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(財)日本ユニセフ協会創立五十周年記念事業
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2005年3月14日(月)、港区高輪のユニセフハウス1階ホールにて、「子ども買春防止のための旅行・観光業界倫理行動規範(コードプロジェクト)の日本発足式」が開催されました。当日の模様を報告いたします。
プログラム
●主催者挨拶 ●ご来賓のお言葉 ●海外参加企業メッセージ(ビデオ) ●子どもの性的搾取と人身売買の現状 ●ユニセフ親善大使よりメッセージ ●閉会の辞 ●記者会見 |
東郷 良尚 日本ユニセフ協会 専務理事
きょうは、私ども、長いこと子ども買春、子どもポルノの根絶に携わって参りましたものにとって大変うれしい日になったわけでございます。
1996 年にストックホルム会議というのが開かれまして、この問題が日本にとってはほんとうに初めて白日のもとにさらされたというような状態になりました。私ども自身も非常に驚いたことでございました。
97 年から、日本でぜひ第二回の国際会議をやって、実質的なリーダーシップをとるようにというお話がございました。その時点では、まだ日本政府も法律関係の整備等々も十分にできていなかったというような状態がございまして、何とか日本でこれに対する問題解決の気運を高める必要があるということで、私どもが一応その先鞭を切らせていただくような立場に立ちまして、そのフォローアップ会議を開いたわけでございます。
その第一回のフォローアップ会議に、実は、きょうここにお越しの高円宮妃殿下がご出席されまして、スウェーデンのシルビア王妃とご同行されて、私どもは大いに元気づけられると同時に、また責任の重大さを感じたわけでございます。
当時から数年たちまして、その間に日本においてもこの問題に対する法律をつくる気運が高まり、1999年にはこれを禁止する子ども買春、子どもポルノを犯す人を罰する法律ができました。
さらに三年たちまして、それをさらに補完する法律もできて、一応法体制としては形ができつつあるというところでございます。その間にまた、子ども買春だけではなくて、トラフィキングの問題もかなり大きく浮上いたしまして、これに関する法律も、今の国会でできつつあるというような状態でございます。
このような背景の中で、旅行業界とは今までも随分いろいろな局面でお話をさせていただいて、ご理解をいただいてきたわけでございますが、その間にWTOも指導されましたコード・オブ・コンダクト、旅行業界における行動規範というものがようやく昨年できたというところでございます。
既にアメリカにおいては業界との発足式が行われたわけでございますが、日本がそれに次いで二番目の国として、しかも旅行業界としては世界でも一番大きいと言われている日本の業界がこれに賛同してくださって、きょう、調印式を迎えることができたということは、私どもにとってもほんとうにこれ以上大きな喜びはございません。
本日はおいでいただきました皆様方に心から御礼を申し上げまして、このコード・オブ・コンダクトがあまねく世界の子どもたちの困難を取り除くものとして実効あるものになることを祈念しております。
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高円宮妃殿下、ご来賓の皆様、こんにちは。アグネス・チャンです。きょうは、私たちにとってほんとうにすばらしい日です。今、胸の中で感謝の気持ちと、そして希望であふれています。
私がこの問題を知ったのは、日本ユニセフ協会大使に任命された1998年でした。任命されたその日の晩、スウェーデン大使館でこの児童買春の問題にかかわる会議があるので出席してくださいと言われて、そこでいろんな人たちの話を聞き、そしてたくさん資料をいただきました。それを読んでほんとうにショックでした。
実態を知るために、タイ、フィリピン、カンボジアへ行きました。一つ一つの国によって状況は違うのですけど、それがアジアだけの問題だと思ったら、昨年はヨーロッパのモルドバ共和国というところに行きました。それは旧ソビエトの一つの場所だったのですけど、独立してから91年。経済がなかなか立ち直らず、一番貧しい層の子どもたちがまただまされて、ヨーロッパ、ロシア、中東、遠く日本にも売られているという情報があり、そういう子どもたちとも会いました。
ここでは子どもたちの話を全部語り切れませんが、その子どもたちは絶対忘れまいと、全力を尽くして、何とか売る側も買う側も意識を高めて、そういうことはやっちゃいけない、子どもたちの一生が台なしになってしまうんだよと、最初から自分の胸に誓って、ECPATをはじめ、みんなで活動をしてまいりました。
