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守ろう子どもの権利 STOP!子どもポルノ
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■日 時 | :2006年10月26日(木)14:00 〜 16:30 |
■会 場 | :東京・高輪 ユニセフハウス1F 橋本正記念ホール |
■主 催 | :財団法人 日本ユニセフ協会 |
■後 援 | :外務省 総務省 警察庁 財団法人インターネット協会 ECPATストップ子ども買春の会 |
■参加者 | :官公庁、IT業界団体、企業、NGO、一般 (約80名) |
■報道取材 | :テレビ、新聞、雑誌等 (約10社) |
【プログラム】
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2006年10月26日、東京・高輪のユニセフハウスにて、シンポジウム「守ろう子どもの権利 STOP!子どもポルノ〜サイバースペースに潜む危険から子どもたちを守るために〜」を開催。子どもポルノなどのサイバースペースにおける子どもに対する性的搾取の問題に対し、日本国内のIT、コンピュータ、携帯電話通信業界では子どもを守るための活動を積極的に展開しています。本シンポジウムでは、こうした「子どもの保護」への取り組みを始めている電気通信事業団体・企業の皆様から、それぞれの取り組みについてご報告いただき、メディアや一般に向けて、広くこの問題に対する関心を喚起しました。
まず、早水 研日本ユニセフ協会専務理事より、シンポジウム開催にあたり、子どもポルノの問題が、「子ども買春と並んで人権侵害であると同時に、場合によっては命に関わる犯罪でもある」とし、子どもの保護の取り組みについての課題と方向性を考える必要があることを訴えました。
宮本 潤子 ECPATストップ子ども買春の会 共同代表 |
報告1ではまず、宮本 潤子 ECPATストップ子ども買春の会 共同代表から、子どもポルノに関する世界各国の状況と取り組みについて発表されました。現在の子どもポルノサイトの数について、「アメリカのNCMEC(全米行方不明・被搾取児童センター)によると、2001年に2万4,400サイト、2006年初期までに34万サイトであった」との調査結果を報告。また、スウェーデン・エクパットが開設したホットラインは、「商業的子どもポルノのサイトは過去4年間で4倍に増え、児童ポルノサイトの発信国は全部で35カ国あり、4,758件の通報を受けて削除など何らかのアクションを起こしたサイトのうち、最も多いのが米国で1,419件、次にロシアで647件、3番目は日本で441件、スウェーデンは366件(2006年10月25日現在)」であると報告しています。今後、日本がこの問題に取り組む上で、「日本でスタートした旅行業界のコードプロジェクト同様、インターネット業界の中でも、子どもの人権、子どもの安全や保護に留意した行動倫理規範といったものを業界全体で採択」することが提案されました。
伊藤 正明 警察庁生活安全局少年課 課長補佐 |
つづいて、伊藤 正明 警察庁生活安全局少年課 課長補佐が、日本における子どもポルノに対する警察庁の取り組みを報告。「児童ポルノに関連する事件の検挙件数は、おおむね200件前後で推移してきたが、平成16年の児童買春・児童ポルノ禁止法の改正で処罰される行為が追加されたこともあり、2005年は、470件と一昨年に比べ約300件近く増えている。2006年上半期も226件と2005年上半期に比べ62件も増え、児童ポルノ事件でインターネットを利用しているのが、2005年は136件で、2006年上半期は97件あった」と述べました。また、現在の児童買春・児童ポルノ禁止法で処罰できないものとして、『他人に提供する目的を伴わない児童ポルノの所持(いわゆる単純所持)』と『実在しない児童を描写した児童ポルノ、つまり、漫画、アニメーション』の例を挙げました。最後に「警察も取締りを強化しているが、公共空間であるインターネット上から違法な情報をなくすためにはやはり業界の皆様の協力が必要」であるとし、官民協力の重要性を訴えました。
<インターネット業界の取り組み>
吉川 誠司 インターネット・ホットラインセンター シニアアナリスト |
報告2はIT業界団体・企業より、それぞれ子どもの保護のための取り組みが発表されました。吉川 誠司 インターネット・ホットラインセンター シニアアナリストは、ホットラインセンターの児童ポルノに関する取り組み状況と、実際の児童ポルノ等の画像からみた具体的な事例を紹介。「ホットラインセンターに今年6月から9月までの4ヵ月間に届いた通報のうち、児童ポルノ公然陳列は、国内198件、国外94件で、違法情報全体の約26.9%、ただし1件の通報で複数のサイトが通報されることもあるので、実際のサイト数はもっと多い」ことを報告しました。
