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公益財団法人日本ユニセフ協会

南スーダン:
武装勢力に連れ去られた少年
自由を取り戻す、長い道のり

【2015年1月27日 南スーダン(ベンティウ)発】

武装グループから逃げ出し、国連施設の避難所に身を寄せるデイビッドくん(16歳)。
© UNICEF South Sudan/2014/McKeever
武装グループから逃げ出し、国連施設の避難所に身を寄せるデイビッドくん(16歳)。

武装勢力への参加を強いられた、南スーダンで暮らす16歳のデイビッドくん。デイビッドくんは兵士としての生活から逃れることができたものの、自由だったころの生活は、はるか遠くのように感じています。

* * *

武装勢力に連れ去られた少年たち

「弾丸はとても重くて、持って走ることはできませんでした。銃の扱いは大変でした」

デイビッドくんは言葉に詰まると、兄の膝を指で3度、ゆっくりとたたきました。そして、気持ちを整え、打ち明ける勇気を得たかのように話を続けました。デイビッドくんの穏やかな話し声からは、彼が経験した恐怖を垣間見ることはできません。南スーダンでは、武力衝突が勃発した2013年12月以降、1万2,000人以上の若者が武装勢力に徴用されているとみられており、デイビッドくんもそのうちのひとりでした。

デイビッドくんの人生が一変した日は、普段と何も変わらない平和な朝で始まりました。いつものように両親に挨拶をしてユニティ州にある自宅から学校に向かいました。その日デイビッドくんが家に帰ることができないとは、だれも想像もしていませんでした。 しかし、学校が武装勢力に襲われ、デイビッドくんを含め、100人以上の生徒が連れ去られたのです。恐怖に怯えたデイビッドくんに、「闘って部族を守るのは君たちの義務だ」と武装勢力のメンバーが言いました。

デイビッドくんはすぐにクラスメイトと離れ離れにされ、その日初めて会う13歳〜18歳の少年たちのグループに入れられました。武器の使い方や戦闘の方法など、過酷な訓練が3カ月続きました。

「一番つらかったのが、朝3時に起きて昼の12時まで訓練をしなくてはいけなかったことです。食事は1週間に3回だけでした。銃の使い方が分からなければ、暴力を振るわれました。従うしかありませんでした」

闘うことを強いられ

大好きな家族や友達と離れ離れになったデイビッドくん。同じく武装勢力への参加を強いられた少年たちと、恐怖の中、お互いに支え合いながら生活を送っていたといいます。そして、共に武装勢力から逃げ出すための計画を密かに進めていました。

しかしその計画の進行よりも早く、状況は悪化してしまいました。少年たちは最前線での戦いを強いられたのです。それは、耐え難いものだったといいます。デイビッドくんたちは、次にチャンスが来たら、命に危険を冒してでも武装グループから逃げることを決意しました。

「悲惨な状況のなか、逃亡する決心がついたのです。銃と制服を置いて、逃げ出しました」

いつものように薪を集めに出かけると見せかけ、100人の少年が宿舎から茂みに逃げ込んだといいます。ほとんどの少年たちがスーダンの首都ハムツームを目指して北に逃れました。しかしデイビッドくんは4人の少年と一緒に、ユニティ州の州都ベンティウにある国連施設内の避難所の門へと向かいました。この施設には、何万人もの住民が、暴力から身を守るために避難しています。

平和がほしい

現在、デイビッドくんは施設内のテントで10代の少年2人と一緒に生活しています。デイビッドくんたちが身を寄せているテントは、同じく避難所で生活する心優しい家族が貸してくれたといいます。避難所に身を寄せてから3カ月が経ちますが、食糧や毛布、蚊帳、石けんなど、生活必需品を手に入れることにすら苦労しています。

「武装グループにいたときより、生活は良くなっています。もう、暴力を振るわれることはありません。でも、ここでの生活も大変です。自由はありませんから」

デイビッドくんは自分が武装グループから逃れたことで、現在も自宅で生活を送る両親に危険が及ぶのではないかと心配しています。デイビッドくんは、家の家畜が盗まれたという噂を耳にしたといいますが、学校から連れ去られたその日から、一度も両親に会うことができていません。

辛い経験を乗り越えてきたデイビッドくんが、笑顔になる瞬間がありました。楽しかったときのことを尋ねると、デイビッドくんは再び子どもに戻ったかのような表情を見せ、「戦闘が起こる前、サッカーをしたり、学校に行ったり、映画を観たりしていました」と話してくれました。

しかし現在、デイビッドくんや暴力の影響を受ける子どもたちは、厳しい現実に直面しています。

「ここには何もありません。厳しい生活が続いています。学校に通うこともできません。この国には平和が必要です」(デイビッドくん)

*名前は仮名です。

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ユニセフ・南スーダン事務所は「子どもは兵士じゃない」キャンペーンの一環として、政府や武装勢力に子どもたちの徴用や使用の予防と停止を訴えています。ユニセフは武装勢力に徴用された子どもたちの心身の回復や社会復帰のため、保護や教育など、必要不可欠な支援を行っています。デイビッドくんのように両親と離れ離れになっている子どもたちには、家族の追跡・再会支援も実施されます。

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