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新生児約300万人の死を防ぐことが可能
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© UNICEF NYHQ/2011/Holt |
生まれたばかりの赤ちゃん。 |
5月20日、ユニセフは、ニューヨーク本部で、医学雑誌『ランセット(The Lancet)』に掲載された新生児死亡に関する画期的な論文を発表します。論文では、出生時に、最も過酷な状況にあり、ケアを受けられていない新生児が、適切なケアを受けられれば、生後1カ月未満で死亡する約300万人の大部分の命を守れることが明らかになりました。
新生児死亡は、5歳未満の死亡の全体の約44%を占めます。国連ミレニアム開発目標の基準となっている1990年当時と比べると、5歳未満児死亡率において新生児死亡率の割合は、現在のほうが大きな割合になっています。最も貧しく厳しい状況にある世帯ほど、新生児が死亡しやすい傾向がみられます。
ユニセフのグローバル・ヘルス・プログラム部 部長のミッキー・チョプラは「5歳未満の子どもの命を守るために、さまざまな取り組みが行われ、大きな進展がありました。しかし、最も幼く弱い立場にある新生児の死を防ぐ取り組みは、立ち遅れています。新生児は慎重にケアを行い、費用や人材を投入する必要があります。分娩から生後数時間の間は最も重要な時間帯であり、適切なケアが受けられれば、母子双方に、生存の可能性が飛躍的に増加します」と述べました。
ユニセフによると、毎年、290万人もの新生児が生後28日以内に死亡しています。さらに260万人が死産しており、うち120万人は、分娩中に亡くなっています。生後24時間が、母子双方にとって最も危険な時間帯であり、新生児と妊産婦の死亡の約半数は、この24時間以内に起きています。
© UNICEF/SLRA2013-0580/Olivier Asselin |
妊婦の診察を行う保健員(シエラ・レオネ)。 |
ランセットの「すべての新生児シリーズ(Every Newborn series)」は、新生児を守る最も効果的な方法として、母乳育児や新生児蘇生、早産で生まれた赤ちゃんと母親の長時間の肌の触れ合い−いわゆるカンガルーケア、長期に及ぶ肌と肌の触れ合い、感染症の予防と治療を上げています。また、さらなる資金と十分な設備も欠かせません。
新生児の命を守ることで最も成果を収めた国々では、母親と5歳未満の子どもへの包括的なケアを拡大する一環として、新生児を対象にした取り組みも行ってきました。例えば、ルワンダでは、2000年以降、新生児死亡は半減しています。低中所得国の一部では、助産師や看護師に研修を行い、貧困世帯に生まれる新生児や乳児が適切なケアを受けられるように指導することで、目覚ましい成果が生まれ、新生児死亡が減少しています。 新生児死亡が最も多い51カ国の調査では、豊かな世帯の新生児が受けている適切なケアを、貧しい世帯でも同じように受けられるようになれば、新生児死亡を毎年60万人削減できることが明らかになりました。実現すれば、新生児死亡の約20%削減に相当します。
毎年、最も多くの新生児が死亡しているのは、南アジアとサハラ以南のアフリカです。最も多い国がインド(77万9,000人)、続いてナイジェリア(26万7,000人)、パキスタン(20万2,400人)となります。これらの国々で、母子保健に1米ドルを投資するごとに、社会経済的に、その効果は9倍になると算出されています。
ユニセフとWHO(世界保健機関)は、来月6月に、2035年までに、予防可能な妊産婦と子どもの死亡をなくすためのすべての新生児のための行動計画を発表する予定です。
© UNICEF/BANA2014-00972/Wahid Adnan |
新生児ケアユニットで新生児の治療を行う看護師(バングラデシュ)。 |
ランセットの「すべての新生児シリーズ」は、ユニセフとロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院(the London School of Hygiene and Tropical Medicine)、パキスタンのアグハカーン(Agha Khan)大学などによる共著です。
「すべての新生児シリーズ」を発表する2014年5月20日の半年後11月20日は、子どもの権利条約採択から25周年にあたります。ユニセフは、11月20日に、これまでの子どもたちのための取り組みの成果と、最も困難な状況にある子どもたちが直面している課題を発表する予定です。