法律ができ世の中の意識も高まったし、そして、きょうはほんとうにうれしい日です。一番パートナーになってもらいたかった旅行会社や、観光業界の皆さんが私たちのパートナーになってくれるということになりましたので、これからはきっと現場単位でも協力していただいて、子どもたちにとっては光が差し込んできたと思います。
しかも、日本の光は大きいです。とても強い光なので、これでほんとうに希望が見えてきたなと思います。会ってきた子どもたち、そして会えなかったのですけど、きょうも苦しんでいる子どもたちになりかわって、関係者の皆さんにお礼を申し上げたいと思います。ほんとうにきょうは皆さん、ありがとうございました。
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高円宮妃久子殿下
2003年4月にニューヨークユニセフ本部で盛大に開催された「子ども買春防止のための旅行・観光業界倫理行動規範(コードプロジェクト)合意書の調印、コードプロジェクト発足式典に引き続き、日本でコードプロジェクト発足の式典が開催されますことを、心よりお喜び申し上げます。
1996年8月に、スウェーデンのストックホルムで開催された子どもの商業的性的搾取に反対する国際会議の名誉議長をお務めになられたシルビア王妃とともに、その翌年、97年5月にスウェーデン大使館で開かれた第一回のフォローアップ会議に参加させていただいて以来、この問題に大きな関心を持ってまいりました。
この第一回世界会議をきっかけとして、児童の商業的搾取の根絶に向けた気運が世界的に高まり、我が国でも財団法人日本ユニセフ協会、国会議員の皆様やECPATをはじめとするNGO、法律家、ジャーナリストの皆様のご努力により、1999年11月に児童買春、児童ポルノに関わる行為等の処罰及び保護等に関する法律が施行されたのは大きな一歩で、やっと日本が国として新たな認識を持ち始めた兆しと、当時はとてもうれしく思いました。
その後のユニセフ主催のフォローアップ会議では、家族の大切さ、被害者と加害者と双方に対する教育・指導、そしてメディアを上手に利用しての啓蒙活動などに関するお話を伺い、国際的に複雑に込み入った状況を一つ一つ解決していかなければならないもどかしさ、そして、子どもの証言を正確にとる難しさなどについて考えさせられました。
また、現代において、交通、通信の分野は、飛躍的な発展を遂げており、海外旅行がたやすくできるようになり、インターネットや携帯電話なども、驚くべき普及率を見せておりますが、これらの科学的進歩が同時に引き起こすさまざまな問題に、いかに敏速に対応していくかという点が、今後ますます重要となっていくことを再認識いたしました。
シルビア王妃からのお手紙をちょうだいし、王妃がこれらの問題に心を砕いておられ、第二回国際会議を日本で開催してほしいという強いお気持ちを持っておられることがわかりました。
第一回会議の1カ月後の5月26日、日本政府が第二回世界会議の開催引き受けを正式に発表し、ユニセフやECPAT/ストップ子ども買春の会ほか、多くの関係者のご努力によって、2001年12月に横浜で開催された第二回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議は、いろいろなよい成果を上げることもできましたし、また、多くの課題も残してくれました。
横浜の会議前、王妃から紹介をいただいて、スウェーデンの方々から、世界で一番大きく、多大な影響力を持っている日本の旅行業界の取り組みに対して、大きな期待を持たれていることを伺いました。
しかし、大きい業界がゆえに抱えるいろいろ意味での責任があり、簡単に解決できる問題ではなく、結局、横浜会議においても、日本の海外旅行者に対する啓蒙活動の必要性が指摘されました。
横浜でも申しましたが、需要あっての供給です。逆に言えば、性的対象としての子どもの需要がなければ、供給をする商業的な意味がなくなるのではないかと思います。
日本は世界のリーダーの一人として、誇りに思えることをたくさんやってまいりました。また、日本ユニセフ協会の世界での活躍は、国際ユニセフ協会も高く評価しております。しかし、この子ども買春、子どもポルノの問題に関しては、日本の考え方は世界から批判されても仕方がないと思えるほど、お粗末なものでした。
今回、こうして旅行業界を挙げた取り組みが実現し、多くの企業と業界団体がこぞってコードプロジェクトへの参加を表明してくださったことは、子どもを取り巻く環境を少しでも健全なものにしていく上で、大きな節目になるのではないかと、心からうれしく思っております。
