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公益財団法人日本ユニセフ協会

『世界子供白書2007』

2006年12月11日、日本時間午前9時1分、『世界子供白書2007』が発表されました。

 今年の白書のテーマは女性のエンパワーメント」(原題:Women and Children −The Double Dividend of Gender Equality)です。 白書は、ジェンダーによる差別をなくし、女性のエンパワーメント(社会的地位の向上と能力強化)を実現することが、子どもたちの生存や健全な成長の促進につながることを訴えています。

 ユニセフ事務局長アン・ベネマンは、「ジェンダーの平等と子どもの幸福は、切っても切れない関係にあります。女性が力をもち、充実した人生を送れるようになれば、子どもや家族にとっても良い影響があるのです。」と言います。

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ジェンダーの平等がもたらす二重の恩恵

© UNICEF/SW2K00161/Giacomo Pirozzi

 女性の権利がより広く認められ、ジェンダーの平等が実現すれば、女性だけでなく、子どもや家族、コミュニティ、そして国にとっても恩恵がもたらされます。白書は、女性が今日おかれている状況を分析し、家庭、職場、政治の分野で、女性や子どもの生活を形づくる重要な意思決定における女性の影響力を増大させる必要があると指摘しています。

 女性のおかれている状況は、過去数十年間で改善が見られたものの、未だに何百万人もの女性や女の子が、差別やディスエンパワーメント、貧困などに苦しんでいます。
 たとえば、女性や女の子の方がHIV/エイズに罹る危険性が高く、また、同じ仕事内容でも、男性より女性の賃金の方が低いケースが多く見受けられます。さらに、世界では何百万人もの女性が、身体的・性的暴力の犠牲になっており、また、差別のため、多くの女の子が学校に行くことができないでいます。途上国では、小学校に入学した女の子のうち、5人に1人が卒業まで学校を続けることができませんが、女性が教育を受けると、その子どもの生存や発達にも良い影響が出るという調査報告もあります。

 ベネマン事務局長は、次のように語っています。「子どもの健康や幸福を真剣に考えるなら、今こそ私たちは行動をおこし、女性や女の子が教育や政治参加の平等な機会を持ち、経済的に自立して、かつ暴力や差別から保護されるようにしなければなりません。」

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ジェンダーの平等を実現するための7つの方法 

© UNICEF /HQ98-0609/Alejandro Balaguer

白書はジェンダーの平等を実現するために、7つの方法を提案しています。

  1. 教育:
    学校にかかる費用を無料にしたり、親やコミュニティを説得して、女子教育に投資するよう奨励することが、重要なステップとなります。
  2. 財政:
    ジェンダーの平等や女性のエンパワーメントを実現するために、より多くの資金が必要であるということは、あまり認識されていませんでした。ジェンダーの不平等をなくすため、政府予算や計画の中に、もっと多くのの資金や施策が、公平かつ効率的に組み込まれなければなりません。
  3. 法律:
    財産に関する法律や相続権について、国の法律が女性にとって公平な判断を行うようにしなければなりません。また、家庭内暴力や紛争下で行われるジェンダーにもとづく暴力を防止し、これらに対処する手段が必要です。
  4. 法的な割り当て:
    女性が政治に参加できる方法として、クォータ(議席割り当て)制が有効であることが証明されています。世界でもっとも多くの女性議員を有する20カ国のうち、17カ国が何らかの形のクォータ制を導入しています。
  5. 女性による女性のエンパワーメント:
    女性の草の根運動は、ジェンダーの平等やエンパワーメント達成にとって、最も強力な推進役となってきました。政策形成の初期段階から女性を参加 させることができれば、女性と子どものニーズを念頭においたプログラム作りが可能になるはずです。
  6. 男性と男の子の協力:
    女性と女の子だけでなく、男性や男の子にもジェンダーの平等がもたらす利点について理解してもらうことが重要です。男女共同の意思決定によって、より協力的な関係を築くことができるのです。
  7. 調査とデータ収集の改善:
    より良いデータの収集と分析、特に、妊産婦死亡率、女性に対する暴力、教育、雇用、賃金、無償労働と時間の利用方法、政治参加の分野において不可欠です。

