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ユニセフ・中央アフリカ共和国 現地報告会
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© UNICEF/PFPG2015-2458/Logan |
戦闘勃発後、6か月をブッシュ(茂み)の中で隠れて生活を送っていた家族 |
© UNICEF/PFPG2015-2453/Logan |
ユニセフが修復に携わった採水口。 |
紛争下の子どもたちは様々な形で被害を受けます。例えば、44万人いると言われる国内避難民の他に、ユニセフ現地事務所によると約4万人いると言われるハイド・イン・ブッシュ(Hide in Bush)と呼ばれる茂みに隠れて生活を送る人々。こうした生活下にある人々は衛生状態の悪い沼地などの水や乏しい食糧に頼らざるを得ず、子どもたちは特に衛生面・栄養面で大きな被害を受けます。
また、略奪などの被害に合い、国の3分の1の病院が閉鎖し、予防接種用のワクチンの低温管理システム(コールドチェーン)も崩壊したため、子どもたちや妊産婦への予防接種等の定期的な医療ケアは不可能になりました。加えて、半分以上の学校が閉鎖に追い込まれ、略奪や放火の被害も多くあり、生徒も教師も身の危険から学校に戻れない状態が続いています。
こうした状況について、2013年12月にユニセフは人道支援の優先度が最も高い緊急事態を表すレベル3を発動し、中央アフリカ共和国により迅速に支援が届くよう体制を整えました。ユニセフ現地事務所では、緊急物資の支援以外にも水を供給するためのパイプラインの設置、感染症予防のためのトイレ・手洗いの奨励、はしか・ポリオなどの予防接種の実施、学校再開に向けた「バック・トゥ・スクール」キャンペーンの開始などを行っています。
小川さんの専門である「子どもの保護」分野での活動の一つに、武装勢力に徴用されているとされる子どもへのケアや、性暴力といったジェンダーに基づく暴力への対応があります。
ユニセフ現地事務所によると、2014年12月までにユニセフでは2,400人以上の子ども兵士を解放してきましたが、子どもが武装勢力から解放され、家族やコミュニティに戻るまでには長い時間がかかります。具体的には、ユニセフはまず、武装勢力側と適切な交渉ができる関係を構築するため、何度も何度も武装勢力の指導者に働きかけ、子どもの権利や人権について説明をします。そして、忍耐強い説得の結果、武装勢力側が子ども兵士の存在を認め名簿の作成に応じた場合には、ソーシャル・ワーカーらによって徴用されている子どもたちへ聞き取り調査が行われ、本当に徴用が行われているかどうかが確認されます。徴用が認められた場合に、解放へと進みます。しかし、解放=支援の終了、ではありません。そこからユニセフは医療面や心理面でのケア(絵や演劇形式での心のケアを含む)を提供するほか、教育や職業訓練の機会を提供し、最終的には子どもたちが家族やコミュニティに再統合できるよう手助けをします。
子ども兵士となった子どもたちの中には、強制的に連れ去られた子どもの他に、近しい人への攻撃に対する復讐心などから自発的に武装勢力に参加する子どももいます。こうした背景の異なる様々な子どもたちへの支援について、ユニセフでは解放された子どもたちが孤立しないよう、コミュニティの他の子どもたちと混ぜて支援を行うことを一つの軸としています。
中央アフリカ共和国は、希望の持てない、絶望的な場所と感じるかもしれません。しかし、現地で子どもの保護に力を注ぐ小川さんは、「子どもは確かに保護が必要な弱い存在。しかし一方で、夢を見たり、未来への希望を持てたりする子どもたちは実は一番強い存在かもしれない」と述べました。本年首都バンギで行われるバンギ・フォーラムでは、「政策に子どもの意見を」という方針の下、ユニセフ主導で子どもフォーラムが開催されます。現在ではそれに向けて各地でワークショップを開催しており、子どもの意見が続々と集まっています。
「平和がほしい」。こうした子どもの声を尊重し、紛争前よりもより良い国を再建する。そんなBuild Back Betterの試みがこれから中央アフリカ共和国で始まろうとしています。
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◆報告者プロフィール◆
小川亮子(おがわりょうこ)
東京都出身。民間企業に勤務後渡英して国際開発及び教育の修士を取得。在タジキスタン日本大使館ならびに外務省での緊急人道支援・開発事業担当を経て、2014年2月より国連ボランティアとして中央アフリカ共和国ユニセフ事務所 子どもの保護専門官。