先ほど東郷さんからも、アグネスからもお話がございましたが、JATAは世界の中でも非常に影響力を持っている団体です。今後の皆様の具体的なアクションに心から期待しております。
多くの方の努力にもかかわらず、今なお世界中で多くの子どもたちが児童買春、児童ポルノ、そしてトラフィキングの被害に遭い、人としての尊厳を踏みにじられ、場合によっては命をも落としています。この問題は、貧困に苦しむ途上国の問題だけではなく、日本を含む先進国においても、インターネットの進展などに伴い、子どもたちは新たな脅威にさらされています。
関係者の方々の今までのご努力に敬意を表するとともに、本日の発足式を機に、子どもの商業的性的搾取に対する問題意識が定着し、その撲滅に向けて、さらに大きな一歩につながっていくことを心より期待ております。
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フランチェスコ・フランジェリ
世界観光機関(WTO)事務局長
(代読:本田勇一郎 WTOアジア太平洋センター代表)
「世界観光機関(WTO)は、最も重要な加盟国の一つであるこの日本において開催される『ECPAT(エクパット)子ども買春防止のための旅行・観光業界倫理行動規範』に関しての、意義あるこの発足式に参加することに大きな喜びを表すものであります。私達は、この行動規範が社会、国際組織および民間観光業界の構成員にとって、観光のネットワークにおける性的虐待から幼い子どもと青少年を保護することにどのように協力できるかの対応策を提示しているものと強く信じます。
この規範は、スカンジナビアのツアー・オペレーターと世界観光機関(WTO)の協力のもとに、ECPATスウェーデンによって1998年に制定されました。
世界観光機関は、国家、地域および人々に貢献できる信頼性のある観光発展をめざして、30年前に設立されました。
この50年間において、観光は経済、環境そして社会に重要な影響を及ぼすことのできる巨大産業にまで発展することができました。観光業界の持つインパクトは、経済活動によって直接もたらされる経済効果をはるかに凌駕するものです。それは人々や国々の社会・文化生活にまで及ぶものであります。
世界観光機関と観光業界にとっての挑戦は、観光の成長過程でのマイナス効果を最小化し、プラス効果を最大化することにあります。健全な法律体系と信頼できる管理体制が不備であれば、観光は環境破壊を生み、社会秩序を乱し、伝統的、文化的価値と慣習を損ない、また犯罪行為の温床となり得る危険性を潜めております。
観光業界に必要なものは、持続可能であり信頼できる規則、およびガイドラインの運用です。世界観光機関のメンバーは、1999年に満場一致で世界観光倫理行動規範を採択し、この目標の達成をめざしています。国連総会において、世界観光倫理行動規範は、観光業界にその遵守を求めた決議により承認が得られました。
世界観光倫理行動規範は、持続可能な観光の発展と実現への指針となっています。その10条にわたる規定は、観光産業の主要部門における利害関係者のそれぞれを対象として、ガイドラインを規定しています。第2条は、子どもへの性的虐待を強く非難する具体的な内容を網羅しています。引用いたしますと、『子どもへの性的虐待は観光の理念と相容れず、まさに観光の否定といえます。たとえ国外での犯罪であっても、関連諸国が協力して、国際法に基づき、事件発生国及びこれら行為者の帰属国の双方が一切譲歩することなく、果敢に対応すべきであります』。
情報・通信面での新たな技術革新に伴う国際間移動の増加と観光の発展は、子ども買春に関わる犯罪者数を増加させる傾向があります。この邪悪への強い対応がなにより肝要です。旅行業界はこのキャンペーンへの参画を求められています。ECPAT業界行動規範は、かかる問題に対処できる対応策の一つであります。
子どもへの性的搾取は、観光業界の利益に相反します。一方、観光業界は、子どもへの性的虐待に対して強い警告を発することによって、人々の認識を喚起するという重要な立場にあります。
ツアー・オペレーターは、それらの問題と協力を顧客に周知させ、社員にその対応策を訓練し、その発生を阻止すべく、業者同士が協力することを求める立場にあります。子ども買春に対するキャンペーンに参加する観光業界によるすべての対応は、子どもへの犯罪者、司法関係者および政府へ圧力をかけることになります。私達が社会から信頼を得るためには、倫理的そして道徳的な姿勢と行動を自らに課すことが求められています。そして、その行動が個人、また集団としての行動につながります。
