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公益財団法人日本ユニセフ協会

ユニセフ・子どもの生存に関する報告書発表
誕生した日に亡くなる新生児は100万人
5歳未満で亡くなる子どもは年間630万人

【2014年9月16日 ニューヨーク発】

ユニセフは本日『2014年度版 子どもの生存を守る:あの約束を再び(COMMITTING TO CHILD SURVIVAL:A PROMISE RENEWED )』を発表します。本報告書で、1990年以降子どもの生存率は大幅に上昇し、5歳未満で死亡する子どもが1,270万人(1990年)から630万人(2013年)へと減少したことを明らかにしました。

報告書では、生後28日内以内の命は生存において最も厳しい状況にあり、生後28日以内に死亡する新生児は年間約280万人に上ることが明らかになりました。こうした新生児のうち、実に100万人は誕生したその日に亡くなっています。

新生児の死亡の大部分は、出産前と分娩中、そして出産直後に行うシンプルで費用対効果の高い方法で防ぐことができます。

報告書の分析は、これらの不要な死亡の重要な原因として、分娩中の重要な時間帯における保健システムの不備を指摘。また、妊婦と赤ちゃんが利用可能な保健サービスの取り組みと質において、国によって、さらに貧富において、幅が広いことが明らかになりました。

調査結果

主な調査結果は、以下の通りです。

子どもを抱く母親。(シエラレオネ)
© UNICEF/NYHQ2010-0655/Asselin
子どもを抱く母親。(シエラレオネ)
  • 妊婦の約半数は、妊娠中に推奨されている最低4回の妊婦検診を受けていない
  • 世界全体での新生児死亡のうち、陣痛・分娩中の合併症によるものは、約4分の1を占める
    2012年、新生児の3人にひとり(つまり約4,400万人)は十分な医療ケアなしに誕生している
  • 生後1時間内での母乳育児の開始で、新生児死亡のリスクを44%削減できることが証明
    しかし世界全体で、新生児の半数以下しか、この母乳による恩恵を受けていない
  • 保健システムを利用している母子であっても、受けられるケアの質は極めて不十分
    ユニセフが子どもの死亡が多い10カ国で行った分析では、専門技能者が付き添う出産であっても、早期の母乳育児の開始を含む、産後に必要な7つの取り組みを受けている赤ちゃんは10%以下であった
    同じく、妊娠中に受ける8つのケアすべてを受けるためにヘルスワーカーを訪れた妊婦は、10%以下だった
  • 新生児死亡数が最も多い国は、産後ケアを受けている母親の割合が低い国でもあった
    エチオピア(新生児死亡数 年間8万4,000人、母親への産後ケア普及率7%)、バングラデシュ(同7万7,000人、同27%)、ナイジェリア(同26万2,000人、同38%)、ケニア(同4万人、同42%)
  • 20歳未満ならびに40歳以上の母親のもとに生まれた赤ちゃんの死亡率は、より高くなっている

さらに報告書では、母親の教育レベルと年齢によって、赤ちゃんの生存機会に影響があることも明らかになりました。教育を受けていない母親における新生児死亡率は、中等教育以上の教育を受けている母親における新生児死亡率の約2倍となりました。

子どもの生存における公平性を高めるために

妊婦の健診をする助産師。(中央アフリカ共和国)
© UNICEF/NYHQ2012-2173/Nesbitt
妊婦の健診をする助産師。(中央アフリカ共和国)

ユニセフ事務局次長のギータ・ラオ・グプタは「データから、母親が妊娠中また分娩中に、安定的に質の保たれた保健ケアを利用できる場合、乳児の生存機会が飛躍的に上昇していることがわかりました。すでにこうしたサービスがあるところではサービスが最大限活用され、母親とヘルスワーカーが接触する機会すべてを真に価値があるものとしていかなければなりません。また、最も厳しい状況にある人が支援を受けられるようにするために、特別な取り組みが必要です」と述べました。

特に保健ケアの利用における不平等は、後発開発途上国において依然として高くなっています。専門技能者が付き添う出産は、最も貧しい世帯の女性と比べ、最も豊かな世帯の女性は約3倍高くなっています。こうした状況に関わらず、報告書では5歳未満の子どもにおける公平性の格差は、確実に削減されつつあると述べています。サハラ以南のアフリカを除く全地域で、社会の最も貧しいセクターにおける5歳未満児死亡の割合は、最も豊かなセクターにおける5歳未満児死亡の割合よりも、早く削減されています。さらに重要なことに、世界中で、その国の豊かな人たちよりも貧しい人たちのほうが、子どもの生存において絶対的な成果を収めていることがわかりました。

グプタ事務局次長は「子どもの生存における公平性格差が狭まり続けていることは、実に勇気づけられるものです。この勢いを活かし、最も貧しく、最も疎外されている世帯にリソースを集中的に投下すべくプログラムを前進させねばなりません。こうした取り組みは、最も多くの子どもたちの命を守る可能性をひめた戦略です」と述べました。

* * *

■参考情報:
あの約束を再び(A PROMISE RENEWED )について

“あの約束を再び”は、すべての女性と子どもの前進を求める世界的な動きで、潘基文・国連事務総長が掲げる、予防可能な妊産婦、新生児、子どもの死亡の削減を加速させるための行動と政策提言によって、女性と子どもの保健を改善する世界的な取り組みを結集し、強化する戦略によるものです。

看護師に教えてもらいながら、赤ちゃんに母乳を与える母親。(ケニア)
© NICEF/NYHQ2011-1288/Nesbitt
看護師に教えてもらいながら、赤ちゃんに母乳を与える母親。(ケニア)

ユニセフは、2012年6月米国ワシントンD.Cで、米国、エチオピア、インド各国政府と、ハイレベル会合“The Child Survival Call to Action(子どもの命を守るための世界的行動を求める会議)”を共催。“あの約束を再び(A Promise Renewed)”キャンペーンをスタートさせ、各国政府に、2002年国連子ども特別総会で交わされた“約束”を、改めて“約束”していただく宣言文への署名を呼びかけました。この“約束”は、子どもの生存は政府、市民社会、民間部門、個人といったすべての人たちで共有される責任であり、その実現へ向けての貢献が不可欠であるとの精神に基づくものです。

2012年6月以降、178の政府と多くの市民社会団体、民間組織、個人が、それぞれの取り組みを倍加すると署名し、行動や政策提言して実践しています。詳しくはこちらの特設サイト(英語)をご覧ください。

※補足:日本政府は、2012年10月16日に署名しています。
玄葉外務大臣 宣言文「子どもの生存を守る:あの約束を再び」に署名(2012年10月18日発記事)

『2014年度版 子どもの生存を守る:あの約束を再び(COMMITTING TO CHILD SURVIVAL:A PROMISE RENEWED )』について
2014年の報告書は、新生児の生存について焦点を絞っています。本報告書は、1990年以降の5歳未満児と新生児の死亡のレベルと傾向のみならず、母子への主要な取り組みの分析も行っています。

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