2023年3月8日カイロ/アンマン発
ユニセフ(国連児童基金)は、8日、現地保健当局やパートナー団体と共に、シリア北西部の地震被災地で、コレラワクチンの接種キャンペーンを開始しました。
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不衛生な環境による感染リスク
10日間で170万回分のコレラワクチンを供給するこのキャンペーンは、特に地震の影響が最も大きくコレラ発生のリスクが高い地域(イドリブ県のサルマダ、マーレットタムスリン、ダナ、アトメの各地区、アレッポ北部のアザーズ地区)で暮らす1歳以上の人々を対象にしています。保健員やコミュニティ・ボランティアで構成される1,400チームが、家庭を一軒ずつ訪問して接種するほか、避難民キャンプや市場、学校で避難生活を送る人々の元にもワクチンを届けます。
ユニセフ中東・北アフリカ地域事務所のマッダレーナ・ベルトロッティ副代表は、「長年にわたる紛争、そして2度の大地震の後、不衛生な環境や安全でない水による子どもたちへのリスクは、取るに足らないものに思えるかもしれませんが、水を媒介する疾病が定着してしまうと、その影響は悲惨なものになることがわかっています。この予防接種キャンペーンは、子どもたちとその家族にとって必要な保護を提供し、何百万人もの人々を危険にさらす可能性のある病気のまん延の抑制につながることから、極めて重要です」と述べています。
子どもの安全と健康を守るために
昨年9月10日にシリアでコレラの発生が初めて宣言されて以来、イドリブとアレッポの両県で5万件以上の感染が疑われる症例が報告され、その18%は国内避難民キャンプから報告されたものでした。しかし今回の地震が発生した2月6日の週は、感染報告が63%減少し、地震の影響で報告がままならないことを示唆していました。その後、感染症発生動向を調査するサーベイランスが応急復旧し、2月最終週時点において、1,784件の新しい症例が報告されました。コレラのような流行疾患のサーベイランスと対応体制の強化は、地震発生後において急務であり、特に、空気中を漂う病原体の種類が変化するこれからの季節に向けて、その取り組みの強化が必要です。
ユニセフは、ワクチンを安全に供給するため、ワクチンの調達、コールドチェーン(低温物流システム)、保管管理について、引き続き主導的な役割を担っています。ユニセフはまた、経口コレラワクチン接種が、家族の安全と健康を守るために重要だという認識を高める啓発活動を、パートナー団体と共に展開しています。
2月6日にトルコ南部とシリア北部を襲った壊滅的な地震により、シリア北西部では4,540人以上が死亡し9,000人近くが負傷しました。また、約9万人が避難生活を強いられ、多くの人が、過密状態のキャンプや一時避難所に身を寄せています。この大災害により、安全な水や衛生設備が利用できなくなった住民は、コレラを含む水を媒介とする病気のリスクにさらされており、そのリスクは日に日に高まっています。
ユニセフ「自然災害緊急募金」ご協力のお願い
地震や津波、洪水、台風やサイクロン、干ばつなどの自然災害に苦しむ子どもたちのために、ユニセフは緊急支援を行っています。その活動を支えるため、(公財)日本ユニセフ協会は、ユニセフ「自然災害緊急募金」を受け付けております。トルコ・シリア国境で発生した地震の影響を受けた子どもを含む、最も支援を必要としている子どもたちとその家族に支援を届けるため、ご協力をお願い申し上げます。
お寄せいただいたご寄付は、被災した子どもと家族が1日でも早く日常生活を取り戻せるように、安全な飲み水や衛生用品等の緊急支援物資の提供、教育の再開支援、子どもの心理社会的サポートなど、ユニセフが被災地で行う緊急・復興支援活動に役立てられます。