世界観光機関は、日本の旅行業界からの呼び掛けが、この悲劇に対するキャンペーンを強化することを確信するものであります。そしてこの場におきまして、子どもたちにとって友好的かつ尊敬に値すべき観光活動の発展をめざして活動している私達及び私達のパートナーに、是非ともご参加されることを皆様方に呼び掛ける次第であります。」
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(社)日本旅行業協会 会長 新町 光示 様
(社)日本海外ツアーオペレーター協会 会長 影嶋 雅昭 様
参加企業を代表して、(株)ジェイティービー 代表取締役会長 舩山 龍二 様
に調印いただきました。
今回合意書に調印いただきました方々を代表して日本旅行業協会会長の新町光示様よりご挨拶をいただきました。
新町 光示 (社)日本旅行業協会 会長
本日は、ただいま高円宮妃殿下、それからユニセフ大使のアグネス・チャン様、多くの報道関係者のお立ち会いのもとで、子どもの買春防止に関するプロジェクトチームが結束いたしまして、その規範にただいまサインをいたしたわけでございますが、事の重要さといいますか、私ども旅行業界に与えられた責任の重要さと、それから、これから果たしていかなければいけない使命の重要さを改めて感じた次第でございます。我々旅行業界といたしましては、これから多くの日本の方が海外に出かけると思いますが、こういったことは絶対にしないという一つの規範というものを世界に示していく日が来ればいいなと思いますし、また、そのためのあらゆる努力を惜しまない覚悟でいるわけでございます。
観光産業というのは、平和産業だと言われております。これは、平和でなければ存在しないというのが観光産業であるということと同時に、観光を通じて、すなわち人と人の交流を通じて、世界に平和をもたらすんだ、あるいは人々の生活を豊かにするんだという一つの大きい使命があるわけでございまして、しかるがゆえに、今、日本政府も観光立国ということで、より多くの海外の人に日本に来ていただく、あるいは、我々旅行業界といたしましても、より多くの日本の方に世界を知っていただく、そういったことを通じて、世界の平和に貢献する、あるいは、人々の幸福の向上に貢献する、そういうふうな意味があるのではないかと思いまして、我々旅行業、あるいは観光業に携わる者としての使命というのは、単に営業としての目的だけではなくて、今言ったような世界の平和を推進する、あるいは世界の幸せ、幸福を推進していくという使命があるのではないかと思います。
本日を機会といたしまして、我々に与えられました、今言ったような大きい使命を、これから業界上げて、また皆様のご協力を得て推進してまいりたいと思いますので、今後とも引き続きご指導いただきたいと思います。
本日は、高円宮妃殿下及びアグネス・チャンさん、ほんとうにありがとうございました。改めて責任感を痛感いたしますので、ご期待に背かないように、これから最善の努力をしてまいりたいと思います。
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マリリン・カールソン・ネルソン カールソングループ会長
昨年四月に北米でコードプロジェクトが発足いたしました。その第一号として参加されたのがカールソングループの会長、マリリン・カールソンさんです。また、カールソンさんとJTBさんのジョイントベンチャーということを通じて、JTBさんのほうにもカールソン会長のほうから働きかけがあったという経緯がございます。
そういったご縁で、今回、こちらにビデオメッセージをお送りいただきました。
『高円宮妃殿下、ユニセフ、コード・プロジェクト、エクパット、日本旅行業界の皆様。私のすばらしき友人であり同僚であるJTB、カールソン・ワゴンリ・トラベルの皆様、そして本日お集まりの皆様。
「私たちが子どもたちにしたことと同じことを、子どもたちは社会にするでしょう」。これは、かの有名な精神科医カール・メニンガーの言葉です。私たち大人が、最も若く、最も弱い立場にある子どもたちに対してどう接するかが、私たちとその子孫が生きていく社会のこれからを形づくることを彼は見抜いていました。
子ども買春の恐るべき実態については、スウェーデンのシルビア王妃がご尽力され、我々も共同創立者となりました王妃の「世界子ども財団」の活動を通して初めて認識されました。
そして一年前、カールソン・カンパニーズ──グループ企業などカールソン傘下で働く世界140カ国19万人のスタッフ──が北米で初めてコードプロジェクトに調印し、この地でのコード発足に貢献しました。
