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日本ユニセフ協会
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みんなで子どもを守る地域づくりを
岩手県山田町でCAPセミナー開催

【2015年11月3日  岩手県山田町発】

11月は、「児童虐待防止推進月間」。国や地方自治体、そして様々な市民団体や民間団体が、この30日間を中心に、様々な形で児童虐待を防止するための啓発活動を行っています。2014年度、全国の児童相談所が対応した児童虐待の件数(10月8日現在の速報値)は8万8931件と、過去最多を記録してしまいました。

 “子ども保護”の観点で、虐待防止の取り組み

日本ユニセフ協会は、ユニセフ本部の全面的な協力を受け、発災直後から東日本大震災の被災地で、飲料水や肌着、栄養補助食品などの支援物資の提供をはじめ、保健、栄養、教育の分野で緊急支援活動に取り組みました。また、そうした活動に並行して、ユニセフが全世界で展開する支援の大きな柱の一つである“子どもの保護”の観点から、震災直後の被災地を覆った高いストレス環境の中で懸念された子どもへの虐待などの暴力を防止すべく、国内の専門家団体と協力しながら、様々な啓発活動や子ども支援に携わる専門家に対する研修等、各自治体の取り組みも応援してまいりました。

中でも、震災発生以前から全国各地の小中学校でも取り入れられていたCAP(キャップ)と呼ばれる、子ども自身が様々な形態の暴力から自らの心と身体を守る術と知識を学ぶ機会を提供する教育プログラムは、岩手、宮城、福島の各県で大きく展開した支援の一つでした。児童虐待や性的暴力、いじめ、体罰など、被災地に限らずあらゆる場所で日常的に起きてしまっている大きな問題への対処を目指すプログラムゆえ、発災前からCAPが取り組まれていた宮城・福島両県では、震災発生から4年を経て、震災前に較べ多くの地域や学校でCAPの取り組みが行われるようになりました。例えば、福島県のCAPワークショップ開催数は、震災前の約4倍にもなっています。

児童虐待防止講演会

被災地でのCAPプログラムの推進に取り組んできた日本ユニセフ協会と一般社団法人J-CAPTA(北海道札幌市)は、震災で特に大きな被害を受けた岩手県沿岸部でも他の地域のような“勢い”が生まれればとの思いから、かねてより児童虐待問題に積極的に取り組んでいらっしゃる山田町や岩手県ユニセフ協会とともに、11月3日の「文化の日」、山田町中央公民館大ホールで、「子どもの人権を考える」と題した講演会とシンポジウムを開催しました。

会場には、青森や宮城などの遠方からも含め、300人を超える方々が集まった。

© 日本ユニセフ協会

会場には、青森や宮城などの遠方からも含め、300人を超える方々が集まった。

11月3日(祝)岩手県山田町で開催された「児童虐待防止講演会」

© 日本ユニセフ協会

専門家3人は、それぞれの立場から、みんなで子どもを守り育てる地域づくりの必要性を訴えた。

だれもが大切な“ひとり”

世界の子どもたちや日本の子どもたちの現状と課題を訴えるアグネスさん。

© 日本ユニセフ協会

時折、3人の息子さんを育てられた自らの体験やユーモアも交えながら、世界の子どもたちや日本の子どもたちの現状と課題を訴えるアグネスさん。

第一部の「基調講演」には、アグネス・チャン日本ユニセフ協会大使が登壇。30分という限られた時間の中で、1998年の大使就任以来世界各地で出会ってきた子どもたちが置かれている多様で過酷な状況を報告しながら、今、日本でも深刻化している児童虐待問題に言及。「多くの人は、『虐待』は自分とは関係ないと思いがち」「虐待してしまうお母さんやお父さん方も、助けが必要」「お父さんやお母さんが育てられなければ、周囲のおとなが育てられるように」と、地域のおとなが虐待問題を身近な問題として捉え、地域が子育てに参加することの重要さを訴えました。

引き続き、J-CAPTAチーフディレクターの木村里美さん進行によるシンポジウム「今を生きる子どもたち」を開催。岩手県内の福祉、教育、保育の各分野で活動されている3名のシンポジストの方々が、それぞれの立場から、虐待防止の施策の在り方や子どもたちの周囲のおとなに期待される役割などについて議論を交わしました。

「CAP子どもワークショップ」の一部を実演で紹介。

© 日本ユニセフ協会

基調講演とシンポジウムの合間には、実際に小学校3年生を対象に実施される「CAP子どもワークショップ」の一部を実演で紹介。J-CAPTAアクションディレクターの石附幸子さんがファシリテーター、山田町に在住されるCAPリアスの会員2名がロールプレーヤーをつとめた

おとなが子どもたちの話しを十分に聞いてあげていないのではないかと指摘されたのは、岩手県保健福祉部子ども•子育て支援課の米澤克徳さん。「特に震災体験については、子どもたちの話を受け止めるおとなの存在が欠かせない」と、被災地で子どもの話を受け止める場も提供するCAPの有効性を示されました。

「CAP子どもワークショップ」の舞台となる教育現場(中学校)で実際に教壇に立たれている岩手県教職員組合の高橋克典さんも、教育現場が子どもたちの声を受け止めることの大切さを強調。一方で、“全国平均で6人にひとり“と言われる「子どもの貧困」が、岩手県内も例外ではないことを指摘し、虐待のみならず、子どもの「生きる権利」そのものを脅かしている状況に対する取り組みの重要性を訴えられました。

「山田町でも3世代同居が減り、忙しさから子どもを見守る余裕のない親が増えています。」町役場の子育て支援室長などの職を歴任し、現在町立織笠保育園の園長をされている川端京子さんは、20年以上にわたり町の子育て支援行政の現場の第一線でご覧になってきた山田町の子育て環境の変化を報告。やはり、地域で子育てを支えてゆくことの大切さを強調されました。

子どもたち自身が変わるために

シンポジウムの最後、J-CAPTAの木村さんからコメントを求められたアグネスさんは、次のような言葉で、約2時間半のイベントを締めくくりました。

「(先進国の子どもたちの状況を比較する調査で)日本の子どもたちは、の『自己肯定感=自分を好きかどうか』は、常に他の国々に比べて低い傾向にあります」「CAPのような人権教育を受けていれば、子どもたちも変われるのではないでしょうか?」

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