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日本ユニセフ協会

ストーリー

バングラデシュ
命を守るワクチンをすべての子どもに
ユニセフ予防接種支援の最前線

2024年4月18日バングラデシュ

子どもの予防接種のため、あるいは保健員に子どものことについて相談するために集まっている母親たち(バングラデシュ、2022年8月21日撮影)

© UNICEF/U.S. CDC/UN0723078/Fabeha Monir
生後2ヶ月の息子ルドロちゃんを連れたシャンティさん(右)をはじめ、母親たちが子どもの予防接種のため、あるいは保健員に子どものことについて相談するために集まっている(バングラデシュ、2022年8月撮影)

バングラデシュ南東部にあるチッタゴン丘陵地帯の農村部には保健施設が近くになく、予防接種を必要な時期に受けられない子どもたちがいました。そこでユニセフは、人里離れた村の子どもたちをワクチンで予防可能な病気から守るため、保健員で構成する巡回チームを村々に派遣しています。命を守るワクチンがどのように子どもたちに届けられているのか、予防接種支援の最前線についてご報告します

早朝から始まるワクチンの旅

チッタゴン丘陵地帯のバンドルボンにあるタンチ診療所では、朝早くに出勤してきた保健員たちが、仕事に取り掛かっています。冷蔵庫の中で適切な温度管理下で保管されているワクチンを、携帯用の保冷箱に必要な量だけ丁寧に入れているのです。よほどの悪天候でない限り、毎朝みられる光景です。

タンチ診療所で、冷蔵庫からワクチン取り出す保健員(バングラデシュ、2022年8月21日撮影)

© UNICEF/U.S. CDC/UN0723064/Fabeha Monir
タンチ診療所で、冷蔵庫からワクチン取り出す保健員(バングラデシュ、2022年8月撮影)

 

ワクチンを保冷箱に入れる保健員(バングラデシュ、2022年8月21日撮影)

© UNICEF/U.S. CDC/UN0723061/Fabeha Monir
ワクチンを保冷箱に入れる保健員(バングラデシュ、2022年8月撮影)

 

午前7時頃、支度を整えた保健員たちは、ワクチンの詰まった保冷箱を肩にかけてタクシーに乗り、サング川のほとりに向かいます。タクシーを降りた後は、ボートに乗り、水深の浅いサング川を進みます。行き先によってかかる時間は異なりますが、1時間から最大4時間かけて、目的地へと向かいます。

ボートが岩の多い場所を進むとき、操縦士が「まっすぐ座って!傾かないで」と叫んでいます。ボートのモーター音と川波の音に混じって、鳥のさえずりが辺りに響きわたっています。

保冷箱に入ったワクチンなどを持ってタクシーに乗り、サング川のほとりに向かう巡回チーム(バングラデシュ、2022年8月21日撮影)

© UNICEF/U.S. CDC/UN0723002/Fabeha Monir
保冷箱に入ったワクチンなどを持ってタクシーに乗り、サング川のほとりに向かう巡回チーム(バングラデシュ、2022年8月撮影)

 

遠隔地の村に向かうため、ボートに搭乗する保健員たち(バングラデシュ、2022年8月撮影)

© UNICEF/U.S. CDC/UN0723047/Fabeha Monir
遠隔地の村に向かうため、ボートに搭乗する保健員たち(バングラデシュ、2022年8月撮影)

 

ボートを降りた後、徒歩で山道を進む保健員のウバヒネさん(右)と同僚(バングラデシュ、2022年8月撮影)

© UNICEF/U.S. CDC/UN0723042/Fabeha Monir
ボートを降りた後、徒歩で山道を進む保健員のウバヒネさん(右)と同僚(バングラデシュ、2022年8月撮影)

ボートを降りた保健員たちは、ここで少人数の班に分かれます。できるだけ多くの村を巡回するためです。

保健員のウバヒネさんは、同僚とともに、マングロン・パラ村に向けて登り坂を徒歩で登っていきます。

「私の担当地域である丘陵地帯は人口が少ないので、ほとんどの住民と顔見知りです」とウバヒネさんは言います。まず訪れるのはコミュニティの長の家です。その家を拠点に、他の村々も訪れ、ワクチン接種をおこないます。

遠隔地の子どもたちに、命を守るワクチンを

生後4カ月のナイユちゃんは、これまで一度もワクチン接種を受けていません。

「息子が生まれた後、予防接種を受けさせたいと思っていたのですが、近くに受けられるところがなかったのです。故郷のこの村に最近戻ってきたので、この子にとって初めてのワクチン接種です」とナイユちゃんの母親は言います。

