2023年12月21日発
2023年は、ウクライナやシリア、イエメンなどで長期化する紛争に加え、4月にはスーダンで、10月にはパレスチナ・ガザ地区で、武力衝突が激化するなど、世界各地で子どもたちが犠牲になる人道危機が続きました。
さらに、大規模な地震、気候変動の影響による深刻な干ばつや熱波、洪水、暴風雨など、自然災害も相次いで発生しました。
人道危機下で最も困難な立場に置かれるのは、いつも子どもたちです。そうした危機の中にいる子どもたちと家族を支援するために、ユニセフは24時間体制で、命を守るための緊急・人道支援を続けました。
この1年間に起きた様々な危機と、ユニセフによる子どもたちへの支援の報告をご覧ください。
2023年2月
トルコ・シリア地震
2月6日以降、トルコとシリアの国境地域を2度の大地震と多数の余震が襲いました。被害はあまりにも甚大で、主要な道路やインフラが破壊されたうえ、厳寒と悪天候により、救護活動と被災者支援は困難を極めました。
そのような状況下で、ユニセフは、子どもたちや家族の命を守るために、24時間体制で支援を続け、パートナーと協力して、必要不可欠な保健物資、毛布、衣類、安全な飲み水、衛生用品などを配布しました。
ウクライナ危機発生から1年
2022年2月24日にウクライナで戦いが激化してから1年が経過。
ユニセフが1年間に行なった支援は多岐にわたり、560万人に安全な水を提供、540万人に医療サービスを支援、子ども250万人に教育の機会を提供、460万人の子どもと養育者に心のケア支援を、ウクライナ国内と難民受け入れ国の27万7,000世帯に多目的現金給付を支援したことなどがその一例です。
ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは、「ウクライナの子どもたちは、寒さと恐怖の中で眠りにつき、この残虐な戦争の終結を願いながら目覚めています。多くの子どもたちが親や兄弟、家や学校、遊び場を失いました。そのような苦しみを背負う子どもが一人でもいてはならないのです」と述べています。
ウクライナ危機、戦い激化から1年:150万人の子どもがこころの病気の危険に
■関連記事:キーウ出身の広報官が語る、ユニセフ支援と日本との絆(聞き手:アグネス・チャン ユニセフ・アジア親善大使)
2023年3月
バヌアツでサイクロン被害
3月3日、南太平洋の国バヌアツが2つのサイクロンに襲われ、特に大きな被害を受けたタフェア州とシェファ州では、多くの子どもたちが、家や学校、そして生活に密着したあらゆるものを失い、国人口30万人のうち20万人が緊急の支援を必要としました。
ユニセフはパートナーと協力し、避難所に身を寄せていた人々に、命を守る人道支援物資を緊急に届けました。それらは、サイクロンが到来する季節を前に、災害発生に備えて、首都ポートビラの倉庫に備蓄していたものです。さらに、衛生的な環境をつくるための衛生用品やバケツ、防水シートなども提供し、被災した人々の避難生活を支えました。
イエメン紛争8年
2015年3月に激化したイエメンにおける紛争は8年を経過しても収束の見通しはついておらず、経済崩壊、社会システムの機能不全などの複合的な要因が重なり、220万人の子どもたちが急性栄養不良に陥っているなど、今なお深刻な人道危機が続いています。
ユニセフは、過去8年間、そしてそれ以前からずっと現地で、保健・栄養・教育・水と衛生などの支援を提供しています。こうした支援がなければ、複雑な人道危機の中で、子どもたちが生き延び、成長する可能性は著しく低下してしまいます。
子どもたちは、破滅的で終わりのない戦闘の影響によって、今なお命の危険にさらされ続けています。
イエメン紛争8年: 54万人の5歳未満児が重度の急性栄養不良 10分に1人が予防可能な疾病で死亡
2023年4月
スーダンで大規模な危機
4月15日に紛争が勃発したスーダンでは、1,400万人近い子どもが緊急の人道支援を必要としており、何千人もの子どもたちがその民族的背景を理由に、意図的に標的にされ、殺傷や虐待の被害に遭っていることが報告されています。
戦闘地域の拡大や悪化する治安状況によって現地での活動が極めて困難ななか、ユニセフはパートナーと協力し、子どもたちと家族に命を繋ぐ物資を届け、保健・栄養・水と衛生・教育・保護の支援を提供しています。
スーダン紛争激化から200日 避難する子ども、過去最多の300万人 世界最大の「子どもの避難危機」に
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2023年5月
大型サイクロン「モカ」
