【2018年12月7日 マラケシュ(モロッコ)発】
© UNICEF/UN062479/Georgiev |
子どもの頃、大事にしていたものは何ですか。 いつも持ち歩いたり、そっとしまっておいたり。 そんな「たからもの」は、おとなになった今でも思い出として、 あなたの心のなかに残っているのではないでしょうか。 でも、もし突然その場を離れなければならなくなったとしたら。 戦争や貧困から逃れなければならなくなったら。 あなたは、「たからもの」を手放さずに、持っていくことができるでしょうか。 |
ここでは、移民・難民の子どもたちが大切にしている「もの」を通して、越境の物語を紹介します。その「もの」は、悲しい記憶を呼び起こすものでもあれば、強さや勇気の証でもあります。またある物語では、子どもは何も持っていません。ただ服を着ているだけです。
移民であろうと、難民であろうと、国内避難民であろうと、国籍がなかろうと。たとえどのような状況に置かれても、「子どもは子ども」であるということに目を向けてほしいという願いを込めて。
国連は、世界中で移民・難民が大規模に移動している状況を受け、難民および移民をめぐる課題に関する枠組みとなる2つの「グローバル・コンパクト」を2018年内に採択するための準備を進めてきました。このうちのひとつ、「安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト」は、2018年12月10日から11日にかけてモロッコのマラケシュで行われる国連総会の一環として開かれる会議で採択される予定です。難民・移民に関する「ニューヨーク宣言」および「子どもの権利条約」に則って、移民の子どもたちを支援するための行動について各国政府が合意する瞬間となります。ユニセフ・モロッコ事務所は、この採択に合わせたサイドイベントとして移民・難民の子どもの物語の写真展を開催しています。
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©UNICEF/UN0255467/Moreno Gonzalez |
ハロルド(17歳)は2018年、ベネズエラのカラカスからペルーのリマに移動しました。荷造りをしながら、かばんに入りきらないたくさんのものを捨てましたが、高校でもらったメダルは、忘れずにかばんに入れたといいます。「このメダルが、人生で達成していく最初のひとつであるように」と夢を描いて。
©UNICEF/UN068523/Oatway |
アグネス(17歳)の幼い息子は、紛争によって深刻な食糧危機が起きた南スーダンから移動する際、マラリアに感染し、命を落としてしまいました。ウガンダのビディ・ビディ難民キャンプに逃れた今でも、赤ちゃんの帽子を大事に持っています。
©UNICEF/UN0255469/Herwig |
ヨルダンのザータリ難民キャンプで暮らすハムザ(14歳)が差し出したのは、シリアにいたころに先生からもらった手書きのレター。ハムザは現在、中学2年生。シリアからの避難を強いられて、教育を受けられない期間があったにかかわらず、人一倍の努力をして、良い成績を保っています。シリアから逃れるとき、このレターを忘れずに荷物に入れてきました。「先生からもらったレターは、僕にとってとても大切なものです。クラスで一番だった頃を思い出させてくれるからです」
©UNICEF/UN0217830/Bindra |
米国を目指す途中、グアテマラの公共施設に一時的に身を寄せているエリアザ(15歳)の唯一の持ち物は、ベルト、靴ひも、そして石けん。エルサルバドル、ホンジュラス、グアテマラから非正規ルートを通って米国を目指す子どもたちや家族の数は、増加の一途をたどっています。ギャングによる暴力や貧困から逃れ、米国に移住することを望みながら。
©UNICEF/UN0255468/Herwig |
ヨルダンのザータリ難民キャンプで暮らすヤーヤ(13歳)が、生まれ故郷のシリアでこのパスポート写真を撮影したのは、小学校に入学する時。でも、学校に通うことができたのは1週間だけで、シリアで激しくなる紛争のためにヨルダンに逃れてきました。今も写真を大切にもっているのは、昔の思い出を思いだせるように。「この写真は、ぼくの子どもの頃の一部。写真の中の自分を見ると笑顔になれるし、シリアで暮らしていた小さいころの思い出があって嬉しいんだ」
©UNICEF/UN030148/Rich |
南スーダンのユニティ州、文民保護区で暮らしているニアボス(6歳)は、家族で使っているストーブを、毎日学校に持ってきます。このストーブを椅子代わりにして、座って学べるように。
©UNICEF/UN0147324/Brown |
モハメッド(10歳)は、ミャンマーで暴力が激化したことで、バングラデシュに逃れてきたロヒンギャ難民。ボートに乗って避難する途中で、服が入っていたカバンを失くしました。今、唯一手元にあるのが、大事そうに抱えているコーランの複写です。
©UNICEF/UN0260172/Prinsloo |
イデーヤ(17歳)は、極度の貧困に苦しむなかで、すべてを置いてソマリアからイエメンに働きに出ました。彼女が世界で一番大切に思う、小さな娘さえも残して、着の身着のままで出かけて行きました。
イエメン行きのボートを待っている4日間、食べ物も水さえも口にできませんでした。ようやく辿り着いたイエメンでは、レイプや虐待の危険に直面し、結局、イデーヤはソマリアの自宅に戻ってきました。
教育を受けられず、文字を読んだり書いたりすることができないイデーヤは、「娘に私のような思いをさせないよう、娘のために一生懸命働きたかったの」と語ります。
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その他の物語は、ユニセフ本部サイトでご覧いただけます(英語)。
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