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公益財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー 報告会レポート

小林紀晴写真展「アジアでいちばん若い国 東ティモールの子どもたち」
スペシャルトークショー開催

【2012年10月12日 東京発】

世界では、汚れた水や不衛生な衛生設備(トイレ)と衛生環境が大きな原因となって引き起こされる下痢性疾患によって、毎年約76万人の子どもたちが、5歳未満で命を落としていると推定されています。アジアで一番若い国、東ティモールも、そうした子どもたちが最も多い国のひとつです。

王子ネピアは、東ティモールの衛生環境の改善を進めるユニセフの活動を支援し、2008年から子どもたちの命と健康を守る「nepia 千のトイレプロジェクト」を展開しています。このプロジェクト発足当初から活動に随行して写真を撮り続けている写真家・小林紀晴氏は、これまでに東ティモールを4度訪れ、多くの子どもたちの姿を撮影してきました。

2012年10月12日(金)、ユニセフハウスで開催中の小林紀晴写真展「アジアでいちばん若い国 東ティモールの子どもたち 2008〜2012」のに合わせ、プロジェクトのこれまでの5年間を、小林氏、王子ネピア、日本ユニセフ協会がそれぞれの立場から振り返る、スペシャルトークショーを行いました。

* * *

東ティモールは、2002年に独立したアジアで一番若い国。しかし、5歳未満児死亡数は、出生1,000人あたり55人(2010年)と世界的に見ても、高い割合です。国土に山が多く、道路などの整備が不十分で、生活インフラの整備も十分ではありません。水と衛生、とりわけトイレについては、家庭でも学校でも、継続的かつ安定的に使用することができないため、多くの子どもが下痢性疾患に陥り命を落としたり、また学校を休むといった状況を引き起こしています。

since 2008 〜東ティモールでの最初の一歩〜

小林紀晴さんは、2008年に初めて東ティモールを訪れた際の印象について聞かれると、「空港を降りると避難民キャンプがあったり、夜は外出禁止となっていたりと、物々しい雰囲気でした。でも、子どもたちはかわいく、花はきれいで、こうしたきれいなものと壊されたものの対比が印象的でした」と語りました。現地では、同じ村を何度も訪れ、現地の子どもたちとコミュニケーションを深めて撮影に臨みました。

日本のみなさんの思いも一緒に

2009年に入ると、このプロジェクトの支援を受けてつくられたトイレをみることができました。王子ネピアの齋藤敬志さんは、「このプロジェクトを通じて、日本のみなさんの思いも一緒に届けていると考えています。実際に、トイレの持ち主の方がとても喜んでいて、ある人は台所より大事にしていると話してくださいました。1日に2回掃除しているという方もいらっしゃいました。現地のみなさんが大切に使っていることや、喜んでいるみなさんの姿をみて、このプロジェクトの意義を感じることができました」「初めてトイレを見たときは本当に嬉しかった」と、その当時のことを話してくださいました。

© UNICEF/NYHQ2011-2113/Marco Dormino
家や水源を書き込んだ村の地図に、ふだん排泄をしている場所を書き込む男の子。村の人たちがいっしょに地図を作ることで、村全体で取り組もうという意識が高まる。(ハイチ)

ユニセフは、世界各地で、住民が主体となって取り組む、コミュニティ主導の包括的な衛生アプローチ(CLTS)を実施しています。東ティモールでは、2010年からこのアプローチを導入。村の人々に、トイレの重要性を理解してもらう活動からはじめています。自分たちの衛生状況を知り、状況を改善するためにはどうしたらいいのかをいっしょに考えます。ワークショップでは、村の地図を作り、その地図に学校や家を書き込んでいきます。その地図に、ふだん自分たちが屋外排泄している場所に印をつけます。すると、水源や他人の家のそばで排泄していることが明らかになり、村の人たちの意識が変わってきます。
知らないうちに自分たちで作り出していた不衛生な環境が、下痢やさまざまな病気が引き起こされていることがわかると、状況を改善しよう、トイレを作ろうという意欲がぐんと高まるのです。ユニセフは、また、村の人々が自ら便器を作ったり、丈夫な素材でトイレを作り直したり、隣村の人々に完成したトイレを見せるという活動も支援しています。

in 2012〜東ティモールの今、プロジェクトのこれから〜

今年初めて視察に同行した王子ネピアの大堀栄子さんは、実際に現地の方から、「環境を改善することが大切なんだということを知ることができて、とても感謝している」「自分たちがこうしてがんばっていることを日本のみなさんにぜひ伝えてほしい」と言われたことにふれ、「その場限りの与えるだけの支援ではなくて、自立を促し、前に向かっていく支援なんだと現地の人の言葉から感じることができてとても嬉しかったです」と語りました。

王子ネピアには、2008年から2011年までの間に、日本全国のみなさんから6万通ほどの応援メッセージが寄せられています。「日本全国のみなさんの思いがこもったトイレを見ることができて感動しました。年々、数値が改善していることは分かっていますが、まだまだ改善が必要な状況ですし、この写真にあるようなかわいらしい子どもたちのためにも、もっと支援の輪が広がり、死亡率削減に繋がればいいと思っております。そういったお手伝いを今後も継続していきたいと思います」と今後のプロジェクトについての抱負を語りました。

本イベントで司会を務め、プロジェクトを立ち上げた2008年当初からこのプロジェクトをサポートしてくださっている電通ソーシャル・デザイン・エンジンの並河進さんは、支援の様子を次のように語ってくれました。「このプロジェクトは、村人が中心になってやっていくのを応援してサポートしていくものです。村の人たちが変わり、村の雰囲気が変わります」「大きい施設ではなくても、自分たちのトイレは作れるんだと頑張っている姿が印象的でした。日本でも東ティモールでも頑張っている人の姿は変わらないと感じました」

奇跡の1枚

© 小林紀晴

最後に、2012年に撮影されたある写真について、小林さんは次のように語りました。
「ふだんは、(写真を)撮っている時は頭がさえていて、わりと冷静に撮影状況の色々なことを考えているので、撮っていて感動するということはないんですが、この写真は、ファインダー越しに自分が見ている、まだ写真になっていない'画'の中に入り込むような瞬間がありました。そういうことはあまりないことで、なんとなく、奇跡の1枚のような気がしています」「今まで撮ってきた、(ユニセフハウスに展示してある)2008年からの写真を改めて見て、少し感動してしまいました。たった1枚ですが、その後ろには色んな人がいて、そういう1枚はとても貴重だと思います。これからも撮っていきたいと思います」

ユニセフハウスでは、2012年10月31日まで小林紀晴写真展「アジアでいちばん若い国 東ティモールの子どもたち 2008〜2012」を開催中です。ぜひお立ち寄りください。
ユニセフハウス»

表記のない写真全て:© 日本ユニセフ協会

nepia 千のトイレプロジェクト

家庭紙メーカーの王子ネピア株式会社は、国際衛生年にあたる2008年、開発途上国のトイレと水の問題に取り組むため、「nepia千のトイレプロジェクト」を立ち上げました。プロジェクト5年目となる今年は、2012年9月1日(土)〜2012年12月31日(月)でキャンペーンを実施。キャンペーンの期間中、ティシュ、トイレットロールなどの対象商品のお買い求めに応じて、売上の一部がユニセフへ寄付され、支援対象国の東ティモールで1,000以上の世帯でのトイレづくりと安全な衛生習慣の定着を支援し、衛生的な環境の普及と、子どもと家族の健康を守ることを目指します。

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