2022年10月7日ジュネーブ/イスラマバード(パキスタン)発
ユニセフ(国連児童基金)パキスタン事務所代表のアブドゥラ・ファディルは、ジュネーブで行われた国連の定例記者会見において、パキスタンで起きた大洪水に対し国際社会の迅速な支援がなければ、さらに多くの子どもたちの命が奪われると訴えました。以下は、会見の概要です。
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615人の子ども亡くなる
パキスタンを襲った壊滅的な洪水は、すでに615人の子どもたちの命を奪っています。今現在、約1,000万人の子どもたちが、命を守るための緊急支援を必要としています。これは驚くべき数字であり、実際、そのニーズの大きさには圧倒されます。もし迅速な対応がとられなければ、今後数日、数週間のうちにさらに多くの子どもたちが命を落とすことになるでしょう。
被災地は、これまで見たこともないようなひどい状況です。冬が訪れるにつれ、緊急支援のニーズはさらに高まっていくでしょう。8週間以上、簡易なテントで生活している家族もいます。灼熱の太陽から身を守るものは、ぼろぼろの布切れしかないという家族もいます。子どもたちの周り、時には寝床から数メートルしか離れていない場所に、肥料や排せつ物で汚染された水が溜まり、病気やウイルスがまん延しています。
現在、52万人の子どもたちが重度の急性栄養不良に直面しており、今すぐ治療を必要としています。また、8万人近くが合併症を伴う重度の急性栄養不良に苦しんでおり、緊急の医療介入を必要としています。今回の洪水がパキスタンを襲う以前から、被災した地区では5歳未満児の平均50%が発育阻害に陥っていました。
200万人の子ども学校通えず
700万人以上の子どもと女性が、直ちに栄養の支援を受ける必要があります。また、400万人近くの子どもが保健サービスを受けられていません。さらに、760万人の子どもたちが保護を必要とするようなリスクにさらされ、200万人の子どもたちが洪水の直接の結果として学校に通えなくなっています。
給水設備や衛生施設が被害を受けたため、550万人が安全な飲料水を手に入れることができなくなりました。ユニセフは毎日100万リットルのきれいな水を提供していますが、このような危機的状況下では、多くの家族が病原菌に汚染された水を飲まざるを得ないのです。コレラ、下痢症、デング熱、マラリアといった水を媒介する致命的な病気にかかり、ただでさえ深刻な急性栄養不良をさらに悪化させることになります。
最も被害を受けた子どもたちやその家族のもとへ支援を届けるのは非常に困難ですが、ユニセフは発生直後から現場に立ち、最も被害の大きかった55の地区でパキスタン政府の洪水対応を支援しています。ユニセフはすでに1,000万米ドル相当の緊急支援物資を届け、先週末には82万錠の抗マラリア剤を含む145トン以上の人道支援物資を同国に空輸しています。子どもたちがトラウマに対処し、日常生活を取り戻せるよう、86の移動式医療チームと226の仮設学習センターを設置しました。また、洪水被災地へのアクセスを改善するために、ハブの役割を担う2つの拠点を設置しており、新たに2つを設置している最中です。
しかし、国際社会の迅速な支援なしには、被害規模の大きさに対応し、危機を回避することはできません。子どもたちの命を守るためには今、栄養、水と衛生、保健分野の支援規模を拡大することが重要です。
資金不足呼びかけ
パキスタン政府の洪水対応を支援するため、計8億1,600万米ドルの国連による支援要請の一環として、今回、ユニセフは要請額を1億7,350万ドルへと上方修正しました。しかし現在、必要額の13%しか集まっていません。子どもたちとその家族の命を守るための時間は、残り少なくなってきています。
これまでも子どもたちやコミュニティを支援してきた我々にとって、悲惨な現状は非常に心が痛むものです。毎日、心配した親たちが病気の子どもの治療のために移動式医療施設に駆けつけています。子どもたちは、重度の急性栄養不良、水様性下痢症、マラリア、デング熱、腸チフス、急性呼吸器感染症、痛みを伴う皮膚疾患など、数え切れないほどの症状に苦しんでいます。この気候変動による災害の結果、私たちは行く先々で、絶望と失望が広がっているのを目にしています。手遅れになる前に、国際社会が一丸となって行動を起こす必要があるのです。
■ユニセフ「自然災害緊急募金」ご協力のお願い
地震や津波、洪水、台風やサイクロン、干ばつなどの自然災害に苦しむ子どもたちのために、ユニセフは緊急支援を行っています。
その活動を支えるため、日本ユニセフ協会は、ユニセフ「自然災害緊急募金」を受け付けております。
パキスタンでの洪水の影響を受けた子どもたちを含む、最も支援を必要としている子どもたちとその家族に支援を届けるため、ご協力をお願い申し上げます。