ナイユちゃんは今日、BCG、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオの予防接種を受けました。

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© UNICEF/U.S. CDC/UN0723026/Fabeha Monir
生後4カ月の息子ナイユちゃんを予防接種に連れてきた両親(バングラデシュ、2022年8月撮影)

 

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生まれて初めてのワクチン接種を受ける生後4カ月のナイユちゃん(バングラデシュ、2022年8月撮影)

 

 

バングラデシュは過去40年間で、子どもの保健指標が目覚ましく向上し、1歳未満の子どもの予防接種率は84%に達しています。しかし、都市から遠く離れた地域で暮らす子どもたちは、ワクチンを受ける機会が限られています。特に、ナイユちゃんの両親のように予防接種センターが遠くて行くことができなかったり、あるいは、仕事がある平日の日中に子どもを連れて予防接種に行けなかったりする親は、子どもに予防接種を受けさせたくてもできないのです。そして、ワクチン接種を受けていない子どもたちが一定数いると、感染症が蔓延するリスクが高まります。

それぞれの子どもの接種スケジュールを管理

ウバヒネさんの同僚であるシャキさんは、この丘陵地帯で生まれた赤ちゃんの記録をとっています。

「それぞれの赤ちゃんが、どのワクチンをいつ受ければ良いかがわかるように、記録をつけています。村を訪れるたびに、一人ひとりの記録を見返して、受けるべきワクチン接種を逃していないかを確認します。接種を受けるタイミングなのに受けられていない赤ちゃんがいたら保護者に連絡をとります。電話で連絡がとれない場合は自宅を訪ねます。それぞれの子どもが、必要なすべての予防接種を受けるまで、このプロセスを繰り返します」とシャキさんは説明します。

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母親たちの相談にのる保健員のシャキさん(右)(バングラデシュ、2022年8月撮影)

 

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はしかの予防接種をする保健員のシャキさん(バングラデシュ、2022年8月撮影)

 

「この村の家族は、耕作期と収穫期の季節には、さらに標高の高い丘の上の農場で暮らします。子どもの健康を守ることがどれほど重要であるかは分かっていますが、仕事があるので農場を離れることは難しいのです。だから、子どもたちは予防接種を受け損ねてしまうのです」(シャキさん)

季節によって家族の暮らす場所が変わるため、巡回チームは村を月に2回訪れ、各家庭を訪問しています。村への往復には長い時間がかかりますが、すべての子どもにワクチンを接種するためには必要なことなのです。

経済的格差の重荷を背負う子どもたち

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ダッカのモハマドプルの通りの様子(バングラデシュ、2022年8月撮影)

子どもの予防接種の課題を抱えているのは、農村部だけに限りません。工場やその他の仕事で、低賃金で長時間働く都市部の親にとっても、保健センターに子どもを連れて行くことは容易ではありません。

ダッカのモハマドプルで活動する保健員は、都市部の貧困家庭の子どもたちが予防接種を受け損ねることがないように、戸別訪問をしてキャッチアップ接種を呼びかけたり、サテライト型の接種場所を設置したり、診療所での接種予約を手配したりしています。

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© UNICEF/U.S. CDC/UN0722984/Fabeha Monir
生後4カ月のハディヤットちゃんを抱く母親のファテマさん(バングラデシュ、2022年8月撮影)

3児のシングルマザーのファテマさんは家事労働の仕事をしています。「子どもたちを食べさせるために、3つの仕事を掛け持ちしています。休日は1日もありません。子どもたちとの時間をつくりたくても、仕事を休むわけにはいきません」と言います。

タンチの村とは対照的に、モハマドプルは35万人以上が暮らす人口密度の高い住宅地域です。ファテマさんの一番下の子どもである生後4カ月のハディヤットちゃんもまた、予防接種を一度も受けたことがありませんでした。

保健員はファテマさんに会えるまで何度か自宅を訪れ、都合のつく日時に子どもがワクチン接種を受けられるよう、診療所への予約を手配しました。チッタゴン丘陵地帯のナイユちゃんと同様、ハディヤットちゃんも戸別訪問のおかげで、ワクチン接種の機会を得ることができました。


毎年4月24日から30日は「世界予防接種週間」です。ユニセフによる子どもたちの支援の中で、最も成果を挙げてきたものの一つ。1990年には年間1,250万人だった5歳未満児死亡数は、2022年には490万人まで減少しました。これには、破傷風やポリオ、はしかなどのワクチンの普及が大きく貢献しています。

困難な状況にある子どもたちが、生まれ持った権利を守られ、平和に健やかに成長できることを目指して活動するユニセフ。

その活動は皆さまのご支援によって支えられています。

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※最も支援が必要な子どもたちを支え、ユニセフの様々な活動に役立てられています。

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