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国連、ミレニアム開発目標の中間報告を発表【2007年7月2日、東京発】
ミレニアム開発宣言では、大半の目標の達成期限を2015年としています。15年という制限期間の中間地点にさしかかり、最初の5年間における前進を概観する報告書が発表されました。(英語版)同報告書は、国連内外の多数の国際機関からのデータに基づいており、現在まで進捗状況が最も包括的かつ世界的に分析されています。 予想された通り、成果は一様ではありませんでした。しかし、世界のリーダーがミレニアム宣言に調印した2000年から、明確な成果が広範囲な地域で現れ始めていることが分かりました。目標の達成が最も困難と思われた地域においても成果が出ていることが明らかになり、開発途上国や開発に携わるパートナーたちの努力や、世界的パートナーシップの功績を実証しました。 アジアの報告アジアでは急速に進む経済成長に支えられ、1日1ドル未満で生活する人口の割合を半減させ、極度の貧困と飢餓の撲滅に向かって飛躍的に前進していることが同報告書により明らかになりました。 さらに東アジアでは大きな成果が報告されています。1990年時点で33%であった極度の貧困下で暮らす人々の比率が、2004年には9.9%まで削減されました。 同比率は、東南アジアでも1990年までに既に20.8%まで削減されていましたが、2004年に更に6.8%まで減少しました。 これらのデータから、アジアの進展は、「2015年までに極度の貧困と飢餓を半減させる」というミレニアム開発目標1の達成に向けて順調に進んでいると報告されています。 しかし、その一方で、アジア地域の中には経済成長の恩恵を享受できていないところがあることも、同報告書で示唆されています。 南アジアでは人口の30%が依然として1日1ドル未満で生活しています。また、貧困削減という未曾有の喜ばしい傾向の影で、国内における格差が急激に拡大しています。 東アジアでは劇的に経済格差が深刻化し、所得(又は消費)階層最下位20%の世帯が得る所得/消費の割合が、1990年の7.3%から2004年には4.5%に減少しました。 同様に、同報告書では、アジアにおけるミレニアム開発目標の達成は、他の分野(保健、環境の持続可能性の確保、ジェンダーの平等)における諸問題によって阻害される可能性があることも指摘されています。 一部の地域では、森林伐採や無計画な都市化、HIV/エイズ感染の拡大などが阻害要因として挙げられています。 子どもの栄養状態改善面の進歩は、いまだに許容できないほど遅れています。 報告書によると、もし現在の傾向が継続すると、アジアは南・東南アジアにおける前進が緩慢であるがために「低体重の子どもの割合を半減させる」というミレニアム開発目標を達成できないと危惧されています。 南・東南アジアは、栄養不良の5歳未満児の割合が最も高く、2005年時点においてもそれぞれ46%、28%の5歳未満児が栄養不良をわずらっています。 また、ミレニアム開発目標のひとつ、ジェンダーの平等の推進と女性のエンパワーメントに関するアジアでの取り組みはいまだ思わしくありません。 報告書では、大多数の女性が現在においても職業活動から締め出され、十分な保健ケアを受けられずにいることが示されています。 南アジアでは、非農業分野の有給雇用労働に従事する女性の比率は1990年の13%から2005年には18%に上昇しましたが、報酬を伴う雇用労働(農業労働を除く)に従事する女性の割合は、世界で最も低くなっています。 保健の分野においては、南アジアとサハラ以南のアフリカで妊産婦死亡率が最も高く、出産時に専門技能者が付き添う割合も最も低いことがわかりました。 南アジアでは、専門技能者が付き添って行われる出産の割合は、3人にひとりをわずかに上回る程度であることが報告されています。 政治や政府においては、女性参加があまり推進されていないことが報告書によって明らかになりました。 それでも南アジアでは、女性議員の割合は1990年時点で6%でしたが、2007年では13%に改善しました。 東南アジアでは同じ期間内に10%上昇し、17%になりました。しかし、東アジアでは女性議員は1%減少し、19%になりました。 成果が認められた事例の数々は、多くの国々において成果が挙がっていることを証明しています。 しかし同時に、2015年までにミレニアム開発目標を達成させるためには、具体的な取り組みを、2015年までに早急かつ継続的に展開しなければならないことが示されました。 ミレニアム開発目標達成のためには、更なる努力が求められています。