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女性の権利が認められていない場所

 白書は、家庭、職場、政治の分野で、もっと女性の権利が認められ、保護されるようにならなければならないと呼びかけています。

● 家庭 〜意思決定から排除される女性たち
© UNICEF /HQ05-2192/Giacomo Pirozzi

 家庭内の重要な意思決定について、女性に平等の発言力が与えられていないため、子どもに深刻な影響が出ることがあります。家計支出や女性自身の保健ケア、自宅外にいる友人・親戚への訪問など、家庭内のすべての意思決定に参加できた女性が50%以上いた国は、調査の対象となった開発途上国30カ国中、わずか10カ国でした。

 女性が自分の人生を決めたり、家族に影響のある決定ができるようになると、子どもの栄養、健康、教育も改善されます。家庭内の意思決定に強い影響力を有する女性がいると、そうでない家庭に比べて、子どもに割り当てられる資源の比率が格段に大きくなるのです。 

 国際食糧政策研究所の調査によると、男性と女性が意思決定に平等の影響力を行使できるようになれば、南アジアの3歳未満児の低体重児発生率は最大13ポイント下がり、同地域に栄養不良児の数が1,340万人減ると予測されています。また、サハラ以南のアフリカでは、170万人の子どもたちの栄養状態が適切になると言われています。

● 職場 〜収入におけるジェンダーの不平等

 女性が収入を得ると、子どものために役立てようとします。収入におけるジェンダーの不平等は、保健ケア、適切な栄養や教育といった子どもの権利を実現するための資源を減少させたり、制限することになります。

 賃金格差と労働参加に関する試算の結果、中東および北アフリカの調査が行われた国では、女性の賃金は男性の約30%、中南米および南アジアでは約40%、サハラ以南のアフリカでは50%、中部・東部ヨーロッパ、独立国家共同体、東アジアおよび先進国では約60%にとどまっているというデータもあります。

● 政治の分野
© UN Photo/Paulo Filgueiras

 より多くの女性が政治に参加するようになれば、子どもの福祉の面でも良い影響が出ます。政治に参加する女性は子どものための強力なアドボケート(唱導者)としての役割を果たしてきたことを示す証拠が、先進工業国・開発途上国を問わず、ますます増えつつあります。しかし、2006年7月現在、女性国会議員の数は、世界の議員の17%未満にとどまっています。

 列国議会同盟の事務局長アンダース・ジョンソン氏は、次のように述べています。「女性の政治参加と子どもの福祉は明らかな関連性があります。このことは、『世界子供白書』の中で、さまざまな形で言及されています。」

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ミレニアム開発目標の達成へ向けて

© UNICEF/HQ05-1566/Giacomo Pirozzi

 ジェンダーの平等がもたらす恩恵は、子どもへの直接的な影響だけにとどまりません。
ジェンダーの平等の推進と女性のエンパワーメントは、ミレニアム開発目標に掲げられている目標のひとつでもあります。もし、この目標が実現すれば、貧困や飢餓を削減するだけでなく、子どもたちの生存、妊産婦の健康状態の改善、すべての子どもへの教育、HIV/エイズやマラリアなどの病気対策が促進され、最終的にはほかのすべての目標の達成にも寄与する、と白書は述べています。

PDFファイルで読む

巻末統計

» 掲載データについて (PDF 864KB)   » 5歳未満児死亡率の順位 (PDF 990KB)   » 表中の国の分類 (PDF 862KB)
» 人間開発の進展を測る 表10について (PDF 1MB)   *指標の定義・データの出典・注(表1〜10)
(Wordファイル 90KB)
   

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