私たちは、旅行・観光業における子どもの搾取の問題に光を当てられたこと、そして、このおぞましい事態に終止符を打つため北米で最初の一声になれたことを誇りに思います。
私たちは、スマトラ沖地震・津波被害が広がる中、迷子になったり、家を失った子どもたちが買春の犠牲になり、性搾取のわなに引きずり込まれる危機にさらされていたのを目の当たりにしました。
しかし、だれもこの事実に気づくことなく、報道されることもなかったら、さらに恐ろしい結果になったことでしょう。ユニセフやエクパットの活動なくしては、世界は子どもの買春という悲劇に全く気づかなかったかもしれませんし、また、メディアにも取り上げられなかったかもしれません。
ユニセフ、エクパット、コードプロジェクトは、多くの人に旅行・観光における子どもの性的搾取の問題に関心を持ってもらい、撲滅運動を支持してもらうことを目標の一つに掲げています。
うれしいことに、私どもが北米でコードプロジェクトに参加してから一年。この間に、一般の方々や旅行業界で子ども買春の問題が注目されてきました。彼らは子ども買春について話し合い、情報を収集し、撲滅運動に参加しています。
本日この場で交わされる日本旅行業協会の参加合意書を皮切りに、北米と同じことが日本で今まさに始まろうとしています。そして、私たちの友人でありパートナーであるJTBの皆様、あなた方が子ども買春の撲滅運動のリーダーとして私たちの活動に協力してくださることを大変光栄に思います。
先日日本を訪れた際、舩山会長、佐々木社長をはじめとするJTBの方々とお話しする機会がありました。その際、とてもうれしいことがありました。私たちが話を始めようとすると、舩山さんと佐々木さんはそれをさえぎり、カールソンがコードプロジェクトに調印したことをニュースでごらんになったとおっしゃいました。「もっと詳しい話を聞かせてくれないか?」と。私どもが話し終わると、「これはJTBもやるべきではないでしょうか……。JTBも参加しますよ」とおっしゃるではありませんか。コードプロジェクトの背後には、こういったリーダーの方々の存在があります。私は、JTBとパートナーであることをほんとうに光栄に思っています。
ただ、中には疑問に思う人もいるでしょう、どこか遠くで起こっているこの問題はほんとうに私たちの取り組むべき問題なのかと。
お答えするかわりに、私の身に起こった個人的な体験をお話ししましょう。
今から12年前、初孫が我が家にやってきたとき、祖母である私はとてもわくわくしていたことを覚えています。その子が我が家で迎えた初めての朝、窓辺に置かれたかわいらしいゆりかごから孫を抱き上げたとき、太陽がその子の背後に降り注いでいました。愛情で満ちあふれていた私の心を、突然、ある思いがよぎりました。それは、私はこの幼い子をどうやって守れるのか? ということです。十分な高さの防護壁をつくることなんてできないし。そして、もし、私が見捨てられた子どもたちに同じくらいの愛情を注いであげないと……。なぜなら、いつか私の愛する孫が彼らと出会うかもしれないのです。その出会いが「敵対的」であったら。私たちは皆一様に大切な何かを失った悲しみに暮れるかもしれません。
皆様も愛するお子さんがいらっしゃるでしょう。私は皆様に敬意を表します。我々カールソン・カンパニーズと同様、本日このすばらしい活動を始めようとしている皆様とその支援をしてくださる皆様に。
私たちのような世界中で活動する企業が、子どもたち一人一人を犠牲にしてしまうほど「巨大化」することが絶対にないように。私たちの未来がかかっています。
私たちが共有する未来なのですから。
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スーザン・ビゼル ユニセフイノチェンティ研究所
日本ユニセフ協会が、この子どもの買春を含めました子どもの人身売買問題について、ユニセフのイノチェンティ研究所に現在調査を依頼しています。
「今回、私は日本に初めて参りました。ユニセフに勤め始めましてかなりの年月になるのですけれども、日本に来たのは初めてです。津波のときもそうだったのですが、日本の皆様からのユニセフを通じた世界の子どもたちへの支援というものがすごく大きなものである、また、それがすごく迅速に行われるということに、常日ごろから深い畏敬の念を持っております。
また、今回この場、日本ユニセフ協会に来たのも初めてだったのですけれども、こういった立派な事務所に、たくさんのボランティアの方がその活動を支えていらっしゃる。