ミレニアム開発目標 中間報告【概要】 ミレニアム開発宣言では、大半の目標の達成期限を2015年としている。15年という制限期間の中間地点にさしかかり、最初の5年間における前進を概観するデータが入手できるようになった。 本報告書は、国連内外の多数の国際機関からのデータに基づいており、現在までの進捗状況が最も包括的かつ世界的に分析されている。 成果は、予想された通り、一様ではない。世界のリーダーがミレニアム宣言に調印した2000年より、明確な成果が広範囲の地域で現れ始めている。 目標の達成が最も困難と思われた地域においても成果が出ていることが本報告書で明らかになったことは、心強いものである。 これらの成果は、開発途上国や開発に携わるパートナーによる比類なき努力や、ミレニアム宣言の中に入れられた世界的パートナーシップの構築がある程度成功したことを実証している。 より成功した事例を見ていく限り、ほとんどの国できちんとした成果を挙げることは不可能でないことを示している。 が、同時に2015年までにミレニアム開発目標を達成させるためには、具体的な取り組みを早急かつ継続的に展開しなければならないことを示している。 全ての関係者がミレニアム宣言、そしてそれに続く宣言で表明した約束を、すべて、きちんと果たすことが必要なのである。 以下の項目は、現在までに成し遂げられた前進を示す指標の一部である。
これらの成果は、「何が達成できたか」という点を明らかにすることによって、同時に残された課題を浮き彫りにし、また、すべての関係者が公約を完全に果たすことで、どの位の改善が今後さらに見込めるかを明らかにしている。現在、本報告書で取り上げている8つの地域のうち、ミレニアム開発目標達成に向けて順調な前進を見せているのは1地域のみである。一方で、サハラ以南のアフリカでは、開発目標の達成が最も難しいと予測されている。アジアの一部地域を含め、顕著な前進を遂げた地域においても、保健や環境の持続可能性の確保などの分野においては困難を強いられている。概して、若者の雇用機会の不足や、ジェンダーの不平等、急速かつ無計画な都市化、森林伐採、深刻化する水不足、そしてHIV/エイズの有病率の高さが前進を阻害している。 それ以上に、紛争中・紛争後の国の不安定な状況が、長期的な開発努力を限りなく困難なものにしている。しかし、ミレニアム開発目標を達成できないと、不安定な状況や紛争の危険性がさらに高まりかねない。開発と治安の確保が相互依存関係にあることは学術的にも認識されているにも関わらず、国際社会においては、両者はお互いに独立した、別個のものとして扱われることがあまりにも多いのが実情である。 取り組まなければならない課題の一例
本報告書はまた、国内に存在する格差をも浮き彫りにしている。具体的には、例えば、国民の中の特定のグループ−農村部に暮らす人々や、公式教育を受けていない女性を母親に持つ子ども、および最貧世帯に属する人々−が、同じ国のほかの人々がミレニアム開発目標の具体的目標達成に向けて着実な前進を見せている場合でも、その歩みから取り残されているのである。この傾向は、とくに保健サービスと教育へのアクセスにおいて顕著である。ミレニアム開発目標を達成するためには、各国は更なる資源を動員するとともに、貧困層が恩恵を享受できるような形での公共投資を実施する必要がある。 迅速かつ大規模な前進は不可能ではない政府の強固なリーダーシップと貧困層のニーズに焦点をしぼった政策・戦略、そして国際社会からの十分な財政的・技術的支援という3拍子が揃えば、ミレニアム開発目標達成に向けた迅速かつ大規模な前進が可能であることが,幾つかの開発途上国によって証明されている。 