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タンザニア:
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© UNICEF/PFPG2014-1270/Bisin |
生後13週になるアレックスくんと母親のモニカさん。 |
生後13週になるアレックスくん。ムベア市の保健センターで生まれた、元気いっぱいでいたずら好きな赤ちゃんです。母親のモニカさんが、希望に満ちあふれた満面の笑みでアレックスくんを見つめています。
「初めて受けた検査で、HIVに感染していると告げられました。妊娠6カ月でした」と、27歳のモニカさんが語ります。「世界が崩れ落ちるかのように感じました。HIV/エイズについて耳にしたことはあったものの、詳しくは知りませんでした。以前、だれかがHIVは死に至る病だと話しているのを聞きました。近所の人たちがある女の人を指さし、夫を裏切ったからHIVに感染したのだと話しているのを目にしたこともあります。まさか、私が同じ状況になるとは、思ってもみませんでした」
このような話は、タンザニアの南部ムベア地域では決して珍しいことではありません。ムベア地域のHIV感染率は、国の平均の5.1%のおよそ倍である、約9%に上っています。モニカさんは、検査でHIV感染が判明した後、1週間もたたないうちに抗レトロウイルス薬治療を開始しました。その後、夫もHIVに感染していることが分かり、治療を受けています。
「赤ちゃんもHIVに感染するのではないかと不安で、食べ物がのどを通りませんでした。でも、HIVに感染することなく、元気な赤ちゃんを産むことができる可能性は十分にあると保健センターで聞きました。スタッフの親身なケアを受け、安心することができました」(モニカさん)
© UNICEF/PFPG2014-1271/Bisin |
タンザニアでは抗レトロウイルス薬治療を受ける母親や子どもは増加しているものの、HIVと共に生きる10人に7人の子どもが、必要な治療を受けられていない。 |
タンザニアでは2012年に推定1万5,000人の子どもたちがHIVに感染しています。2011年から2012年の間で、HIVと共に生きる患者のうち、抗レトロウイルス薬治療を受けたおとなは46%から68%へと増加、子どもは14%から26%へと増加しています。
「この素晴らしい成果にもかかわらず、依然としてタンザニアのHIVと共に生きる10人に7人の子どもが、必要な治療を受けられていません。この状況を改善させるべく、協力して取り組みを迅速に進める必要があります」と、ユニセフ・タンザニア事務所の子どもとHIV/エイズ・プログラム長のアリソン・ジェンキンスが語ります。
HIV母子感染予防支援は母親と赤ちゃんの、新たな希望となっています。国家規模で行われる母子感染予防プログラムは、ユニセフを含めた政府の開発パートナーの資金援助の下、保健社会福祉省によって実施されており、タンザニアのさまざまなパートナー団体も協力しています。このプログラムでは、両親が健康に生活し、赤ちゃんをHIVから守ることができるよう、医薬品やカウンセリング、心のケアを提供しています。
妊婦や新生児への抗レトロウイルス薬治療の実施、訓練を受けた保健医療提供者が付き添う、衛生的な出産環境、安全で適切な乳幼児の食事(生後6カ月間の完全母乳育児、その後は補助食を取り入れながらの母乳育児の継続)などの予防策をとることで、母子感染のリスクは5%以下にまで減少します。
手厚い支援を受けながらも、モニカさんは、出産前の3カ月間は不安でたまらなかったと言います。アレックスくんは、出産後すぐに抗レトロウイルス薬治療を開始し、母乳で育てられながら治療を受けていました。生後9カ月での1回目の検査ではHIVの感染は確認されず、2回目となる生後12カ月での検査でも、HIVへの感染は確認されませんでした。最後となる3回目の検査が1カ月以内に予定されていますが、HIVに感染している可能性は極めて低いとみられています。
「希望でいっぱいです。また、幸せだと感じることができるようになりました。息子がほかの子どもたちのように元気に育つことができるなんて、私にとっては奇跡のようです」
「子どもたちのHIV感染を防ぎ、エイズのない世代を実現させるため、必要とするすべての親たちにHIVの母子感染予防支援を提供する必要があります。HIVと共に生きる、より多くの妊婦が抗レトロウイルス薬治療を受けることができれば、より多くの子どもたちがHIVの感染から守られることになります。そして、HIVに感染した子どもたちが命を失わず健康に育つことができるよう、できる限り早く、HIVの検査や治療を行う必要があります。
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