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財団法人日本ユニセフ協会

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世界の子どもたちは今 報告会レポート

コンゴ民主共和国 ユニセフ・ゴマ事務所 青木佐代子氏 現地報告会 開催

© 日本ユニセフ協会

日時 :2008年11月19日(水) 午後2時〜4時
会場 :ユニセフハウス(東京・高輪)2F会議室
報告者:青木 佐代子
      (ユニセフ・コンゴ民主共和国事務所 教育担当官)

【2008年11月19日】

30年にも及ぶ独裁体制の崩壊後、1998年に勃発した内戦が現在も続くコンゴ民主共和国。
1994年、隣国のルワンダで発生した内乱と大量虐殺事件の時に多くのルワンダ難民が避難し、日本の自衛隊も人道支援のために派遣されたことで知られる東端のゴマ近郊で、10月26日(日)大規模な戦闘が勃発。これまでの内戦で既に「避難民」となっていた5万人近くの人々が、再び避難を強いられています。

ゴマに置かれているユニセフの現地事務所に、2007年4月から常駐し、教育支援事業を担当している日本人スタッフ 青木佐代子さんが一時帰国。現地の最新状況とユニセフの取り組みを報告しました。

地図

コンゴ民主共和国 主要データ

  • ● 面積:234.5万平方キロメートル
  • ● 人口:6,240万人(2007年)
  • ● 乳児死亡率:129/出生1,000人あたり(2006年)
  • ● 5歳未満児死亡率:205/出生1,000人あたり(2006年)
  • ● 5歳未満児死亡率の順位:9位

※データは主に『世界子供白書2008』より

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コンゴ民主共和国東部北キブ州に位置するゴマでは、10月28日から一部衝突が悪化しています。こうして話をしている今でも、武力衝突が起きています。2週間ぐらい前から現地にジャーナリストが入ってきていますので、映像などをご覧になっている方もいらっしゃるかと思います。

© Yasuyoshi Chiba

コンゴ民主共和国では、約30年間も武力紛争が続いています。メディアなどで取り上げられるようになるずっと以前から悪い状況が続いているのです。その原因は、天然資源、政治的問題、民族衝突などが考えられますが、背景は非常に複雑です。

ゴマの総人口は約500万人。その約20パーセントにあたる、およそ110万人が国内避難民として避難を強いられ、8月から今までに、新たに25万人が避難民となり、10月末までの2週間で10万人が住むところを追われました。2008年1月に和平協定が結ばれたのですが、機能していないというのが実情です。

© Yasuyoshi Chiba

武力衝突は、人々が生活している場所で起きています。トマトを売っている市場の前を、戦車が通っているといった状況です。ごく普通の人々が銃を持って戦っています。最新の科学兵器を使用した戦いでもなく、人間同士の撃ち合いです。武力衝突が起きると、武装グループは、武力衝突が起きている方へ移動し、人々はその反対方向へ逃げていきます。避難する人々は、雨が降って寒い中、何時間どころか何日も、何週間もかけて、持てるものだけを持って逃げなければなりません。

私は、コンゴ民主共和国に行く前は、戦闘というのは銃の撃ち合いであり、人々の生活の場とは関係のない所で起きるものだと思っていました。でも、今は、人々が生活の場を奪われ、そのときに持てるものだけを持って、逃げなければならないものだということがわかりました。

© Yasuyoshi Chiba
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子どもと女性にとって地球上最悪の場所

© Yasuyoshi Chiba

現在、コンゴ民主共和国は、子どもと女性にとって地球上最悪の場所と言われています。子どもと女性は、常に暴力や搾取の危険に晒されています。武力衝突は、政府軍と反政府組織の場合もありますし、民族同士の場合もあります。勝ったほうがその土地を没収して、略奪が始まります。占領したところでは、勝った側の兵士がご褒美ということで、土地の人々を殺したり、物やお金を奪ったり、女性は8歳から60歳まで年に関係なく全員がレイプされたりします。物を取った後、家の中に人が残っていても火をつけて逃げる場合もあります。