特にサハラ以南のアフリカでは、農業生産量の向上(例:マラウイ)、初等教育就学率の改善(例:ガーナ、ケニア、ウガンダ、タンザニア)、マラリア抑制(例:ニジェール、トーゴ、ザンビア、ザンジバル)、農村部における基礎保健サービスへのアクセス改善(ザンビア)、大規模な森林再生(ニジェール)、水・衛生設備へのアクセス改善(セネガル、ウガンダ)などの分野において、目覚しい成果があげられてきた。今後はこれらの現実的成功を他の地域にも応用し、規模を拡大させていかなければならない。 国連からの支援を受けて、多くの開発途上国(特にアフリカ諸国)がミレニアム開発目標の達成に向けた戦略策定を進めている。2007年半ばの時点で、サハラ以南のアフリカ41カ国が、ミレニアム開発目標や国連において採択されたその他の開発目標に歩調を合わせた国家開発戦略の策定にとかかっている。ミレニアム開発目標が掲げられてから中間期にあたる今年、国際社会はこれらの開発戦略の策定を支援するとともに、目標の達成に向けた前進の速度を加速させていく必要がある。 全般的に、ミレニアム開発目標達成のための戦略においては、貧困国の経済成長実現を目的とする多面的なアプローチを採用する必要がある。これには、ディーセント・ワーク(「安心して働くことのできる仕事」)に就くための雇用機会を多数創出することなどが含まれる。これはひいては、特に保健や教育分野における人間開発のための包括的プログラムや、生産能力の育成や物理的インフラ設備の構築が必要になることを意味している。いずれの場合においても、これらプログラムの実施にどれだけの資源が必要か、それを数値化しなければならない。またプログラムの実施にあたっては、公的支出に対する中期的アプローチがベースとなるべきである。そして、これらすべての取り組みを支えるためには、適切な国家統計システムや公的説明責任遂行の強化が必要となる。 ミレニアム開発目標はまた、安全保障活動および人道支援活動と長期的な開発努力との調整を図り、紛争後の復興戦略の中に体系的に組み込まなければならないものである。ミレニアム開発目標に定められた諸目標は、各国が救援・復興から長期的開発に移行する際の進展を計るベンチマークにも利用できる。 最貧国や最も不利な立場に置かれた国々は、自力ではミレニアム開発目標を達成させることはできない。先進工業国は、政府開発援助(ODA)支出額の割合を2015年までに国民総所得(GNI)の0.7%に引き上げるという長年の公約を果たさなければならない。特に主要8カ国(G8)は、「2010年までにアフリカ向け援助額を倍増させる」という2005年にたてた公約を実行し、欧州連合(EU)加盟国は2015年までにGNIの0.7%をODAとして拠出しなければならない。これらのコミットメントにも関わらず、2005年から2006年にかけてODAの拠出額は減少しており、2007年も債務救済が縮小されることにより、ODAは前年度をわずかに下回ると予測されている。 援助の質を高めることが必要である。そのためには、ODA受け入れ国の政策に合わせた援助を行い、各国に継続的かつ予測可能で確実な支援を提供し、また、これらの支援がドナー国への“ひも付き援助”とならないよう保証しなければならない。このために、ドナー国は支援の形を(単年度でなく)複数年にし、支援の不確実性を改め、先まで見込める形にすべきである。追加財源の使途としては、過去数年間においてその有効性が証明されてきた「クイック・インパクト」イニシアティブを、国内において広めることも手である。 開発のためのパートナーシップのもうひとつの要素として、また2001年にドーハにおいて合意されたように、すべての国の政府は、現在行われている貿易交渉で、有益かつ公平な結論が出るよう、つまり、国際貿易システムや世界貿易協定が全ての開発途上国の開発に資するものになるよう、一層努力しなければならない。 気候変動は新たに出現した課題ではあるものの、各国の開発戦略において不可欠な要素であり、国際的な開発課題の中でも、より重要な位置を占めるべきものである。開発に関わる全てのパートナーは密接な協働作業を行い、この世界的課題に対処すべく、世界的な共通戦略を展開しなければならない。 国連経済社会問題担当事務次長
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