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財団法人日本ユニセフ協会

めざせ元気なアフリカ!ユニセフinアフリカ

日本人現地スタッフの紹介

青年海外協力隊、開発コンサルタント会社勤務の後、ユニセフのJPO。
世界銀行コンサルタントを経て2007年より現職。

 

モロッコという国

皆さんはモロッコと聞いて何を思い浮かべますか?マラケシュやフェズの古い町並みなどの世界遺産ですか?それとも懐かしの映画カサブランカやシェルタリング・スカイの異国情緒漂うシーンでしょうか?

モロッコは北アフリカの地中海、大西洋、サハラ砂漠に囲まれた、人口3千万人の国です。国の宗教はイスラム教、公用語はアラビア語で、先住民の言葉アマズィール語やフランス語、スペイン語も広く使われています。歴史、文化、自然資源に恵まれ、治安も悪くないことから、日本でも人気の観光旅行先として知られつつあるモロッコですが、この国の子どもを取り巻く状況はあまり知られていません。

モロッコではすべての子どもの教育、保健、保護、参加などの権利実現にはまだ程遠いです。100人中5人の割合で子どもが5歳になる前に死亡してしまいます。幼稚園に通える子どもは約半数、小学校に通う子どもは93%に限られます。経済的には中所得国にあたるモロッコですが、社会・経済的な格差が大きな問題で、人口の約14%が貧困にあえいでいます。貧困のしわ寄せは子どもにのしかかり、労働や性的搾取、ヨーロッパへの不法移民などの犠牲になっています。

モロッコで私はユニセフの教育プログラム

ユニセフが支援している就学前のクラス。ユニセフは、学校用具の提供や教師トレーニングを行い子どもに優しい学校を推進しています。

そんなモロッコで私はユニセフの教育プログラムを担当しています。モロッコでは教育を受けられる子どもの数は増えつつありますが、途中で学校をやめてしまう子どもの数は減ってはいません。例えば小学校へ入学した子どものうち10人中4人は6年生を卒業する前に退学してしまいます。これではせっかく数年間は学校に通っても、将来社会生活を円滑に送れるための基本的な能力を身に付ける前にやめてしまうことになります。子どもが早期に学校を辞めてしまう理由には、教育の質に関わる問題が大きく関わっています。学校で学ぶ内容が子どもの生活とかけ離れている、学校に水やトイレなど最低限の施設が整っていない、教員が子どもに暴力を振るう、など原因はさまざまです。

 

ユニセフの支援

ユニセフは教育の質向上に向けて、「子どもにやさしい学校」作りを支援しています。子どもにやさしい学校作りで一番大事なのは、学校が地域と一体になり、そして子ども達自身の参加によって具体的に何が学校の問題で、解決のためにどんな行動を起こせばよいか計画し、ある資源を最大限に動員してできることから計画を実行することです。例えばある学校では子ども、親、教員の話し合いから子どもの読み書きの能力が低いことが問題であることが分かりました。そこで機能していなかった学校図書館を親、教員の参加で改修し、教員がボランティアで放課後読み書きの補習を始めました。またある学校では、トイレの数が不十分で、そのために特に女の子が学校に来たがらないことが指摘され、地元の水道会社をスポンサーにトイレを増設しました。ユニセフはこうした子どもの参加による学校運営のモデルを作るためのノウハウ、能力強化の支援をしています。また、教育の場での、そして教育を通しての子どもの権利の実現に向けて、カリキュラム開発、教員研修、学校保健、子どもに対する暴力撲滅の啓発活動などの支援も合わせて行っています。

モロッコで私はユニセフの教育プログラム

学校運営住民参加型の学校。子どもに優しい学校の重要性を認識し、図書館を設置。

教育の地方分権に取り組んでまだ日の浅いモロッコでは、地域レベルの努力で学校を変えるという考えは真新しいものでした。しかし、「子どもにやさしい学校」作りのモデルが子どもの退学率を改善し、子どもの参加促進に貢献することが認められ、今年教育省が全国の小学校でこのモデルを適用し、すべての教員養成学校で研修することを決めました。これは教育省のカウンターパートやユニセフにとって非常に喜ばしい成果です。

モロッコでは残念ながら自然災害に見舞われることがあり、2004年には600人以上の死者をだす地震の被害に合いました。テント暮らしを余儀なくされ、余震におびえる子ども、教員にとって学校へ戻ることが平常の生活へ戻り復興へ向ける第一歩となります。ユニセフは日本ユニセフ協会を通した日本の皆様の協力も得て、被害を受けた学校で子ども、教員の心理的サポートとリクリエーション活動の支援をしました。このときに学校再建や心理的外傷を受けた子どものケアに携わった地域の子ども、教育関係者、地域住民はそれ以来長期的な視野で学校の質の向上に携わり、今日では地域での「子どもにやさしい学校」作りのリーダーとなって活躍しています。

よくユニセフの支援は「魚を与えるのではなく魚の釣り方を教えることにある」といわれます。釣り方を教えるのは魚をただ与えてしまうよりは根気がいり長丁場の仕事になりますが、自分たちの力で学びの場を改善し子どもが生き生きと学んでいる姿を見ると、ユニセフの仕事が元気なアフリカのための一助になっていることに喜びを感じます。

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