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日本ユニセフ協会
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「まち」を考え、形にする。
「未来の七郷」ワークショップ

【2016年2月2日  仙台発】

16区画に分けられながら、ひとつの「まち」に仕上げられた「未来の七郷」

© 日本ユニセフ協会

16区画に分けられながら、ひとつの「まち」に仕上げられた「未来の七郷」

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日本ユニセフ協会が、「子どもにやさしい復興計画」支援の一環として、山形大学と竹中工務店と共に2012年からサポートを続けている「未来の七郷まちづくり」ワークショップの発表会が、今年も、宮城県仙台市立七郷小学校で開催されました。

毎年、6年生が、総合学習の時間を使ってまちの昔と今を振り返り、10~15年後の「まち」を模型で表現します。発表会には、後輩の5年生や保護者に加え、地域や仙台市の関係者も参加。子どもたちひとりひとりが、模型作りで工夫したところや「まち」に対する思いを、自らの言葉で発表しました。

「まち」を考える

七郷小学校がある宮城県仙台市若林区は、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた地域の一つです。学校と海岸の間を通る仙台東部道路が津波をせき止めたため、学校の周辺は大きな被害を免れました。しかし、学校の南側と東側では、震災以前から、昨年12月の地下鉄東西線の開通と新駅設置にともなう大規模な土地区画整理事業が進み、復興市営住宅の建設も進むなど、「まち」の姿が大きく変わろうとしています。

子どもたちは、模型に込めた「まち」への思いを発表。

© 日本ユニセフ協会

子どもたちは、模型に込めた「まち」への思いを発表。

模型づくりにあたり、子どもたちはまず、教室を飛び出し、「まち」がどのように変わろうとしているのかを学びました。“イグネ”と呼ばれる、東北地方に典型的な田んぼに囲まれた農家の背後にある樹林の残る地区や、ケーキ屋や駄菓子屋、パン屋などのお店を回り、カメラで撮影し、今ある「まち」の魅力を再発見。さらに、区画整理が進められている工事現場や新駅予定地なども訪問し、土地区画整理組合の方からも話を聞きとりました。

教室に戻った子どもたちは、日本ユニセフ協会の「子どもにやさしい復興計画」支援活動アドバイザーで、住環境・まちづくり学習等の分野で活躍する山形大学の佐藤教授から、「まちづくり」に関する基本的な考え方を学ぶ授業に参加。「人(ユニバーサル・デザイン)」「環境(サスティナブル・デザイン)」「防災(セーフティ・デザイン)」という3つの視点の重要性を教わりました。

「まち」を形にする

そしていよいよ模型づくり。今年は、学校周辺の地域を16区画に分け、1組と3組が北部の6区画を、2組と4組が南部の6区画を、5組が東部の4区画を担当し、1組、2組、5組で一つのまちを、3組、4組、5組で同じ一つのまちをつくりました。クラスの代表(市長)とグループの代表(区長)、そして3つの視点の責任者(委員長)が全体のバランスを考えます。

1組と2組と5組のテーマは「スマイルグリーンシティ」。緑あふれるみんなが笑顔になれるまちを考えました。3組と4組と5組のテーマは「つながる七郷ハッピータウン」。人と人とのつながりを大切にする楽しいまちを考えました。

「スマイルグリーンシティ」のシンボルは観覧車。“万が一”の際は、避難塔の役割も。

© 日本ユニセフ協会

「スマイルグリーンシティ」のシンボルは観覧車。“万が一”の際は、避難塔の役割も。

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「スマイルグリーンシティ」のグループは、小学校の近くに、「まち」のシンボルとなる観覧車を設置しました。空き缶を集めてリサイクルに出すと貰えるコインで乗ることができ、緊急時には避難棟としての役割も持ちます。備蓄倉庫と地下でつながる防災施設も設置しました。樹木を利用した遊び場やツリーハウスも登場しました。

「つながる七郷ハッピータウン」には、事故を減らすため、“安らぐ色”とされる青色の光が灯る街灯が並び、普段はいろいろな質問に答えてくれ、災害時には様々な情報が表示される電光掲示板が設置されています。「最近遊ぶ場所が減ってきたから・・・」と、晴雨に関わらず外遊びが出来る透明な屋根の付いた広い公園も作りました。また、「たくさんの人に来てもらいたい」との思いから、植物園や水族館、そして七郷小学校の東側には「七郷大学」が設置されました。

未来に繋がる夢

「3年前のみなさんの先輩は、安全を重視したまちづくりを考えてくれましたが、今年のみなさんの発表は、安全を考えながらもとても楽しいまちになっていると感じました。緑もとても多くていいですね」 子どもたちの発表後、講評に立たれた土地区画整理組合の方からは、こんな言葉が贈られました。

山形大学の佐藤先生も、「一つひとつのアイディアが細かいところまで考えられていることに加え、ちゃんとつながって一つのまちができているところや、一年を通した使い方が考えられているところなど、本当のまちづくりに役立てることができるのではないかと思います。簡単に実現できることばかりではないですが、みんなで知恵を出し合うことでいいアイディアが出てくるかもしれません」と話します。

七郷小学校は、2013年度に文部科学省の「防災・安全教育を行う研究開発校」として指定され、「未来の七郷まちづくり」ワークショップも、新設された「防災安全科」の一つのカリキュラムとして位置づけられました。

今年ワークショップに参加した子どもたちは、震災の時、1年生でした。「(だからかも知れませんが)地震が来ると、少しの揺れでも過度に怖がる児童はいます」と、総合学習担当の亀崎先生は語ります。しかし、様々な思いを抱えながらも、七郷小学校の子どもたちは、保護者や先生、地域の方に見守られながら、未来に向かって歩き始めています。

発表会の翌日、遠く離れたニューヨークのユニセフ本部で開かれた執行理事会で、七郷小の子どもたちの取り組みを語るアンソニー・レーク事務局長(写真左)。

© UNICEF/UN09280/Nesbitt

発表会の翌日、遠く離れたニューヨークのユニセフ本部で開かれた執行理事会で、七郷小の子どもたちの取り組みを語るアンソニー・レーク事務局長(写真左)。

2014年3月に七郷小学校を訪れたユニセフのアンソニー・レーク事務局長は、発表会の翌日である2月3日、七郷小から約1万キロ離れたニューヨークで開催されたユニセフ執行理事会で、次のように報告しています。

「仙台で出会った子どもたちは、「まち」の模型づくりを通じて本当に多くの事を学んでいました。模型でつくられた「まち」が、そのまま実際につくられることはないかも知れません。でも、この取り組みに参加した子どもたちは、私たちが実現を目指しているものを将来推し進める大きな力になってくれるのです」

>レーク事務局長スピーチ(英文)の全文はこちら ※七郷小の子どもたちに関する言及は13ページの4段落目

「未来の七郷まちづくり」ワークショップ~過去の取り組みと関連記事

2012年の取り組み

2014年の取り組み

アンソニー・レーク事務局長訪問(2014年3月6日)

シンポジウム「『未来をつくる私がおとなに伝えたいこと』(2014年3月27日開催)

ユニセフ@定禅寺ギャラリー(2015年3月14~15日開催)

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