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日本ユニセフ協会
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震災支援から、地域の“子育て力”強化へ
山形で、子育て支援研修会

【2015年11月11日  山形市発】

2011年3月11日に発生した東日本大震災と原発事故。日本ユニセフ協会は、ユニセフが全世界で展開する支援の大きな柱の一つである“子どもの保護”の観点から、国内の専門家団体や各自治体と協力しながら、避難所などでの育児支援、子どもや子ども支援に関わる方々の心のケア支援なども展開してまいりました。

避難先での子育てを支援

研修会でのグループワークの様子。

© 日本ユニセフ協会

グループワークも交えて進められた研修会では、参加者が普段やっていること、普段難しいと思っていることを共有し、それぞれの「意味」を議論した。

山形県内では、福島県の要請を受け、特定非営利活動法人やまがた育児サークルランドと連携し、2012年4月より、福島県から避難された親子が集う『ままカフェ』活動を支援。地域とのつながりを持ちにくいまま子育てや将来に不安を抱える母子を支える場とプログラムを提供してきました。中でも、3年半あまりにわたる活動の中で提供してきた「遊びを通じた親子の支援」は、参加された親子はもちろん、『ままカフェ』のスタッフにも、子育て支援の新たな視点・手法として好評を得た活動の一つでした。

震災から4年半が過ぎ、福島から避難された方々の中には、山形での生活を定着させつつある方々も少なくありません。こうした状況を踏まえ、やまがた育児サークルランドと日本ユニセフ協会は、これまでの“震災支援”で得た知見を広く地域の子育て力の底上げに役立てていただくため、11月10日(火)に米沢市で、翌11日(水)に山形市で、子育て支援研修会を開催しました。

キーワードは「遊び」

臨床心理士としての活動も続ける講師の湯野さん。

© 日本ユニセフ協会

普段から臨床心理士としての活動も続ける講師の湯野さん。震災発生直後から、被災地での支援活動に関わってきた。

「子どもの育ちと遊び~遊びを通して親子を支える」と題した研修会には、毎回、地域の子育て支援センターや児童館に勤務する20名の方々が参加。講師を務めた臨床心理士の湯野貴子さんは、日本プレイセラピー協会理事として、また日本ユニセフ協会心理社会的ケアアドバイザーとして4年半以上にわたり関わってきた被災地支援を通じて得た知見の共有から、研修を始めました。

「震災支援としてさまざまな親子とかかわる中で、大きな困難を経験した子ども、親子に何が必要だろうかと考えましたが、やはり、親子に必要なものは、そういった状況の中でも特別なことではなく、普段の日常生活で必要なことと同じということに気が付きました」

「子どもの育ちと脳の発達は切り離せません。子どもの脳の発達の基盤づくりには良好な親子関係がとても大切です。そしてそのために『遊び』はとても有効なのです。」

「遊びには、『構造遊び』と『自由遊び』という、大きく2つの種類があります。『構造遊び』は、親(おとな)がリードして行う遊びのことで、それを通して子どもが安心を感じたり、挑戦することで自信をつけたりできるようにリードしてあげると良いのです。『自由遊び』は、子どもが自由に遊ぶこと。子どもはただ暇つぶしやなんとなく遊んでいるのではなく、遊びによって心に起きていることを表現しています。それに上手に寄り添うことで子どもは体験を整理して理解し、克服してゆきます。そういった遊びを通して、子どもと親(おとな)はいい関係を築き上げていくのです。」

被災地支援でも行われた「遊び」を通じたケア=「プレイセラピー」で実際に使われるおもちゃを手に取り、「遊び」をイメージする参加者。

© 日本ユニセフ協会

被災地支援でも行われた「遊び」を通じたケア=「プレイセラピー」で実際に使われるおもちゃを手に取り、「遊び」をイメージする参加者。

グループワークも交えて進められた研修の中で、湯野さんは、子どもと接することのプロである参加者の皆さんの中には、一方で親(おとな)との関係づくりに難しさを感じていらっしゃる方々も少なくない事に気が付きました。

「遊びながら親御さんが上手に子どもと接していたら、それを具体的に褒めてあげることが大切です。親に子どもに関わってほしいように、支援者は親に関わることが大事です。子どものことをもっと褒めてほしいと感じたら、まず支援者が親のことを褒めてあげる。子どものことだけを考えてしまうと、親御さんへ『こうしてあげてください』と言いたくなりますが、親御さん自身にも理解されている、支えられていると感じていただくことが大切です」

湯野さんは、被災地支援で関わった多くの親子とも、一般的な会話や「遊び」の中で子育ての悩みやその背景を見つけ、少しずつ相談や支援に繋げてきたと説明します。

子どもの「遊び」をキーワードに子どもや親(おとな)への支援のポイントについて話を進めた湯野さんは、一方で、震災発生以来常に感じまた現在も関わっている“子育て支援”に関わるもう一つの重要な問題も強調しました。

「子どもの育ちを支えるためにまず必要なことは、養育者やそれを支えるおとな自身が元気であること、これが何よりも大事な“仕事”なんです。『セルフケア』を忘れないでください」

地域の子育て力の強化へ

「『おとながおしゃべりすること=子どもが遊ぶこと』という説明は印象的でした」

「実践的な事がたくさんあったので、すぐに役立てられそうです」

参加者のアンケートには、こうした言葉を多く頂戴しました。

この研修会を企画・実施された、やまがた育児サークルランド代表野口比呂美さんは、次のように語ります。

「日本ユニセフ協会さんと一緒に、福島県から避難されてきた親子への支援事業を実施する中で、「県外避難」といったケースだけでなく、日常の子育て支援にも必要なことをたくさん学びました。今回の研修では、前回の研修からだいぶメンバーも変わっていて、初めて子育て支援センターに配属されている方も目立ちました。とても実践的な今回の研修は、参加者の今後の活動にとても役立つと思います」

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