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財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー プレスリリース

国連「武力紛争下の子どもたち」レポートから10年
「紛争の中身は変化したが、さらに多くの子どもたちが標的に」
国連最新報告書発表

【2007年10月17日 ニューヨーク発】

CHILDREN AND CONFLICT

現在も世界各地で頻発している紛争が、多くの子どもたちから「子どもが子どもとして生きる機会」を奪っています。17日に発表された国連の最新レポートが、警鐘を鳴らしています。グラサ・マシェール氏が1996年に行った、武力紛争下の子どもたちについての先駆的研究から10年。子どもたちが置かれている状況に、改善は見られていません。

ユニセフと国連子どもと武力紛争問題特別代表がまとめたこの最新報告書は、紛争によって子どもたちが現在も変動的で破壊的な被害を受けていることを強調しています。軍隊や武力グループによる不法な強制的入隊や、性的暴力のような戦争犯罪からこどもたちを守る問題・課題に関しては、一定の成果が見られましたが、報告書は、紛争下に置かれている子どもたちの虐待を無くすため、具体的な行動を取るよう国際社会に訴えています。

報告書の執筆にあたった国連子どもと武力紛争問題特別代表、ラディーカ・クーマラスワミー氏は、次のように述べています。「国際社会は、(この10年間)確固とした法的保護の枠組みを成立させるために非常に積極的に取り組んできました。しかし、(紛争当事者に)法を順守させるために、さらなる努力が必要です。また、罪を犯した者の多くが罰せられていない現状を許さず、子どもたちに対するあらゆる暴力を撲滅するために、更に努力しなければなりません。」

この10年の間に、紛争は、子どもたちに、かつてよりも深刻な被害を与えるようになってきました。学校が標的となり、子どもたちから教育の機会を奪っています。兵士や性的奴隷、家政婦などとして働かせるための誘拐も頻発しています。また、そのような「直接的な被害」に遭わなくても、紛争地帯では、子どもたちは、往々にして非常に弱い立場に置かれてしまいます。子どもたちの命や生活を守るお父さん・お母さん方の命が脅かされるからです。

ユニセフのアン・ベネマン事務局長は次のコメントを寄せています。「紛争下の子どもたちへの危機は増大しています。銃弾や砲撃の脅威に晒されているだけではありません。暴力、虐待、搾取の被害に遭う子どもたちが増えているのです。無数の武装勢力は、(兵士ではなく)一般市民を狙うようになってしまったのです。子どもたちは、その犠牲者なのです。」

紛争によって子どもたちの命を奪うのは、武力攻撃に限りません。紛争によってもたらされる栄養不良、病気、難民化、貧困なども、子どもたちを襲います。

国連の最新報告は、全ての国連加盟国に、教育や保健、栄養、水と衛生のような基本的サービスを提供し、子どもたちを守る責任を果たすよう強く求めています。 「紛争の前や紛争の間、また紛争後。どんな時であっても、子どもたちは、最優先されなければなりません。また、全ての和平プロセス、平和構築プロセスの中に、子どもたちが参加する機会も確保されなければなりません。」クーマラスワミー氏はこう話します。

この報告書が提供する重要な提案の中には、子どもたちに対する凶悪な罪を犯した者の刑事免責を廃止することも含まれています。これは、10年前のレポートが発表された後確立されてきた、戦争犯罪人の告訴のプロセスと、関連する国際規範の厳守を訴えるものです。

10年前の歴史的なレポートは、当時、紛争の手段として、子どもたちが兵士として狩り出され、性的暴力などの被害に遭っているという残酷な現実が、白日の下に晒されました。

今回国連が発表した最新報告書は、子どもたちの兵士としての利用が予防さるようになり、多くの子どもの兵士たちが、社会復帰できるようになったと報告しています。また、紛争下における性的暴力の根絶についても、国際社会の努力が続けられているとも報告しています。

実際この10年間に、こうした犯罪が、初めて国際法廷が場で裁かれました。また、こうした問題を監視し、新たな国際法や関連基準の導入を検討することが、国連安全保障理事会で約束されました。児童の武力紛争への参加に関する子どもの権利条約の選択議定書や、不法な入隊の禁止についての「パリ原則」の成立も、こうした成果と言えましょう。しかしながら、子どもたちが、紛争で経験したトラウマを克服し社会に復帰することは、容易なことではありません。この国連報告書は、次の10年の間に国際社会がなすべき施策を提示するとともに、国際社会と全ての市民社会に対し、世界中の50以上の紛争地域や紛争終結直後の国々で苦しんでいる子どもたちを守るための努力を呼びかけています。

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