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ミャンマー
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© UNICEF Myanmar/2015/Myo Thame |
2つの避難民キャンプの間にある村で暮らすズバールくん。 |
ミャンマーのラカイン州の州都シットウェには、2つの国内避難民キャンプがあります。13歳のズベールくんはこの2つのキャンプの間に位置する、イスラム教徒が多く暮らすオータウチャイという村で暮らしています。ズベールくんは村から片道徒歩で1時間半をかけ、英語のクラスに通っていました。
2012年、ラカイン州を揺るがした宗教対立が勃発し、近隣の村が対立関係に陥ってしまいました。それからというもの、対立するラカイン族とイスラム教徒は別々の避難民キャンプで暮らすようになったのです。かろうじて避難民キャンプの行き来はできるものの、ズベールくんや家族は村から出て外出することが難しくなってしまったといいます。
ズベールくんは5年生まで村の学校に通っていましたが、それ以上学校で勉強を続けることができませんでした。そんなズベールくんにとって、英語の授業は、長い間夢にまで見たものだったのです。しかし2カ月前、2度目の英語のクラスを終えて家に帰る途中のことです。ズベールくんは3人の友達と一緒に拉致されてしまったのです。
「車で海に行こうと男の人に言われました。そして、薬を嗅がされました。目が覚めると、知らない場所で手を縛られていました」と、ズベールくんが語ります。これは、よく子どもの人身売買の際に使用される手口です。
その後すぐ、4人の男の子たちの解放と引き換えに約800米ドルの身代金を求める電話が、ズベールくんの両親のもとにかかってきました。貧しい生活を送る家族にとって、賄うことが非常に困難な金額です。
しかしコミュニティの人たちが男の子たちを解放するためにお金を出し合い、幸い男の子たちは長い間拘束されることなく解放されました。「とても怖かったです。村に着くと、両親が走って駆け寄り、抱きしめてくれました。コミュニティの人たちもです。とても嬉しかったです」と、ズベールくんが話します。
そしてズベールくんに再び学ぶ機会が訪れました。今年6月、新学年度の始まりと共に、ズベールくんは再び1時半の道のりを歩き始めたのです。今回は英語のクラスだけではありません。小学校にもう一度通い、勉強できるようになったのです。
「毎日往復3時間歩くのは大変です。でも、将来のためにとても役に立つと思います」と、ズベールくんが話します。
ズベールくんは週に2回、村にある若者のための支援センターにも通っています。「若者たちが差別なく、平和にみんなが暮らせる方法について話し合っています。若者たちが将来立派なおとなになり、平和な社会を築いていくことができるようにするために、とても重要だと思います」と、このセンターで働くスタッフが語ります。
© UNICEF Myanmar/2015/Myo Thame |
ラ カイン族が身を寄せる避難民キャンプで暮らすウィンタントゥンくん |
15歳のウィンタントゥンくんは2012年に勃発した暴力で自宅を離れ、シットウェ郊外にあるラカイン族の人々のためのセットヨーチャー避難民キャンプで生活しています。ウィンタントゥンくんは両親に育児放棄された後、68歳になるおばあさんと一緒に暮らしています。
「お母さんは3回結婚しています。お母さんの新しい再婚相手は、ぼくと一緒に暮らしたくないのです」と、ウィンタントゥンくんが悲しそうに話します。「8歳のときから、おばあちゃんと耳が聞こえないおばさんと一緒に暮らしています」
ウィンタントゥンくんのおばあさんはカニを捕まえてお金を稼いでいますが、1日1ドルを稼ぐことができる日は滅多にありません。おばさんは建設現場でブロックを運ぶ仕事をしていますが、運がよければ1日1.5ドルを稼ぐことができる程度の収入しか得ることができません。
避難民キャンプで生活を始め、ウィンタントゥンくんは非公式の小学校に入学しました。ウィンタントゥンくんは、「また希望が持てた」と語ります。学校に通いながら、建築現場でブロックを運ぶ仕事や、宝くじの当選番号の情報を売る仕事もしています。「宝くじの抽選結果は公開されていますが、ほとんどの人がそれを知る手段を持っていません。だから、多くの人がお金を払って買ってくれるのです。僕のお気にいりの仕事です。ブロックを運ぶよりも簡単で、多くのお金を稼ぐことができますから」
ウィンタントゥンくんは幸いにも、セットヨーチャー避難民キャンプに「子どもにやさしい空間」を設置したユニセフのパートナー団体のスタッフと出会い、支援のもと、心のケアや職業訓練、学ぶ機会を手にすることができたのです。
ウィンタントゥンくんは、職業訓練のプリントTシャツのコースを修了したばかりです。「2年前、ウィンタントゥンくんは読み書きすらできませんでした。しかし、職業訓練校で首席になるまでにも成長したのですよ。何をするにしても、集中して取り組んでいます。一度も授業を休んだことはありません。どんなことがあっても、必ず学校に通っています」と、スタッフが語ります。
「学校を卒業したら、どんな仕事だってできます。事務職にだって就けるしね。おばあちゃんの力になってあげるんだ」家族のことを話すとき、いつもウィンタントゥンくんの顔からは笑顔がこぼれます。「僕にはおばあちゃんとおばさんという、特別な母親がふたりもいるんです。ふたりが、僕のすべてです」
ユニセフはすべての子どもたちが自分たちの可能性を最大限に発揮できるようにするため、子どもの貧困の撲滅や開発、子どもの権利の促進、避難生活を強いられる人々への人道支援などの活動を続けています。
ユニセフは政府と協力し、「子どもにやさしい警察」の取り組みやソーシャルワーカーへの支援を通して、保護が必要な子どもの特定や支援を迅速に行えるようにするためのシステムも構築しています。
© UNICEF Myanmar/2015/Myo Thame |
ズバールくんの村にある若者のための支援センターの前でボールを蹴って遊ぶ男の子たち。 |
また、子どもたちがより守られた環境で暮らせるようにするため、州警察への研修や、疑いのあるケースや支援対応の報告体制の強化を図るため、ラカイン州の人身売買タスクフォースと共に活動しています。
「民族や宗教、法的地位に関係なく、すべての子どもが平等な権利を持っています。子どもたちを暴力や搾取、人身売買の被害から守るため、子どもたちが安全で守られた環境で暮らせるようにしなくてはいけません。人身売買の危険や移民問題に対し、若い世代が自ら話し合いそれらの認識を高められるよう、ユニセフは支援を行っています。そうすることで、若者たちが自分の身を危険から守るための知識や技術を得ることができるようになるのです」と、ユニセフ・ミャンマー事務所子どもの保護チーフのアーロン・グリーンバーグが語ります。
また、ズベールくんやウィンタントゥンくんのような若者に、心のケアやレクリエーション活動、職業訓練を提供するため、イスラム教徒とラカイン民族が暮らす避難民キャンプ両方に「子どもにやさしい空間」を設置しています。
ズベールくんとウィンタントゥンくんは、イスラム教徒が多く暮らす村とラカイン族が生活する避難民キャンプ、それぞれ離れた場所で生活をしています。しかしふたりとも、暴力や虐待、搾取から守られた安全な場所を手にすることができました。そしてふたりは、「より明るい未来を」という、同じ想いを持っているのです。
「将来はみんなに尊敬される先生になって、『ズバール先生』と呼ばれるようになりたいです。ソーシャルワーカーも憧れます」と、ズバールくんは語ります。
一方ウィンタントゥンくんは、「将来は家族がほしいです。お父さんとお母さん、女の子と男の子、おじいちゃんとおばあちゃん。あたたかい家族を築きたいです」と、話しました。
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