今回、プレゼンテーションも日本語に訳してもらったのですけれども、これは、私の働いておりますイノチェンティ研究センターに来ている日本人のボランティアの方によって日本語訳をつくっていただきました。
また、先ほど申し上げましたような日本の方の非常に温かい想いが、今回のコードプロジェクトの発足、日本の旅行業界の方々の参加ということに結びついたのだと思います。
今回、私は、日本ユニセフ協会からの支援を受けて実施しております調査の中間報告をさせていただきます。この調査は、現在のところ、南アジア、インドといったところの周辺において、いわゆる子どもの買春ツアーですとか、そういったものがどういう状況にあるのか、また、その状況を変えていくにはどういった方法があるのかといったことに焦点を置いております。
初めに、子どもの人身売買の定義ですが、まず、これは国内で、もしくは国境を越えて搾取を目的として子どもを集め、輸送、移動し、それから子どもたちを社会から見えないところに隠し、また、それを受け取るという一連の行為のことを言います。
子どもの人身売買に取り組んでいく上で非常に難しい問題というのは、その子どもの人身売買というものが、ここに書いてあります不法移民ですとか、移民、難民といった庇護の申請、それから密入国などといった形態の人の移動というものと非常に区分けしにくいという点にございます。
この調査を実施しておりますユニセフのイノチェンティ研究所というのは、その建物自体、イタリア政府からの提供を受けていたものですけれども、この調査は、日本ユニセフ協会からの支援と、それ以前から、日本ユニセフ協会にこういったものに関心を寄せていただいたというところに始まっております。
実際の調査に当たっては、ユニセフの、特に南アジアの各国にある事務所、それからその各国の事務所と一緒に仕事をしているNGOですとか、パートナー、現地政府等々と協力して実施しております。
一口に子どもの人身売買と申しましても、そこにかかわる組織ですとか、組織の立場等々によって、その問題の見方というのが変わっております。ある組織は、これはモラルの問題であると、またある組織は、法と秩序の、もしくは組織犯罪の問題である、人権問題であるという方もいらっしゃいます。また、移民問題であるというふうにおっしゃる方もいらっしゃいますし、労働問題、貧困と開発の問題、ジェンダーの問題、国民の健康の問題と、いろんな方がいろんな切り口でごらんになっているということが、子どもの人身売買の問題を複雑にしている要因でございます。
今回、ユニセフ協会から与えられた課題、子どもの人身売買の実態調査というのが、実はいろんな調査をやっているんですけれども、その中でも非常に難しい課題であると申し上げることができます。というのは、この子どもの人身売買という現象自体が、あまり表に出てこない現象でございます。
ここにいらっしゃる、特にジャーナリストの方々に訴えたいんですけれども、実際に何人の子どもたちが被害に遭っているのかという数字を聞かないでください。というのは、その数字を集めることが非常に難しいといった状況でございます。
また、一般的に語られている、こういった状況であるとか、こういった問題があるといったところの背景には、一般的に誤った通念によって語られている部分もありますし、また、実際にあまりよく知られていない話もあったり、また、逆にそれが単なるうわさ話であったりといったこともあります。そういったこともいろいろ含めまして、この実態がなかなかわかりにくい問題なのです。
そこに、日本ユニセフ協会が、特にこういった調査の支援をしてくれたというのが非常にありがたいものでした。具体的にはこの四番目にあります実証的なデータの収集及び現場にいる人々とともに実証することの重要性ということを、日本ユニセフ協会が理解してくれて、実際この調査というのは、今、ここに集中しております。
調査の過程ですけれども、一つの情報源に頼らずに、NGOですとか、ユニセフの現地事務所、現地の政府ですとか、また、コミュニティーの個々の家族といったところに実際にインタビューに行って、調査に行って、それぞれから出てきた情報を相互に検証して、最終的な結論を出していくという調査方法をとっております。
本日のプレゼンテーションで焦点を置きますのが、3つの調査エリアです。1つは、先ほど申し上げました南アジアにおける、法律と政策がどういうふうになっているか。次に、南アジアの状況地図。これはまだ政策途上ですが。3番目は、ケーススタディとして、一つの成功例であるドミニカ共和国の例をご報告申し上げます。
まず、国内法と政策に関してですが、これは世界的にストックホルムと横浜会議が行われた後、重要なステップとして多くの法律と政策がいろんな国でつくられつつあります。