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普通ならば、人々は、コミュニティや隣人、学校などに守られていますよね。でも、こうした状況では、人々は避難を強いられていますから、守られる場所がありません。人々は免疫力が低下し、病気に罹りやすくなります。現在、ゴマには、安全な水はないと考えて頂いて結構です。水溜りの水は、病気の蔓延の原因となります。例えば、コレラに罹った子どもたが水溜りを利用して頭を洗った場合、他の子どもがその水溜りで顔を洗い、母親がその水で鍋を洗うかもしれません。そうすると、コレラが流行してしまいます。手を洗わないことも病気が蔓延する原因となり、下痢性疾患で命を落とす子どもが非常に多くなります。

スタッフにも命の危険

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10月28日、私たちスタッフも、全員とりあえず手にもてる物だけをもって、緊急避難を強いられました。私も、パスポートとパソコンとお財布だけもって避難しました。約600人が、避難場所となるWHOの倉庫に集まりました。食べ物も、飲み水もありませんでした。午前2時頃まで銃の音が聞こえていて、床に横になりましたが、朝までなかなか眠れませんでした。いちおう、PKOが守っているので国連スタッフは襲われることがないと言われていましたが、何が起こるかはわかりません。避難した倉庫まで入ってこられたら、殺されるだろうという気がしました。自宅に残した猫と犬、家の門番の人は殺されているかもしれない、家は全部ぐちゃぐちゃになっているかもしれないと思いましたが、幸い家は被害を受けず、無事に帰ることができました。


ユニセフの支援活動

ユニセフは、こうした中で支援活動を行っていますが、非常に厳しい状況が続いています。つい2週間前にも、はしかの予防接種を行っていたところに、近くで戦闘が始まってしまい、せっかく苦労して運んだワクチンを全てそこに置いてこなければなりませんでした。  今週から、ユニセフは、文房具を配り、子どもたちが学校に通えるようにする活動を始めました。現在多くの学校が避難所として使用されています。学校に避難している人々に、昼間だけ教室から出てもらって、授業が行えるようにしています。しかし、校内の机やいすが薪として使われてしまうことも多く、学校の再開は簡単ではありません。


避難キャンプで生活している人々は避難民全体の約3割

© Yasuyoshi Chiba

避難キャンプに逃げてきている人々は、武力紛争の影響を受けている人の約3割程度に過ぎません。その他の7割の人々は、ホストファミリーと呼ばれる家の敷地内で暮らしています。ホストファミリーと言っても、日本でイメージするような外国から来た留学生を受け入れるようなものではありません。ホストファミリー自体も元々生活が苦しいところに、武力衝突から逃げてきた人たちが、遠い親戚だから助けてほしいというようなことを言って、敷地内に仮住まいすることを許してもらうのです。避難キャンプのように、分かりやすいところには支援物資が集まりやすいのですが、それ以外の場所に逃げている人々への支援が届きにくくなっています。

今後も続く武力紛争。再建には長い期間が必要

ユニセフの活動は、皆様からの支援に支えられています。現地のニーズは、刻々と変わります。緊急支援の場合はなおさらです。あるときはトイレが必要かもしれませんが、次には先生の研修も必要になります。こうなったときに、「この支援に使ってください」というように資金の使途を限定されてしまいますと、逆に必要な活動ができなくなる場合があります。ですから、ニーズを限定しないで支援していただけると、とてもありがたいです。

コンゴ民主共和国でのこのような状況は、これからも当分続いていくと思います。しかし、なかなか問題が解決しないと、メディアの注目度も低くなり、人々は同じ話を聞くのに疲れて、飽きてしまうものです。 が、どうぞこうした状況を忘れずに、追い続けてほしいと思います。 短い時間でしたら、今日のお話で、紛争が人々に与える影響について、皆さんに少しでも分かっていただければ幸いです。

© Yasuyoshi Chiba
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