また、運用ガイドラインに基づいて違法と判断されたサイトは警察庁に情報提供し、最終的にはプロバイダー等に削除依頼をしますが、そのうちおよそ80%は削除完了、38件が削除未了となっている」状況を述べ、削除未了の理由として「違法情報が掲載されているとプロバイダーが知りつつも放置している件数が半分近くあり、それ以外は対応待ちか、警察からの指示により保全扱いになっている」ことを説明しました。加えて、児童ポルノの掲載場所について、画像投稿掲示板への投稿や携帯専用サイトなどを挙げ、特に携帯専用サイトは警察も確認しづらく、発覚しにくいと考えられていることを報告。また、掲示板によってはいくつものカテゴリに分かれて数百件の投稿が存在するケースがあり、全てを確認して削除依頼を行うのはかなりの負担であること、そして、URLが投稿されているだけの掲示板の管理者に削除依頼することは法的に難しい問題であることなどを課題として述べました。
<民間企業の取り組み>
別所 直哉 ヤフー株式会社 法務部長 |
日本の大手ポータルサイトYahoo! JAPANとMSNを代表し、民間企業による子どもの保護の取り組みが発表されました。別所 直哉 ヤフー株式会社 法務部長は、現在Yahoo!が提供しているサービスを紹介。「一つ目は『Yahoo!きっず』という、子どもにとって暴力的なサイトを除いたホワイトリスト。二つ目の『Yahoo!の検索システムのフィルタリングサービス』は、検索機能に組み込まれたアダルトフィルタが、アダルトサイトをはじく仕組みになっている。3つ目の『Yahoo!あんしんねっと』のフィルタリングは、社内の用語辞書(ワードフィルタリング)と照らし合わせて有害および不適切なサイトをURLでフィルタをかけ、単純に有害なサイトをブロックするだけでなく、ショッピングや掲示板への書き込みを不可にする機能もあり、子どものブログや掲示板、チャットの利用の是否を保護者が判断する。このサービスは、2007年から、無料で取得できるYahoo!IDを持つすべての人が利用できるようになる」と述べました。また、「Yahoo!オークションは常に監視し、削除基準に照らして違法なものや不適切なもの、たとえば児童ポルノかどうか判断しにくいものもすべて一掃している」と述べ、「このような取り組みのなかで、より安全なインターネット・サービスの提供を実現していきたい」と話しました。
小野田 哲也 マイクロソフト株式会社 オンラインサービス事業部 プロダクトマネージメントグループ Windows Liveチームディレクター |
小野田 哲也 マイクロソフト株式会社 オンラインサービス事業部 プロダクトマネージメントグループ Windows Liveチームディレクターは、マイクロソフトの活動として、セキュリティ向上を最優先課題として取り組んでいることを述べました。「ソフトウェアの開発段階で、高いセキュリティーレベルのプロダクト開発を目指し、アップデートの際は常に最新のセキュリティ機能を無償提供している」ほか、政府、関連業界との連携強化にも努め、その一環として、警察庁と技術協力協定を結び、オンライン犯罪の追跡やハイテク犯罪に対する警察との特別に連絡窓口を設置している」と述べました。
子どもの安全については、「『Windowsライブスペース』という、18歳未満であると申告すれば、有害なサイトが引っかからないよう、ブログの検索機能を設定が可能となるサービスを提供。また、教育啓蒙活動として親子で学ぶインターネット教室、中学生対象のインターネットの安全利用教室、高校生対象のセキュリティ授業なども行っている」ことを報告しました。加えて、『Windows Live One Care PCセーフティ』という、オンデマンドで最新のウィルス対策ソフトをダウンロードでき、その場でウイルスの検知、駆除まで行うサービスや、『Windows Live One Care - Family Safety』のコンテンツフィルタリングという、有害サイトを保護者が5段階の年齢別基準でフィルタを設定でき、またカテゴリーごとに許可や警告などの設定ができるサービスなど、どちらも完全無償で提供される予定であると発表しました。そして、保護者が管理設定するだけでなく、「子どもから保護者に対し、連絡を取りたい相手について、リクエスト欄を設けるなど、親子間のコミュニケーションに影響に配慮した機能も提供する」と述べました。
パネルディスカッションの様子 |
パネルディスカッションは、上記 報告1および2の発表者がパネラーとして参加し、中井裕真 日本ユニセフ協会広報室室長が司会を務めました。宮本氏は、国際的にみた日本の取り組み状況について、「法整備および法執行においてもまだ十分ではないが、上記報告からも分かるように、インターネット業界が活発に動き始めており、今後の取り組みが期待されている」と述べました。また、子どもの保護に取り組む中での課題として、国際機関によるポリシーレベルでの標準化や、業界内での削除基準の策定の必要性などが話し合われました。最後にユーザーに対しては、フィルタリングなどの機能や使用法についての認識を高め、そして提供されているサービスを積極的に利用して欲しいと訴えました。
写真:日本ユニセフ協会