ただ、その法律の中の、今のところ欠陥といいますか、人身売買の問題では、売買春目的の人身売買というものに焦点を置いていて、ほかの形態の人身売買というものについてあまり触れられていません。女性と子どもの区別もされていない。また、犯罪者の取り締まりですとか、刑法による救済というものに焦点は置かれているのですが、実際にどのように予防していくかについては、実はユニセフの一番の関心事なのですけれども、予防の部分についての整理がほとんどされていないという現状がございます。
ここに示しました地図は子どもたちの人身売買がどのように行われているか、インド、パキスタン、このリージョンで人身売買がどのように行われているかというものを図式化したものです。まだ試みの段階ですが、一言で申し上げまして、この国同士で、ネパールからインド、またバングラデシュからインド、そういった形で子どもたちが取引されているという現状がございます。また、インドからこの地域外の諸外国に出されているという例もございます。
また、インドに連れてこられた子どもたち、インドの中で取引されている子どもたちが実際にどこから来て、またそこからどこに行くのか。一回取引されて、そこで終わるだけではなくて、またそこから別なところに取引されるというような現状もございます。
ただ、そういった現状はあるのですけれども、なかなかそれが具体的に細かいところまで、どういった現状であることを調査するのは難しく、それをトレースすることが難しいのですが、その意味からも、先ほど申し上げました予防の部分、プリベンションの部分が非常に重要です。
ゆえに、今回日本で発足いたしましたが、日本の旅行業界の方々、世界の旅行業界の方々が担われる役割は非常に重要であり、また期待できるところであります。
先ほどまでネガティブな話をしましたけれども、ポジティブな部分、学べる部分として、保護、予防、またエンパワーメントの分野がこの調査を通して分かってきております。
ドミニカ共和国における子どもの保護ということをあえて紹介しておりますが、ドミニカ共和国というのは、中米の小さなところです。そこには周辺の国から、子どもたちが人身取引で連れてこられています。そしてドミニカ共和国内の観光地でいわゆる子ども買春に従事させられているといった現状がございました。
それに対して、ドミニカ共和国の政府、また、ドミニカ共和国で活動していたECPAT、ユニセフ、そしてさらにドミニカ共和国の中で活動していた旅行業の方々が立ち上がりました。
また、イタリア政府からの支援等もございまして、ここにシンボリックに出ていますが、皆さんがこれから日本で立ち上げられるようなコードプロジェクトというのもドミニカ共和国で展開されています。
今回、日本で発足しましたので、近い将来、こういった形のものが日本でもでき上がって、ユニセフ、ECPAT等々と並んで、皆様の業界のお名前ですとか、ロゴといったものも、こういった形のものができてくれればいいなと思います。
子ども買春の問題、人身取引の問題というのが、今、世界でいろいろな問題がある中でも非常に深刻な問題の一つであろう。深刻な問題の一つであり、かつ社会のさまざまなプレーヤー、公的機関や民間の方々、また個人レベル、そういった方々のお力を結集して取り組むことのできる問題であると考えております。
きょう、この場で新しい仲間が増えたことを非常にうれしく思っております。また、皆さんに参加いただきましたことを感謝しております。ありがとうございました。
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「高円宮妃殿下、日本ユニセフ協会の皆様、アグネス・チャン大使、ご来賓の皆様。
このたび、日本での『子ども買春防止のための旅行・観光業界倫理行動規範』(コードプロジェクト)の発足にあたり、たいへん重要な行事にお招きいただいたことに感謝申し上げます。それにもかかわらず、会場に伺えないことを残念に思っています。この行事は子どもたちの商業的性的搾取とたたかう重要な一歩であり、ここに私の全面的な支持を表明したいと思います。また、現代社会で増加している嘆かわしい問題について、一層の責任と行動を要求する本プロジェクトを支持されているすべての参加企業とグループ、業界団体に対し、本日ご出席の皆様とともにお祝いを申し上げます。
