1074/Noorani

こうした制約の中で人道援助活動を継続すること自体、大きな挑戦です。2007年は、"休戦期間”に設定された時期を利用し、ユニセフとWHO(世界保健機構)は、保健省と協力し、全国的な予防接種キャンペーンを展開。国際予防接種デーの取り組みのひとつとしてのこのキャンペーンでは、総勢1万5000人の予防接種スタッフが、アフガニスタン全域を周り、子どもたちに予防接種を実施しました。アフガニスタン国内の新たなポリオ感染者は、2006年の31人から、2007年1月から7月の期間に9人にまで減少しました。この9人の内7人は、アフガニスタン西部と南部の不安定な地域で報告されています。

ベル氏は、アフガニスタンの成功例として、このポリオ撲滅キャンペーンをあげています。「紛争下のアフガニスタンの人々がこれだけの成果を上げることができたのです。もし平和が訪れたら、アフガニスタンの人々は、もっと凄いことを成し遂げられるんじゃないでしょうか?」。

「チャイルド・アラート」は、特に女性と女の子の安全を確保する必要性を訴えています。「恐怖心」は、教育や保健などの基礎的な社会サービスを享受することへの大きな障害となります。アフガニスタンの一部の地域では、「夜の手紙」と称される脅迫状が出回り、教員や親御さんたちは、恐怖から、子どもたちを家から出したがらない状況が広がっています。

また、本報告書は、深刻な妊産婦死亡率の改善についても、強く訴えています。アフガニスタンは、世界でも、妊産婦死亡率がもっとも高い国のひとつです。女性が、設備の整った保健施設を利用できるようにならないと、この割合を減らすことは困難でしょう。

ベル氏とともに、ジュネーブで本報告書を発表したユニセフ・アフガニスタン事務所のキャサリン・ムベンゲ代表は、次のように述べています。 「子どもたちが守られ、子どもたちの可能性が最大限発揮できるような環境をつくっていくことが必要です。教育や保健サービスの面で、子どもたちの状況が改善された事実は、全ての人が協力すれば、いろいろな困難を克服できるということを実証しています。ここ数年の間に達成してきたことを維持し、アフガニスタンの全て子どもたちに明るい未来を約束するためには、もっともっとたくさんのことをしていかなければなりません。」

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