5月14日、サイクロン「モカ」が、バングラデシュとミャンマーを襲い、大雨、高潮および時速175マイルに達する強風をもたらし、ぜい弱な立場に置かれている何百万人もの子どもや家族の生活を、大きく破壊しました。
バングラデシュでは、コックスバザールにある世界最大の難民キャンプで暮らす100万人のロヒンギャ難民(うち半数が子ども)も、大嵐にさらされました。
各地の災害リスクをふまえて事前に物資を配備しているユニセフは、災害発生直後から、現地のニーズを速やかに把握し、緊急支援を提供しています。現地のパートナーとの協力のもと、サイクロン「モカ」で被災したバングラデシュとミャンマーの子どもたちと家族のもとに、命を守る支援物資を速やかに届けるとともに、水と衛生、子どもの保護、保健、栄養、教育などの支援活動を強化しました。
大型のサイクロン「モカ」 バングラデシュ・ミャンマーで甚大な被害 難民・避難民の子どもたちが危機に
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2023年8月
パキスタン洪水から1年
パキスタンの国土の3分の1が水没し、3,300万人が被災した歴史的な大洪水から1年。洪水によって、3万の学校、2,000の保健施設、4,300の水道を含む重要なインフラが被害を受け、人々の暮らしは大きく損なわれました。
2022年8月からの1年間で、 ユニセフとパートナーは、360万人にプライマリ・ヘルスケアを提供し、170万人 が安全な水を利用できるようにし、54万人以上の子どもと養育者にメンタルヘルスケアと心理社会的支援を提供し、25万8,000人以上の子どもの教育を支援してきました。しかし、依然として何百万人もの子どもが人道支援と必要不可欠なサービスへのアクセスを必要としている、とユニセフは警鐘を鳴らしています。
2023年9月
リビア洪水被害
2023年9月10日、暴風雨「ダニエル」がリビアを直撃。強風や、突発的な豪雨がもたらした大洪水が、北東部を中心に複数の地域に深刻な被害をもたらしました。
ユニセフはリビア政府からの支援要請を受け、子どもたちをはじめ、被災した人々への支援を開始しています。ユニセフ・リビア事務所は、初期の緊急支援として、1,100セットの衛生キット、1万人分の命を守る医療物資、500人分の子どものための衣類キットの配布を迅速に行いました。
2023年10月
アフガニスタン大地震
10月7日、アフガニスタン西部で、マグニチュード6.3の大きな地震が複数回発生しました。被災地域では家屋の倒壊が相次ぎ、学校や水道などの公共施設・インフラにも甚大な被害が出ました。
被災した子どもたちと家族の切実なニーズに応えるため、ユニセフは緊急支援として、防寒着や毛布、防水シートなどの支援物資の輸送のほか、安全な水の提供、トイレの設置、心のケア支援などの活動を展開しました。また、医薬品や医療機器、助産キット、手術キットなど80トン以上の医療用物資も現地に届けました。
アフガニスタン地震:カブールに支援物資到着 4万3千世帯を支援
パレスチナ・ガザ地区 人道危機
10月7日の衝突以来、ガザの人口の最大85%近くにあたる190万人が避難生活を送っており、その半数が子どもたちです。
砲弾や銃撃に加え、壊滅的な生活環境と食糧不足、医薬品や燃料の不足などによって、子どもたちは極度の命の危険にさらされています。ガザ地区は今、「子どもにとって世界で最も危険な場所」です。さらに、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区でも、緊迫した状況が続いています。
現地の状況が刻々と変化する中、ユニセフは子どもたちと家族の命を守る支援として、安全な水、医薬品などの医療物資、栄養不良の子どものための栄養治療食、衛生用品などを、トラックに積み、ガザ地区に搬入し続けています。
その中には、避難生活を余儀なくされている家族に配布される、石けんや生理用品を含む家庭用衛生キット、給水所から水を汲むための水容器、寒さから身を守る毛布、子ども用の冬服なども含まれています。
子どもたちのための緊急・人道支援
長期化する紛争、頻発する災害、難民・移民危機などによって影響を受ける子どもたちのために、ユニセフは、2024年の緊急・人道支援計画として、世界155の国と地域で暮らす約1億4,700万人(うち9,380万人は子どもたち)に命を守る支援を届ける目標を盛り込んだ、「子どもたちのための人道支援報告書2024」を発表しました。
ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは、「無数の子どもたちが、複雑さと規模を増す人道危機に巻き込まれ続けています。子どもたちが自分たちの命や未来を犠牲にすることなど、あってはなりません」と述べています。