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タンザニア
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© UNICEF Tanzania/2015/Beechey |
ニャルグス難民キャンプの仮設の学習スペースで、机が足りず、膝にノートを乗せて勉強する子どもたち。 |
大好きな学校や友達の話になると、リーバイスくんが満面の笑みを浮かべます。数週間前、15歳のリーバイスくんは安全を求めて家族と共にブルンジからタンザニア北部に避難しました。
「朝早く、お母さんに起こされました。急いで着替え、密かに家を出ました。国境に着くまで、10キロほど歩きました」とリーバイスくんが語ります。
リーバイスくんはタンザニアまで茂みの中を歩いて逃げたときのこと、そして8人の兄弟姉妹の恐怖に怯えた眼を今も覚えているといいます。リーバイスくん一家はブルンジとの国境を接するタンザニアのカグンガで約3週間過ごし、6月中旬にニャルグス難民キャンプに辿り着きました。
約20年間コンゴからの難民6万人以上を受け入れているタンザニアのニャルグス難民キャンプ。数週間前から8万人以上がブルンジの暴力から逃れるために難民となっており、その数は増加を続けています。そして、その大半が18歳未満の子どもたちです。
リーバイスくんは、2005年に終わりを迎えた何年にもわたる紛争の際、何万人ものブルンジ難民が身を置いていたタンザニアのムタビラ難民キャンプで生まれました。難民としての生活を送るのは、これが2度目です。
© UNICEF Tanzania/2015/Beechey |
黒板に文字を書くリーバイスくん(15歳)。 |
リーバイスくんが家族と共にブルンジから避難したのは、6月に予定されていた6年生のための国の進学試験の直前のことでした。リーバイスくんは学校に通えなくなり、家族のために働かざるを得ない状況になったことを悲しんでいます。
「学校で勉強するのが好きです。両親はいつも、教育がすべてだと言っていましたから。子どもたち全員に教育を受ける権利があるはずです。みんな学校が好きなので、教室がもっと必要です。学校を卒業したら、両親の面倒を見ることも、もっといい生活をさせてあげることもできますから」
人道危機の際、教育の権利は常に軽視されてしまいます。それによって教育再開は遅れ、退学率が上がり、卒業率が低下します。ニャルグス難民キャンプの子どもたちのなかには、公式の学校に何カ月も通えていない子どもや、試験を受ける機会を失ってしまった子どもたちもいます。
ブルンジ難民の子どもたちが今まで学校で学んできたことを忘れず、これからも学習を続けられるようにするため、ユニセフは教育部門のパートナー団体と協力して、難民キャンプに仮設の学習スペースを開設しました。
「6年生は試験があるので、よく勉強するように言われました。テストに合格して7年生になれると思うので、楽しみです。勉強は大変ですが、これからも続けていきたいと思います」
© UNICEF Tanzania/2015/Beechey |
仮設の学習スペースで先生からの質問に手を挙げて答える子どもたち。二部制で授業が行われているが、教室は混み合い、すべての子どもたちが参加できるようにするためには少なくとも120の教室が必要とされている。 |
現在、就学前教育から高等教育までの3万3,000人以上の子どもたちが、緊急下の教育に登録しています。これまでに1万8,000人の学齢期の子どもたちが教育を受けることができており、ユニセフとパートナー団体によって運営される10カ所の仮設の学習スペースには、1,351人の6年生が通っています。
この仮設の学習スペースは、3歳以上の子どもたちがレクリエーション活動や補習授業に参加することができる、安全な場所を提供しています。仮設の学習スペースは午前と午後の二部制で行われていますが、教室は生徒たちで込み合っており、ニャルグス難民キャンプに辿り着く子どもたちの増加に伴い、仮設の学習スペースに大きな負担がのしかかっています。すべての子どもが参加できるようにするためには、二部制で120の教室が必要です。
「1回の授業に200人ほどの生徒が参加します。教室の椅子が足りず、立ったまま授業を受ける生徒もいます」
安全な環境で授業を効果的に行い、子どもたちの学習を促すため、ブルンジ難民のボランティア教員が150人採用されました。88人が教授法や平和教育、保健や衛生、性的搾取、虐待などに関する研修を受け、残りの92人への研修も始まっています。
ユニセフは状況を緩和させるため、追加のテントや支援物資の提供や、教員の研修を実施しています。暴力で着の身着のまま自宅から避難せざるを得なかった子どもたちが勉強を続けていくために、これらの支援物資は非常に重要です。
「ブルンジにいた頃は、ノートやペンなど、学校に通うためのものに不自由しませんでした。でも今は、制服もくつもありません。制服を洗うための石けんもないのです」(リーバイスくん)
故郷から避難した子どもたちは、友達とも離れ離れになってしまいました。「生徒全員がブルンジから避難してきたわけではありません。タンザニアに逃れて来たのは、一握りの人たちだけです」と、リーバイスくんが話します。
しかし仮設の学習スペースのおかげで、リーバイスくんは同じ村から避難した友達と再会することができました。「とても仲のいい友達がいます。放課後も一緒に遊びます。一緒にいろんなことを話したり、家に歩いて帰ったりします。メンベくんもエリアくんもフディちゃんも、みんな僕の友達です」
学校が増設されるまで、仮設の学習スペースが、子どもたちが教育を受け、日常の感覚を取り戻すことができる場所となるのです。
「学校から家に戻ると食べ物があるので、とても嬉しいです。平和は何よりも大切です。兄弟と一緒に遊び、家事や勉強を手伝っています。僕にとって、何より平和を感じるときです」
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