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日本ユニセフ協会

プレスリリース

シリア、全土に推定32.4万個の不発弾残る
12月には116人の子どもが死傷
ユニセフ、除去活動と教育の強化を訴え

2025年1月14日ダマスカス

政権崩壊後のシリア各地で不発弾による子どもの死傷者が出ていることを受け、ユニセフ(国連児童基金)の広報マネジャー、リカルド・ピレスは、ジュネーブで行われた国連の定例記者会見において、シリアの首都ダマスカスより参加し以下の報告を行いました。

116人の子どもが死傷

激しさを増すアレッポの戦闘から逃れて、ラッカ市の一時避難施設にたどり着いた子どもたち(シリア、2024年12月4日撮影)

© UNICEF/UNI701421/Aldhaher
激しさを増すアレッポの戦闘から逃れて、ラッカ市の一時避難施設にたどり着いた子どもたち(シリア、2024年12月4日撮影)

シリアの子どもたちに平和の恩恵がもたらされるかもしれないという期待が高まる中、彼らは、驚くべき勢いで被害が拡大している不発弾(UXO: unexploded ordnance)の残酷な影響に相変わらず苦しめられています。ユニセフは、不発弾によって昨年12月だけでも116人の子どもが死傷したという報告を受けています。これは1日平均でほぼ4人が死傷していることにあたりますが、現地の人道的状況が不安定であることを考慮すると、実際にはこれより多いと考えられます。

過去9年間で、不発弾がらみの少なくとも42万2,000件の被害が、国内14の県で報告されており、その半数は悲惨にも子どもの犠牲者を出したと見られています。子どもたちはシリア全土で、どこにあるかわからず、多くの場合肉眼では確認できない、極めて致命的なこの不発弾の脅威に直面しています。

さらに、新たに移動する人々がいることは危険を悪化させているだけです。昨年11月27日以降、激化する紛争により25万人以上の子どもが家を追われています。こうした子どもたちや、元の居住地に戻ろうとする子どもたちにとって、不発弾の危険は絶えずつきまとい、避けることはできません。

復興に向けた取り組みの話し合いが続き、シリアが子どもたちに新たな道を開くことを国際社会が支援しようと準備を進める中、土地が安全であることを担保し、爆発物を除去するための早急な投資が不可欠です。

全土に推定32.4万個の不発弾残る

アレッポ東部にて、爆撃で被害を受けた建物の間を、歩行器を使って歩く8歳のラマちゃん(シリア、2018年3月7日撮影)

© UNICEF/UNI275343/Al-Issa
アレッポ東部にて、爆撃で被害を受けた建物の間を、歩行器を使って歩く8歳のラマちゃん(シリア、2018年3月7日撮影)

10年以上にわたる壊滅的な紛争により、全土に推定32万4,000個の不発弾がばらまかれているなど、シリアのコミュニティが暮らす場所には戦争残存物が散乱しています。

この危険は、不発弾や地雷で汚染された地域に住む約500万人の子どもに影響を与えています。不発弾や地雷は、シリアの子どもの主要な死傷要因となっています。彼らが踏み出す一歩ずつが、想像を絶する悲劇のリスクを伴っているのです。

その一つが、私がハマ郊外で出会った12歳の男の子、アブドゥルに起こったことです。12月18日、彼は友人たちと自宅裏の空き地でサッカーをして遊んでいました。その時、友人の一人が地面に落ちている何か光るものを踏みました。

その直後、爆発が起こり、アブドゥルの従兄弟にあたる15歳のモハメドが亡くなり、アブドゥルと10歳の弟が負傷しました。2人は足と腕を多発骨折し現在療養中ですが、介助がなければ歩けません。そして2人は深いトラウマを抱えています。しかしながら、彼らの話は決して珍しくはないのです。

アブドゥルの母親は、この体験を語ろうとして涙を流しました。そして、昨日もまた公園で見つけた手りゅう弾を家の中に持ち込み、それが致命的な影響を及ぼす可能性があることを知らずに、3人の子どもが亡くなった、と付け加えました。

たとえ子どもたちが爆発から生き延びたとしても、苦難は終わりません。命に関わるようなけがや障がいを負った場合、学校に戻れないことも多く、適切な医療保健に関するケアをなかなか受けられない可能性もあります。子どもたちは、孤立、偏見、機会の制限という新たな形の戦いに直面するのです。

しかし、今日からでも、子どもたちの人生を少しでも耐えられるものにするためにできることがあります。

私たちは、戦争の残存物である危険な地雷を取り除き、コミュニティを再び安全にするために、人道的な地雷除去活動を強化しなければなりません。子どもたちが不発弾を認知し、回避できるよう、地雷のリスクに関する教育を拡充させる必要があります。また、被害にあった人々が尊厳を取り戻し、生活を再建できるよう、医療、リハビリテーション、心理社会的サービスを含む包括的な支援を提供しなければなりません。

私たちは子どもたちに対して、ただ耳を傾けるだけでなく、行動を起こす義務があります。土地の上にこれほどまでに大規模な破壊が待ち構えている状況では、シリアの復興に望みはありません。子どもたちが家の外を歩くだけで爆発物に吹き飛ばされる危険にさらされている状況でシリアは、あの恐ろしい戦争を過去のものにすることはできません。

行動を起こさない一日一日が、シリアの子どもたちを脅かす日々となっています。これまで危険の中で生きることを余儀なくされてきた子どもたちには、残りの人生を安全に生きる権利があるのです。

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