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公益財団法人日本ユニセフ協会

ウクライナ:
クリミアからの避難続く
懸念される子どもたちへの心の負担

【2014年10月2日 ウクライナ発】

クリミアから避難してきた子どもたちへのグループでの心のケアの様子。
© UNICEF Ukraine
クリミアから避難してきた子どもたちへのグループでの心のケアの様子。

不安定な情勢が続いているウクライナ。ユニセフ・ウクライナ事務所代表のジオバンナ・バルベリスが、避難を強いられた子どもたちの様子やユニセフの支援活動を報告しています。

* * *

不慣れな地での生活

ウクライナ東部で続く武力戦闘やクリミアの編入で、何万もの人たちが自宅から避難しています。経済的制約や治安の悪化、社会構造の崩壊だけでなく、直接的に暴力に晒されたり大切な人を失うという経験から、多くの住民が精神的な影響を受けています。なかでも最も懸念されているのが、状況に対する理解が乏しく、目まぐるしい変化への対応能力が十分にない子どもたちへの影響です。

この数カ月で、5,000人近い子どもたちがクリミアからウクライナ本土へ避難しています。12歳のスマヤちゃんも、母親や父親、7人の兄弟姉妹と一緒に、新しい地で不慣れな生活を始めました。妊娠中の母親はもうすぐ出産を控え、障がいのある父親は家族を養うことができません。子どもたちは友達やクラスメートを失っています。スマヤちゃんは1歳半の弟、ザチャリアくんの世話を手伝わなくてはいけないようになりました。避難生活は、家族全員に影響を及ぼしているのです。

スマヤちゃん一家。
© UNICEF Ukraine
スマヤちゃん一家。

クリミアでは演劇や刺しゅうをしていたスマヤちゃん。学校ではリーダー的存在で、思いやりがあるスマヤちゃんは、母親にとって大きな支えとなっていました。ヴィーンヌィツャ地域に避難をした後も、責任感を持ち、家族の役に立てるように明るく振舞っていたスマヤちゃん。しかし、しばらくして様子は変わってしまいました。受け身で引っ込みがちになり、反抗的な態度を取るようになりました。そして、弟や妹に対してもそっけなく、攻撃的になったのです。

「スマヤちゃんの振る舞いは、おとなや他の子どもたちの気を引きたいという気持ちの表れです。両親からの愛情が自分に向けられていないと感じているのだと思います。周りの注目が得られると、スマヤちゃんは落ち着きを取り戻して優しくなります。それでも他の子どもたちの輪に入って遊ぶことはなく、様子を外から眺めていました」と、国内避難民となった子どもたちやその家族のために活動する人権NGO団体の心理学者ビクトリア・パシェチニクさんが語ります。

この団体はユニセフの支援のもと、クリミアからヴィーンヌィツャ地域に避難民がやって来たその日から、支援活動を続けています。個人やグループでのセラピーとして、教育ゲームや心のケアなどを実施し、避難民の子どもたちがストレスに対処し、新しい環境に適応できるように支援を行っています。

心への負担を減らすために

年上の子どもたちと一緒に行うグループでの心のケアを受けたスマヤちゃん。自分の夢や秘密を友達に語り、みんなが不安に思っていることについて話し合うことができるようにまでなりました。その結果、スマヤちゃんは避難前のように明るく、幸せそうな表情を見せるようになり、ポジティブな気持ちを持てるようになりました。

「スマヤちゃんは精神的に安定し、コミュニケーションをよくとるようになりました。そして、不安に感じていることや自分が抱えている問題を周りに打ち明けることができるようになっています」とビクトリアさんが語ります。

一対一で行う個人の心のケアの様子。
©  UNICEF Ukraine
一対一で行う個人の心のケアの様子。

スマヤちゃんの母親が受けた心のケアも、スマヤちゃんが昔の姿を取り戻す大きな力になっています。母親は、兄弟の多い子どもたちが嫉妬心や怒り、不公平さを感じないようにするため、子どもたちとの時間の過ごし方や、全員に目を行き届かせる方法などのアドバイスを受けました。

国内避難民となった子どもたちやその家族のストレスを軽減させ、新しいコミュニティに溶け込むことができるようにするため、ユニセフは現地政府やパートナー団体と協力して、過去数カ月にわたってクリミアや東部ウクライナから避難してきた子どもたちやその家族に心のケアを実施しています。これまでにクリミアから避難した370人以上の子どもたちや両親に個人やグループでの心のケアを実施しました。

また、心のケアの実施だけでなく、今後半年で9,000人に上ると予想される避難民の子どもたちやその家族を支援するため、ユニセフは400人以上の心理学者やソーシャルワーカー、学校に配属されているカウンセラーや教師にトレーニングを実施しています。

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