|
|
HOME > ニュースバックナンバー2014年 >
|
ガザ地区:
|
© UNICEF/NYHQ2014-1069/d’Aki |
病院に入院しているモハメッド・ムーサくん(12歳)。脊髄を損傷し、下半身麻痺が残っている。 |
ガザの戦闘に巻き込まれた多くの幼い子どもたちが、緊急に治療を必要としています。身体に受けた傷はさることながら、心に負った深い傷が癒えるまでには、長い時間が必要です。
* * *
戦闘が勃発してから1カ月−増え続ける死者数、破壊される家屋、恐怖が街を包んでいます。ガザの多くの子どもたちの命が失われ、生き残った子どもたちも、再び元の生活には戻れないほど深刻な傷を心身に負っています。
12歳のモハメッド・ムーサくんは、もう二度と、昔のように友達と遊ぶことはできません。
多くの人が避難している超満員の家から一歩も外に出られないまま3週間が経ったころ、イスラエルとハマスが一時停戦に入りました。モハメッド・ムーサくんは、ずっと閉じ込められていた家や戦闘の恐怖からひと時でも逃れるため、友達と一緒に近くの公園に遊びに出かけました。
「遊んでいたら、突然飛行機の音が聞こえました」モハメッド・ムーサくんがその時のことを思い起こします。
「その後、傷ついた人や死んだ人が目に入りました。バラバラになった遺体が辺り一面に散乱していました」病院のベッドに横になりながら、少しずつ傷の回復に向かうモハメッド・ムーサくんが小さな声で語りました。
© UNICEF/NYHQ2014-1070/d’Aki |
自宅への空爆で父親と叔父を失ってから、言葉を一言も発せずにいる7歳のサラ・アハメッドちゃん。 |
ガザ市のはずれ、シャティ避難民キャンプ付近で起きたその爆発で、10人の子どもが命を失いました。
「一緒に遊んでいた親友のモハメッド・アソムくんが、僕のすぐ横で死んでいました。その後気を失って、目が覚めた時には病院にいました」
爆弾の破片で傷を負ったモハメッド・ムーサくんは、脊髄を損傷し、下半身に麻痺が残りました。
同じ病室の小さなベッドで、友達のモハメッド・エイラくん(10)が横になっています。爆発によって顔や体の半分に大やけどを負いました。医師は手術が危険だと判断し、お腹には爆弾の金属片が残ったままです。
負傷した幼い子どもたちの多くは、ガザの小さな医療施設では治療が不可能なほどの重傷を負っており、ガザ地区の外に搬送して治療を行う必要があります。
「家に戻りたいし、友達にも会いたい」と話したモハメッド・エイラくん。しばらくして思い出したかのように、「殺されてしまった友達には会えないけれど」と、付け加えました。
「学校で理科の授業を受けたい。勉強してお医者さんになれば、たくさんの人を助けることができるから」(モハメッド・エイラくん)
© UNICEF/NYHQ2014-1037/d’Aki |
ガザ市にあるシファ病院で、心のケアを行うスタッフから人形を受け取る少女。 |
1カ月にわたる戦闘の空爆や攻撃で殺害された子どもは、少なくとも447人。壊滅的な被害をもたらしているこの戦闘で最も影響を被っているのは、最も幼く、守られるべき子どもたちなのです。
殺害された子どものおよそ70%が12歳以下で、最も幼い死亡者は生後たった10日の女の子でした。そして2,744人の子どもが負傷したと報告されています。
子どもたちは身体的な傷だけでなく、深い心の傷も負っています。
7歳のサラ・アハメッドちゃんは、空爆で破壊された自宅の瓦礫の中から救出されてから、一度も言葉を発せずにいます。サラちゃんが発するのは、苦しみのうめき声や泣き声だけです。
「サラちゃんを守るように抱きしめながら死亡していた父親の腕の中から、無理やり離して連れて来なくてはいけなかったのです」と、救助をした人たちが語ります。
幼いサラちゃんは既に3度の手術を受けていますが、神経が損傷しているため、もう二度と歩くことも、足を動かすこともできません。
言葉を失い、もう昔のように遊ぶことも、身体を動かすこともできなくなった子どもたちが負った傷やトラウマを乗り越える手助けをするために、私たちに何ができるでしょうか。ユニセフはパートナー団体と協力して、緊急心理ケアチームを配備し、カウンセラーによる心のケアを行っています。
ユニセフは、戦闘開始直後から60人のカウンセラーをガザ全土に派遣。負傷し、家族を失い、破壊された故郷や自宅を目のあたりにし、緊急にカウンセリングが必要な子どもたち2,206人に、初期段階の心のケアを実施してきました。
「私たち緊急心理ケアチームの役割は、出来る限り子どもたちの苦しみを和らげることです」と、パートナー団体である「民主主義と紛争解決のためのパレスチナセンター(PCDCR)」イヤド・アブ・ジャイエ代表が語ります。「子どもたちには、小さなプレゼントを渡しています。子どもたちを支え、助けたいと心から願って活動をしているのだと、子どもたちに感じてもらえたらと思います」
戦闘で負傷した子どもたちは治療を受け、回復への長い道のりを歩き始めます。子どもたちが再び笑顔を取り戻すまでには、長期間にわたるカウンセリングが必要です。そして再び、心から喜びを感じられる日が訪れるまでには、長い年月が必要かもしれません。
「やけどや麻痺、手足の切断、視力の喪失。重傷を負った子どもたちを目の当たりにして、心が穏やかにはいられません」
「誰であろうと、子どもたちにこのような傷を負わせた人たちに強い怒りを覚えます。子どもたちの将来のことを考えると、とても悲しい気持ちになります。しかしカウンセリングを行うたび、私たちの活動が、子どもたちが心に負った傷を乗り越え、再びそれぞれの道を歩き出すための手助けになっているのだと実感するのです」(アブ・ジャイエ代表)
【関連ページ】