インド・バングラデシュ・ネパール モンスーンによる洪水で2000万人が被災
【2007年8月3日 ニューヨーク発】
ユニセフは、南アジアで、モンスーンによる豪雨が続き、深刻な被害が出ていると訴えました。既に大規模な被害を受けているインド北部、ネパール、バングラデシュでは、激しさを増している豪雨が、なお数日間続くと予想されています。3カ国で、これまでに2000万人の人々が被災し、過去最悪の洪水被害となる見込みです。
家を失い、避難場所も確保されず行き場をなくした人々の正確な数は把握されていません。何十万人もの人々が家、財産、家畜、土地を失いました。被害の大きかった地域では、広大な土地一帯が完全に浸水し、水位もいまだに上昇しています。このため多くの村やコミュニティが完全に孤立しています。ネパールの高地では地すべりがおき、毎年のようにモンスーンによって被害を受けている村々で、更なる被害をひき起こしています。
前例に無いほど広大な地域に重大な被害を及ぼした今回の洪水。前例に無いほどの多数の被災者に、人道的支援も困難を極めています。保健センターや病院などの保健インフラが崩壊し、被災地では、シェルター、安全な水、食べ物、緊急医療品、調理道具が緊急に求められています。食料が足りません。水を媒介とする伝染病、皮膚感染症の拡大が心配されています。被災地の貯水システムも、洪水によってその姿形すら残っていません。
ユニセフは特に、女性や子ども、そしてこの地域の人口の4割を占める青少年への被害を憂慮しています。こうした状況に対する抵抗力が弱く、脱水症状や下痢の被害を受けやすいのです。
バングラデシュ
今年は特に降雨量が多いモンスーン。これにより、過去数週間にわたり、激しい雨が降り続きました。インドのアッサムからジャムナ川にかけて河川が氾濫した影響で、バングラデッシュ北部で深刻な洪水がおこりました。これに追い討ちを掛けたのが、バングラデッシュ全土を過去数日間襲った度重なる豪雨。近年まれに見る最悪の被害をもたらしています。
最も深刻な被害を受けたのは、シラジガン、クリグラム、ファマルパル、ボグラ、タンガリの5地域。同様に、ネトロコナ、ガイバンハ、ニルファマリーも、大きな被害をうけました。首都ダッカは、数日に及んだ河川の氾濫によって低地へ水が溢れ、市東部で大きな被害が発生したものの、全体としては部分的な被害に留まっています。
2007年8月1日現在、洪水による被害者数として、現地厚生省は、881名の下痢、65名の急性呼吸感染症・毒ヘビによる被害、さらに8名の溺死を報告しています。一方、これまでにユニセフに入った情報によると、ダッカ地区の小学校1022校と2353の学校が休校となっています。また、河川による侵食のため、2つの地区内で10校が完全に崩壊しました。
バングラデシュ政府は、被災状況のモニタリングと支援活動の調整チームを発足。601の医療支援チームを被災地に派遣しました。ユニセフは、現地厚生省の要請に応じ、医療品、経口補水塩を提供。1577万個の飲料水浄化用タブレットを搬送し、BP−5と呼ばれる栄養強化ビスケット、ビニールシート、キッチンセット、教育キットなどの支援物資を準備しています。
インド
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© UNICEF india/2005/lahi |
2005年にも大きな洪水被害にみまわれました。 |
ヒハール州やウッタルプラデーシュ州などインド北部の状況は、過去2〜3日でより一層深刻さを増しています。これらの州は、インドでも最も人口が密集し、また、最も貧しく弱い立場の人々が暮らしている地域でもあります。このため、地元政府の支援能力も、国の他の地域に比べ限られています。
政府の推定によると、死傷者は138地域で1103人に上り、11万2000世帯の家屋が深刻な被害を受けたといわれていますが、この数字はさらに今後も増加する見通しです。
洪水の被害を受けた地域では、安全な水の確保が重大かつ緊急を要する問題となっています。ほとんどの井戸が埋没してしまい、多くの被災者が洪水の水を飲まざるを得ない状況にあると伝えられています。
今後も洪水の規模や強さが増すにつれ、多くの被災地で救援の規模拡大が必要となってきます。
8300万人が暮らすビハール州の被害状況は、日に日に深刻になっています。州政府によると、洪水によって14地区の700万人が洪水によって深刻な被害をうけたといわれています。
一億6千600万人が暮らすウッタルプラデーシュ州。ここでは、5000以上の学校が洪水によって休校を余儀なくされています。また、住む家を失った人々の避難所となっている学校もあります。洪水によって被害を受けた校舎は大規模な修復が必要となっています。政府は、支援物資を供給し、建物の修復を始めており、警察の協力で救助活動が行われ、支援物資も人々に届き始めていますが、依然十分とはいえない状態です。
アッサム州では、27地区のうち25の地域が水浸しになり、推定550万人が被災しました。現在480の救援キャンプと264の臨時避難所に26万人が避難しています。
ユニセフは、被害を受けた全地域において迅速な調査を行い、支援の範囲やニーズを確認しました。すでに、あらかじめ準備されていたORS(経口補水塩)、浄水タブレット、蚊帳、水を入れるポリタンク、浄水剤パックなどは支給が開始されていますが、今後も州政府からの援助要請にも対応できるように準備を始めています。
上述の3州では、支援機関が定期的に集まり、話し合いが行われています。ユニセフは、NGOや国際NGO、政府機関と連携をとりつつ、活動の中心的な役割を果たしています。
ネパール
ネパール内務省と赤十字社によると、死者84人、家を失った人は9700世帯といわれています。また、2週間で被災者は32地域27万人にも上っています。
洪水のため、村落開発委員会の多くは中断されたままになっていますが、被害状況の数字は何度も確認され、詳細状況の把握や今後の支援要請に役立てられます。
主に食料、飲料水、避難所が不足する一方、少なくとも5つの地域で、熱病、緊急呼吸感染、下痢、水よって引き起こされる病気、毒蛇の被害なども報告されています。
今年の洪水の被害で顕著なのは、これまでのように水が流れていかず、留まったままであること。そのため、多くの日干しレンガ造りの家が崩壊し、ネパールの主要な穀倉地帯であるテライ地域では、何千ヘクタールにも及ぶ田植え期の水田が壊滅しました。
ユニセフ・ネパール事務所は、備蓄の支援物資の中から、3万世帯分の浄水剤、ORS(経口補水塩)6000袋を支給、さらに、防水シート、バケツ、毛布、応急処置用品など、食料以外の支援物資の供給を開始しています。
ユニセフはさらに26万ドルを支援活動に充て、政府主導の支援活動に協力したり、子どもや女性など社会的に弱い立場の人々を守るなど、他の国際機関やNGOと協力しながら、さまざまな支援活動を展開しています。
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