バングラデシュ:子どもの栄養不良と家庭の食糧確保が最優先課題
25%の世帯で食糧確保が不安定、200万人の子どもが栄養不良
【2009年3月29日 ダッカ発】
バングラデシュでは、全世帯の25%が食糧不足、また生後6ヵ月〜5歳の子どものうち200万人が急性栄養不良(消耗症の割合は13.5%)であることが、WFP,ユニセフ、公衆衛生栄養研究所(IPHN)による最新の調査で明らかになった。これら200万人の栄養不良児の半数は重度の急性栄養不良(重度消耗症は3.4%)であり、必要とされる適切な治療と処置を受けられない状況にある。例え、この全国調査が収穫期に行なわれたとしても、栄養不良のレベルは食糧が不足する時期と変わらないと予測されている。
今回の調査は、2008年度のバングラデシュの食糧価格高騰の影響を調べるために実施された。調査結果は保健・家族福祉省A.F.M.ルハール・ハッケ大臣、食糧・災害管理省モクレスール・ラフマン書記官、ユニセフ・バングラデシュ事務所カレル・デ・ロイ所長、WFPバングラデシュ事務所ジョン・アイリーフ所長の出席のもと、ダッカのショナルガオン・ホテルで公表された。
調査によると、過去12ヵ月間で、食糧が十分確保できなかったと答えた世帯は58%。2005年〜2008年の間に、世帯当たりの所得は12%減少している。2008年末には世帯の総支出に占める食費の割合は62%で、2005年の全国平均を10%も上回った。人々は食糧価格の高騰により借金を繰り返す悪循環にはまっており、回復には数ヵ月かかるものと予想される。
WFPバングラデシュ事務所ジョン・アイリーフ所長は、次のように述べた。「食糧価格は現在下がりつつあるが、危機的な状況が去ったわけではない。世帯の支出に占める食費の割合はすでに2005年の水準を上回っており、世界的な経済危機が貧しい人々に及ぼした影響は今後も大きな問題である。」
また調査結果から、栄養不良と人々の不安定な食糧確保が関係していることが明らかになった。世帯の食糧確保が不安定になれば、栄養不良児の率が高くなるのである。
調査対象となった生後6ヵ月〜5歳の子どものほぼ半数(48.6%)は、発育阻害(年齢に比して身長が低い)で、南アジアで最も高く、慢性的な栄養不良が蔓延していることが分かった。また同年齢の子どもたちの37.4%は低体重である。
ユニセフ・バングラデシュ事務所カレル・デ・ロイ所長は、こう述べた。「バングラデシュの子どもの栄養不良の状況は、静かな緊急事態である。栄養不良は子どもの死亡の直接的原因であるばかりでなく、きわめて重大な潜在的原因でもある。子どもの発育を妨げ、妊娠/出産時の女性の死亡リスクや新生児死亡率を高めている。社会全般にわたって影響を及ぼし、学業成績や保健ケアのコスト、生産性にもかかわる問題だ。いま栄養不良に緊急に対処しないかぎり、バングラデシュはミレニアム開発目標達成のための活動を維持し、目標を達成することはできないだろう。」
調査は、2008年11月〜2009年1月、全国の6つの管区および農村部・都市部で抽出されたデータを集める形で実施された。1万378世帯が対象となり、5歳未満児4,175人が健康栄養状態についての調査を受けた。
ボリシャル管区とラッシャヒ管区では急性栄養不良率が最も高く、WHOが設けている緊急事態の15%という水準を超えた。これらの管区では食糧が十分でないと答えた世帯の率が最も高かった(ボリシャル26%、ラッシャヒ31%)。慢性栄養不良(消耗症)はシレット管区で最も高い。農村部は都市部と比べ、3タイプの栄養不良(消耗症、発育阻害、低体重)率が高かった。
栄養不良の原因のひとつとして、今回の調査は摂取する食品の多様性の問題を指摘している。発育にとって重要な年齢である生後6ヵ月〜2歳児の約半数は、最低限必要な回数の食事を与えられておらず、3分の2は最低限必要とされる食品の種類(1日に少なくとも4食品群)を摂取していなかった。こうしたことからも、2歳までの子どもたちの急性栄養不良率が高いのは当然のことである。
乳幼児の栄養不良は食習慣が大きな原因である。調査によると、生後6ヵ月間の完全母乳育児を行っている母親はわずか半数であった。また、大多数(89%)の母親が2歳まで子どもに母乳を与えていたにもかかわらず、補助食の導入が不適切であったり、食品の種類が十分でなかったりしていることが明らかになった。
この調査は、親の育児習慣の改善が必要だと指摘している。生後6ヵ月間の完全母乳育児を推進する現在の活動を強化、拡大するとともに、家族に乳幼児に最適な食生活習慣を教育することが求められている。
また、食糧保全や栄養に関する定期的な調査の実施が栄養や保健、食糧保全の状況変化を早期に発見するために欠かせないと指摘した。このような調査制度が、政府の構造のなかに組み込まれる必要がある。
バングラデシュは効果的な社会的セーフティ・ネット活動をすでに作り上げているが、こうした活動が、栄養不良や食糧不足が広まっている地域に拡大され、強化される必要があることを今回の調査は示唆している。食糧支援活動、食糧保全や栄養のプログラムでは微量栄養素が豊富な食品に注目し、摂取する食品の多様性を改善する必要がある。最も深刻な事態となっている地域において、特に10代の女の子や妊娠中の女性、生後6〜24ヵ月の子どもなどの年齢集団を対象に微量栄養素を提供することは、子どもと女性の栄養状態を大きく改善するために費用対効果の高い対策だといえる。
最後に、多くの急性栄養不良の子どもを抱える施設や地域社会が急性栄養不良に対応するため、治療や栄養補充食品の対策活動の拡大が提案された。
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