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中央アフリカ共和国:
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© UNICEF CAR/2014/Kim |
情勢不安で廃墟となった学校。 |
ユニセフ教育チームのキム・イエラが中央アフリカ共和国で頻発する、学校への攻撃がもたらす影響について報告しています。
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中央アフリカ共和国では、2014年11月20日に実施された、政府による『学校の新学年度開始』の公式発表により、多くの学校が再開されています。しかし、学校を標的とした攻撃で、依然として何千人もの子どもたちが教育の機会を奪われています。
教育に携わる人々、特に暴力が蔓延している地域の先生たちにとって、学校の再開は決して容易なことでありませんでした。昨年10月、激しい戦闘で首都バンギが3週間近く制圧され、新学年度の開始は延期せざるを得ませんでした。11月下旬の学校再開に喜びの声が寄せられる一方、ユニセフなどが率いる教育クラスター*のメンバーからは、ますます増える学校に対する攻撃への懸念が高まっていました。それらの攻撃には、先生や生徒に対する身体的暴力や脅迫、武装グループによる学校の占拠や略奪などが含まれます。
2013年以降、計109校への攻撃が報告されています。たとえば、最近では武装した男性がバンギの学校を襲撃し、先生や生徒を閉じ込めて学校の備品を略奪するという事件が起こりました。食堂が略奪の被害にあった学校もあり、北東部では、学校再開の権限を持つ校長先生が武装グループによって襲われています。また、軍によって占拠されている学校も何校かあります。国際法の下では、学校に対するあらゆる攻撃は、子どもへの重大な暴力行為とみなされています。
学校への攻撃が一度起こると、長期的にわたる深刻な影響が広がります。生徒や親たちにとって、もはや学校は学んだり遊んだりする場所ではなく、避けるべき場所となっています。攻撃による恐怖はコミュニティ内で一瞬のうちに広がり、学校再開に向けて行われてきた長期的な支援活動の成果も失われてしまいます。
特に大きな影響を受けているのは子どもたちです。中央アフリカ共和国東部出身の11歳のヘンリーくんは、学校へ向かう途中、すぐ近くで武装勢力が空に向けて発砲し始めたといいます。
「もう、学校に行きたくありません」と、ヘンリーくんは話します。
別の女の子、グレースさんは、学校から帰宅する途中、武装した男性が子どもを殺害しているところを目にしました。ヘンリーくんと同じように、グレースさんも学校に戻るのが怖いと語ります。
© Education cluster |
中央アフリカ共和国での学校に対する攻撃の件数。 |
学校に対する攻撃を減らすための最初のステップは、情報の収集と報告です。教育クラスターは、子どもに対する重大な暴力行為を体系的に記録しており、国内で教育支援を行う団体に対して暴力行為の報告を要請しています。そして国連人道問題調整事務所(OCHA)や国連平和維持活動、そして、ユニセフが率いる、学校の保護を求める監視・報告メカニズムに関するタスクフォースと共に、情報の検証、分析、共有を行います。
武力衝突が勃発してから2年を迎え、極めて重要な時期にある中央アフリカ共和国。教育は容認性や社会の一体性を促進させることで、社会再建の力となることができます。学校が攻撃を受けやすい状況のままであるということは、子どもたち世代の将来を見捨てることと同じです。多くの子どもたちは既に2年間学校に通うことができておらず、なかには一度も学校に通ったことのない子どもたちもいます。中央アフリカ共和国では、危機以前から、学校や教師が不足している状態でした。
攻撃を受けて廃墟となった学校を訪問しました。割られた窓ガラスや盗まれた学校のベンチの残骸、屋根や壁に残った砲弾の跡など、まさに心が張り裂ける想いでした。ほこりを被った黒板に残されたフランス語のチョークの跡が、かつてこの場所で子どもたちがフランス語を学んでいたということを物語っています。子どもたちが命の危険を冒して学校に通い、武装した男性に見守られながら授業を受ける・・・残念ながら、これが、この国の多くの子どもたちの現実なのです。中央アフリカ共和国で暮らすすべての子どもたちが、安全に学校に通い、学ぶ楽しさを知り、よりよい未来に向けた準備を進めることができるようになる日まで、教育クラスターの活動は続けられます。
*教育クラスターとは、教育省や国連機関、国内・国際NGO、ドナーなど、中央アフリカ共和国で教育に関する活動を行う機関や団体が、役割が重複することなく、よりよい支援効果をもたらすことができるようにするための支援調整組織です。各分野のクラスターが、人道危機下に団結・協調して効果的な対応を行うことができるよう、支援活動の調整を行っています。
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