ご存知のように、私は子どもの買春ツアーや人身売買など子どもを奴隷状態に置く状況をなくしたいと願い、さまざまな活動を提唱しています。昨年11月にはこのテーマで開催された国連の行事にも参加しました。そこでは子どもへの虐待をより多くの人たちに認識してもらうため、またさまざまなグループが協力して問題に立ち向かうための試みが話し合われました。リッキー・マーティン財団は子どもたちを助ける活動を世界各地で支援し、People for Children Projectは、子どもの性的搾取と人身売買を世界から無くすことを目的とした様々な活動に参加しています。財団はまた、目的と価値を共有する活動を歓迎し推薦しています。これらの活動によって、私自身がキャンペーンを通じて推進しようとしている社会的な認識や情報を広めることになるからです。現在、財団では地域・国・国際社会の様々なレベルで活動する組織やグループの力を結集し、子どもの性的搾取に対して強力な啓発・啓蒙と断固たる行動を伴うキャンペーンをリードしていこうとしています。
今日皆様が始められようとしているこの行動は、特に価値のあるものだと思います。これまで国内外で批准されてきた取り決めなどの重要な事例が結集されたということを意味するだけでなく、『子どもの売買、子ども売買春および子どもポルノグラフィーに関する子どもの権利条約の選択議定書』が推進しようとしている国レベル、二国間および多国間での取り決めの理想的な姿を正に反映しているからです。日本ユニセフ協会、ECPAT、世界観光機関の呼びかけに応じ、世界の多くの機関や団体が、JATA、JTBをはじめとする参加諸企業・団体に続き、コードプロジェクトに参加して、子どもの商業的性的搾取に対して総合的な対策に取り組まれることを希望いたします。
本日この行事に集われた皆様にいま一度お祝いを述べたいと思います。ことに子どもの商業的性的搾取をなくそうという姿勢を世界に示された日本の旅行業界の皆様に敬意を表します。世界は日増しに結びつきを強め、今日、旅行は人々の生活に大変大きな影響力を持っています。だからこそ、世界のあらゆる場所が子どもたちにとって安全なところとなるように旅行業界が道を切り開いていかなければならないのです。ありがとうございました。
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早水 研 日本ユニセフ協会 事務局長
「皆様、ほんとうにお忙しい中、私どもの主催いたしました、コードプロジェクトの発足式にお越しいただきまして、まことにありがとうございました。今まで触れられてなかった点、幾つかご紹介させていただきたいと存じます。
本日のこの発足式は、外務省と国土交通省の後援をいただいております。両省から担当の方、谷垣様、村野様にお越しいただいております。
それからもう一点、非常に重要なことでございますけれども、本日既に事前の意向表明も含めまして、このコードへの参加を表明されました日本の旅行業者の方々、計六十社でございますけれども、それにJTBがグループとして参加していらっしゃいますので、合わせて約百社近くの日本旅行業協会のメンバーの方々が、これにコミットメントを表明されたということでございます。
この数は、現在、日本の旅行業者の数は約1200社と伺っており、その中では数としては少ないかもしれませんが、ほとんどの大手の業者の方々がこれに参加していただいておりますので、日本での旅行業の取り扱い人数でいいますと、90%以上を占めることになります。
そういう意味で、日本の旅行業界をあげてのコミットメントの表明があったというふうに皆様、ご理解いただいて差し支えないかと存じます。
そういう意味でも、私どもの働きかけにこたえてくださいました日本旅行業協会の新町会長、日本海外ツアーオペレーター協会の影嶋会長、そして日本の旅行業界をリードされますJTBの舩山会長、ご参加、まことにありがとうございました。
本日、WTOのメッセージの中に、持続可能な観光という言葉がありました。そして、新町会長からは、ごあいさつの中で、平和産業としての観光業というお話がございました。皆様ご存じのとおり、観光資源の中には、当然、自然環境にかかわるものがあります。
そしてもう一つが、お言葉にもありましたけれども、人とのふれあい、これが観光の大きな要素でございます。この大切な資源を守るということが、すなわち人権を守ることだと私どもは理解しております。人権というのは、やはり性、人種、年齢、民族、文化の違いを超えた人間としての尊厳を守ること、それを人権だと私どもは理解しております。これがなくして観光業の発展はないと私どもは考えております。
そういう意味で、観光産業の一層の発展のためにも、コードプロジェクトの推進と、その関係業界へのさらなる強い浸透を皆様にお願いしたいと思います。本日はまことにありがとうございました。これをもちまして閉会とさせていただきます。改めまして、ありがとうございました。