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公益財団法人日本ユニセフ協会

イラク北部:
女性や子どもへの殺害、誘拐、性的暴力
シンジャルからの避難民が証言

【2014年8月20日ドホーク(イラク北部)発】

幼い子どもを抱いて避難するヤズディ教徒の女性。(イラク)
© UNICEF/NYHQ2014-1247/Khuzaie
幼い子どもを抱いて避難するヤズディ教徒の女性。

ユニセフは、イラク北西部のシンジャルから逃れてきた人たちから、武装集団が女性や子どもの殺害、誘拐、性的暴力を行っているとの証言が寄せられていることを明らかにしました。

ユニセフ・イラク事務所代表のマルツィオ・バビルは「この数週間、イラク国内で起きている子どもや女性、少数民族の権利侵害は、今世紀で最悪のもののひとつと言えます。紛争に関するあらゆる基準や行動規範において、決して受け入れられないほどひどい行為です」と述べました。

子どもや女性の人権侵害

ユニセフは、子どもの保護専門家チームを現地に派遣。武装集団が、ニナワ州のシリア国境近くに暮らしていたヤズディ教徒やほかの少数民族を攻撃した際に起こした人権侵害123件を個別に文書にまとめています。このうち、ユニセフはこれまでに80件の事案について調査を行い、内容を検証しています。本調査は、紛争下における子どもの権利侵害に関するモニタリング・レポーティング・メカニズム(詳細後述)に基づいて実施されています。

ユニセフ・イラク事務所の子どもの保護専門官 イブラヒム・シセイは「我々が話をした人ほぼ全員が、自分自身や家族、コミュニティが受けた人権侵害について語っています。皆、恐ろしい人権侵害を目撃するか、経験しています」と語りました。

16歳のヤズディ教徒のある少女は、武装集団が、強制的かつ一時的な結婚のもとで性的サービスをさせるために少女や女性たちを一同に集めていたと証言しました。証言をした少女はその場から逃げることができたものの、ほかの人たちは連れ去られたといいます。

シセイ子どもの保護専門官は「このようなつらい経験をし、少女や女性は大変苦しんでいます。このような悲劇の広まりへの対応の一環として、専門家による精神的なケアと医療支援を拡大させる必要があります」と述べました。

ユニセフはこれまでに、ドホーク州で避難生活を送る子どもたち3,000人以上に心のケアと支援を行っています。

ユニセフが配布している保健や保護に関するチラシを受け取る女の子。(イラク)
© UNICEF/NYHQ2014-1254/Khuzaie
ユニセフが配布している保健や保護に関するチラシを受け取る女の子。

■参考情報:紛争下における子どもの権利侵害について
2005年、国連安保理決議1612を受け、国連事務総長は、モニタリング・レポーティングメカニズムを設けました。このメカニズムはユニセフと当該国の国連トップの共同主導による、当該国のタスクフォースによって管理され、以下の6項目における子どもの権利侵害に関して、タイムリーかつ信頼できる情報を提供します。

  1. 子どもの殺害または負傷
  2. 武装勢力や武装集団による子どもの徴用
  3. 学校や病院への攻撃
  4. 子どもへのレイプやその他の性的暴力
  5. 子どもの誘拐
  6. 子どもへの人道アクセスの拒否

安全保障理事会は、国連事務総長による『子どもと武力紛争』年次報告書に、子どもの徴用を行っている、または子どもを死傷させている、子どもへのレイプや性的暴力を行っている武装勢力や武装集団の名称を記載することを要請。また、武力紛争に関わる勢力に対し、子どもたちの権利侵害をやめるための期限を定めた行動計画の立案と実行を求めています。(安保理決儀1612(2005年)、1882(2009年))

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イラク北部
避難民に総額500万米ドルの現金支給へ
必需品の入手可能に、避難民受入地域の経済にも貢献

【2014年8月20日 エルビル(イラク北部)】

シリアの国境まで逃れてきたヤズディ教徒の女性たちに、水を提供するユニセフ・スタッフ。(イラク)
© UNICEF/NYHQ2014-1171/Khuzaie
シリアの国境まで逃れてきたヤズディ教徒の女性たちに、水を提供するユニセフ・スタッフ。

イラクで続く人道危機への対応として、ユニセフはドホーク州で避難生活を送っている世帯に直接、現金の支給支援(1回)を行うことをドホーク州政府と合意しました。総額500万米ドル(約5億1,500万円 ※1米ドル=103円で換算)の支援となります。

ユニセフ・イラク事務所代表のマルツィオ・バビルは「バジェット・カンダラ(Bajet Kandala)、ザクホ(Zakho)、カンケ(Khanke)で、避難している方々から話を伺いました。また、ペシュカブル(Peshkabour)の橋を渡ってくる方々も見ました。ユニセフは支援活動を大規模に実施・拡大していますが、手元に現金があれば、商店などで生活必需品を子どもに買い与えることができます」と述べました。

ユニセフは総額500万米ドルの現金を支援し、ドホーク州政府は、無条件で1回限りの給付を行います。住民たちは、地元の市場や商店などで生活必需品を購入できます。この現金支給によって、避難している世帯は必要なものを購入でき、避難民を受け入れている地域社会の経済にも直接的に寄与することになります。

今回の合意は、ユニセフの大規模な人道支援のうち、物資の支援を補完するものです。8月2日以降、ユニセフは、トラック89台分、人道支援物資60トン以上を輸送。避難民16万2,000人分の飲料水、9万2,000人分の高エネルギーのビスケットをはじめとする補助食品、10万人分の緊急医療キットなどを提供しています。さらに今後数日内に、空路と海路で、200トン近い追加支援物資を受け取る予定です。

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