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イエメン紛争
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© UNICEF Yemen/2015 |
空爆によって損壊したイブン・シーナ学校 |
イエメンで続く戦闘は、多くの学校を閉鎖に追い込み、子どもたちは生き延びるために必死にもがいています。緊急支援と紛争の終結がなければ、この状況は悪化の一途をたどります。
7歳のナダちゃんは、明日は学校に行きません。明後日、あるいはその次の日も学校には行くことはないかもしれません。そしてナダちゃんの友達で、4歳のアブドゥルくんは、もう二度と学校に戻ることはできません。
「アブドゥルは4歳の時、鉄砲に撃たれて殺されたの」とナダちゃんが言いました。「私は彼のように死にたくはありません」
サヌアにあるイブン・シーナ学校の淡いグレーの校舎は、数日前に学校に隣接する建物が空爆されるまで、空高くそびえ立っていました。空爆による爆風で、校庭の外壁は粉々になり、教室は瓦礫と割れたガラスの破片で覆われました。この学校では1,500人の女の子が小学校と中学校の教育課程を学んでいましたが、現在は無期限に閉鎖されています。
イエメンの紛争により、多くの学校が閉鎖され、200万人近くの子どもたちが学校に通えなくなっています。ユニセフは、少なくとも30校が戦闘による被害を受け、既に悲惨だった状況の更なる悪化を確認しています。
この紛争が起こる以前、学校に通えない子どもの数は既に160万人に上っていました。 多くの子どもたちが腕や足を失うなどの重傷を負っています。この子どもたちは、爆発や榴散弾、あるいは跳飛弾について何も知らないばかりか、純粋で疑うことを知らない子どもたちです。
© UNICEF Yemen/2015 |
空爆によって損壊したイブン・シーナ学校 |
ユニセフは、不発弾に触れることの危険性を、子どもたちや保護者に伝える啓発キャンペーンを実施してきました。ナダちゃんと友だちは現在、歩くときは、注意深く危険なものがないかを確認し、怪しそうな物は避けて通るようにしています。
紛争の根が深まり、新たな地域に拡大していくにつれ、人々がこういった危機意識を持つ必要性がますます増大しています。
イエメンの若い男の子たちは、また別の脅威にさらされています。武力勢力が6歳の子どもを含む子どもたちを徴用し、彼らを犠牲者あるいは殺人者に変えてしまうのです。路上でサッカーをして遊んでいた無邪気な少年たちが、今や戦闘員になっているのです。戦闘を強要されている子どももいれば、社会的、経済的、政治的、あるいは宗教的な動機などによって銃を取っている子どももいます。複数の要因や動機が複雑に絡み合っている場合もありますが、結末はいずれの場合も同じです。“その子どもの命が危険に晒される”ということなのです。
アデン南部の都市。13歳のネスマーさんは、彼女が暮らすこの地域が、戦闘によって廃墟と化す姿を見て、苦痛の表情を浮かべています。
「とても悲しいです。私たちの街で最も美しい地域にある主要道路が破壊されています。わたしが学校の文房具を買っていたお店はロケット弾によって焼かれ、家々は破壊されています。建物には誰も住んでいません。廃墟がいたる所にあります。何とかこの戦争を止めてください」と、ネスマーさんは訴えます。
市街地での戦闘や、大砲の砲撃、狙撃、空爆は今では日常のものとなっています。ネスマーさんとナダちゃんのような子どもたちの人生は、今や世界滅亡を描く映画のようにさえ思えてきます。
© UNICEF Yemen/2015 |
埃とがれきに覆われる学校の手洗い場 |
映画のような恐怖に満ちた物語は、イエメンでは珍しくはありません。この国の人々は、食糧や新鮮な水といった生活必需品の価格高騰に苦しみながらも、なんとか生活を続けており、その多くは避難生活を送っています。幸運であれば、長い行列に並んでようやく数リットルの燃料を購入することができる、そういった状況なのです。
手遅れになる前に、イエメンの子どもたちに人道支援を届けなければなりません。現在、こうした子どもたちは、傷を負いながらも、毅然と立っています。彼らは、この戦闘が終了したあかつきには、瓦礫の山から這い上がり、再び学校に戻ろうと希望を描きながら、荒廃した地域で必死に待ち続けています。
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■イエメン基礎情報
出典:世界子供白書2015
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