中南米地域、何百万人もの「存在しない」子どもたちのために団結
地域の子ども6人に1人が出生登録されず
【2007年8月28日 アスンシオン/パラグアイ発】
中南米地域の各国政府、ユニセフ、市民団体は、出生登録がないために法的身分が認められていない子どもたちの憂慮すべき問題に対処するための会議を開催した。
地域全体では6人に1人が出世登録されず、公的な身分を持たない「法的に存在しない」存在となっている。この数値は、中南米で出生1,100万人当たり実に200万人が出生登録されていないことを意味している。出生証明のない何百万人もの子どもたちは、保健や教育などの基本的サービスを受けることができず、日常的な搾取と危険に直面する。
ユニセフ・中南米カリブ海地域事務所代表ニルス・カストバーグ氏は次のように述べた。「メキシコのチアパスで暮らすマルコス・アレクサンドロ君は、10歳になってようやく登記簿に記載され、学校に行くことができるようになった。パラグアイでは、生後1年以内に出生登録される子どもは全体の35%に過ぎず、残りの子どもたちは国民として存在していないことになる。出生登録をしないと、子どもたちは教育や病院の診療を受けることができず、パスポートを取得したり、法的に家族の一員として認めてもらうこともできない。また、人身売買などの深刻な犯罪から子どもたちを守ることもできなくなってしまう。」
今回の会議は地域全体としてこの問題を初めて取り上げ、「私を登録し、目に見える存在にしてください」というスローガンのもとで開催されている。3日間にわたる会議では、2015年までにすべての子どもたちが無償で適時に出生登録されるようにすることが合意され、地域および国ごとの計画が作成されることになっている。また、出生登録が子どもの権利を行使する重要な方法のひとつであるということに世間の注意を向けることも目的としている。出生登録は、それだけでは完全でないが、子どもの身分を保障し、社会的に無視されたり、不利益を被っている子どもたちを見出して法的に保護するための手助けとなる。
「第1回出生登録と身分保障の権利についての中南米地域会議」は、パラグアイ政府、ユニセフ、米州機構、プラン・インターナショナルが共同で開催した会議である。18カ国からの代表団には政府高官、人口登録にかかわる技術専門家、市民団体なども含まれている。
プラン・インターナショナルのアメリカ地域代表ピア・スタバスマイヤー氏は次のように語った。「地域内の各国政府がこの会議に参加し、熱意を表明してくれたことを我々は大変うれしく思っている。会議の開催までには長い時間がかかったが、この大きな反響に苦労が報われた思いだ。この問題の解決はきわめて重要であり、中南米のすべての子どもの権利を保障するための大きな一歩となる。我々の多くが認められている基本的な権利と機会を何百万人もの子どもたちが日々、否定されているのだ。これらの権利と機会が認められるようにするため、我々はともに力を合わせて活動を続けていきたい。」
出生登録は子どもの安全と成長のために欠かせないばかりでなく、国家の発展にとっても不可欠である。保健や教育にかかわるサービスへのアクセスが法的に保障され、十分活用できた子どもたちは、将来成長して、社会活動に貢献できる国民になる。また、国家は、出生登録によって国民の状況を詳しく知ることができるため、今後ますます限られてくる資源を有効に活用することができる。さらに、国家予算をより計画的に、より必要とされるところに配分することが可能になる。
2005年以来、ユニセフ、米州機構、プラン・インターナショナルは協力して、「私を登録し、目に見える存在にしてください」というスローガンのもと、また「市民権の基本要素として、身分を持つことが保障される権利」の実現をめざして、各国政府や市民社会に働きかけている。米州機構のアメリカ地域市民権普及プログラム部長マリー・クレア・アコスタ氏は、「市民権とはさまざまな権利を行使できることを意味しており、民主的統治を支える柱のひとつである」と強調した。
会議は結論と勧告で締めくくられ、来年カリブ海地域で再び開催されることが予定されている。