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公益財団法人日本ユニセフ協会

ガザ 紛争から1年
瓦礫の中で生活する子どもたち
未だ癒えることのない、心の傷

【2015年7月8日 ガザ地区(パレスチナ)発】

ガザの紛争から1年が経過しました。破壊されたままの姿で今も残る建物で、12歳の少女が家族と共に生活を続けています。ガザの復興への道のりが、今やっと、始まろうとしています。しかし、壊滅的な影響を受けたガザで暮らす人々の生活の再建には、更に長い時間が必要となることでしょう。

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紛争から1年

家族で暮らす、空爆で破壊された家から町を見下ろす12歳のマラクさんといとこたち。
© UNICEF/NYHQ2015-1707/El Baba
家族で暮らす、空爆で破壊された家から町を見下ろす12歳のマラクさんといとこたち。

2014年に勃発した51日間に及ぶ紛争が、マラクさんの心から消えてなくなることはありません。

「紛争が起こる前、よく友達が家に遊びに来ました。でも今は、誰も来てくれません。親せきの人たちすら、家に来ることはありません。建物が崩れ落ちてくるのではないかと、心配なのです」と、12歳のマラクさんが語ります。

紛争で最も甚大な被害を受けた地域のひとつ、ベイト・ハヌーンにある、空爆の被害を受けた4階建ての建物に、10人の兄弟が家族と一緒に暮らしています。子どもは、マラクさんを含めて60人です。

マラクさんの自宅があったこの建物は、空爆で大きな被害を受けています。しかし、他に行く場所もないといいます。玄関があった場所に掲げられている看板から、かつては美しい建物だったことが垣間見えます。瓦礫と化したこの建物で、今も生活を続けているのです。

小規模な修復は行われたものの、完全に崩壊した1万2,600世帯以上の住宅の再建は未だ始まっておらず、約10万人が、依然として苦しい状況下に置かれ続けています。そして、その半数は子どもたちです。

これまでにガザに届けられた建築資材は、復興に必要とされている物資の2%にも及びません。

悪夢

「ドアも窓も壁も、すべてなくなってしまいました。私の部屋は崩れ落ちてしまったので、ふたりの妹と、ひとつのマットレスで寝ています。壁がないので、外から寝ている姿が丸見えです。プライバシーがなく、まるで道路で暮らしているようです」と、マラクさんが語ります。

マラクさんは12年という短い人生で、既に3度の紛争を経験しています。そして今も、毎日悪夢にうなされるといいます。

マラクさんのいとこたちも、注意力が散漫したり、希望を感じることができなかったり、また紛争が起こるのではないかという恐怖に襲われるなど、心の傷を抱えています。551人の子どもが命を失い、3,370人の子どもが負傷し、多くの子どもたちが一生消えない心の傷を負った紛争から1年が経ちますが、今なお、30万人以上の子どもたちが、このような精神的な症状に苦しんでいます。

昨年は紛争の最中に始まったラマダン月も、今年はいくぶんか平和なときが流れています。しかし、43%という世界で最も高い失業率で、ガザの人々の生活は窮地に陥っています。また、8年間封鎖が続いている沿岸部にある飛び地の73%が食糧不足に陥っています。

他の国の子どもたちのように

壊れた車で遊ぶオマーくん(9歳)。
© UNICEF/NYHQ2015-1714/El Baba
壊れた車で遊ぶオマーくん(9歳)。

マラクさんの9歳になるいとこ、オマーくんが、1階でトマトを焼いていました。ラマダンで断食が行われるなか、幼い子どもたちのためのお昼ご飯を作っているのです。

オマーくんほどの年齢の子どもたちは、封鎖された状況での生活しか知りません。電気や安全な飲み水、調理用ガスなど、基本的なサービスすら限られたなかで生活を送っています。

トマトを焼くオマーくんの周りでは、赤ちゃんがハイハイしたり、幼い子どもたちが瓦礫によじ登ったりして遊んでいます。家の前の道路では、爆破された車やブルドーザーで子どもたちが遊んでいました。

「どこで遊んだらいいか分からないから、いつもお家で遊んでいます。お父さんの車も、おじいちゃんの車も壊れてしまいました。だから、車でも遊べるんだよ!」と、オマーくんが無邪気に語ります。

しばらくすると、オマーくんはそれがいいことなのか分からなくなったようです。

「そこで遊ぶのがいいのか、分かりません。僕も、他の国で暮らす子どもたちみたいに遊べたらいいなって思います」と、オマーくんが話します。

明るい未来へ

「みんなが安全に暮らせるように、力になりたい」と話すマラクさん。
© UNICEF/NYHQ2015-1704/El Baba
「みんなが安全に暮らせるように、力になりたい」と話すマラクさん。

マラクさんは、かろうじて壁が残っている部屋で本を読んで過ごすのが好きだといいます。その部屋には、2009年の紛争で10代という若さで命を失った、亡きおじさんの写真が飾られています。額縁に入れられたおじさんの写真のすぐ下には、砲弾でできた穴が開いています。今もその弾丸は残されたままです。マラクさんの家族は、イスラエル軍によって放たれたものだと語ります。

熱心に読書をするマラクさん。学校での成績は、以前のようにはいかないといいます。しかし、マラクさんはより明るい未来のため、一生懸命勉強しています。

「お父さんのようなエンジニアになりたいです。この家や近所の人たちの家、友達の家、みんなの家を建て直すことができますから。みんなが安全に暮らせるよう、私も力になりたのです」(マラクさん)

ユニセフはマラクさんやオマーくんのような紛争の影響を受けた子どもたちの生活再建のため、ガザの人道支援を主導しています。そして、心のケアや給水サービスの修復、新しい水のインフラの整備、被害を受けた学校の修繕、そして取り残された多くの子どもたちのため、補習授業も行っています。

ガザの復興は、先月新しい段階へと移りました。これにより、完全に崩壊した1万2,600軒の民家の再建や新しい家の建設が可能となる見込みです。

紛争から1年が経過するなか、ガザの子どもたちが置かれている状況を決して忘れず、子どもたちに支援を続けなくてはいけません。より明るい、より平和な未来を・・・そう願う、子どもたちの切なる想いをかなえるため、ユニセフはこれからも、子どもたちの生活の再建を支えていきます。

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