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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

ハイチ:被災地の学校の再開に手こずる

【2008年10月3日 ハイチ発】

洪水の影響を受けたゴナイブ市の旧市街で、バケツを使って泥と泥水を家から道路にかき出す女の子。
© UNICEF/NYHQ2008-0741/LeMoyne
洪水の影響を受けたゴナイブ市の旧市街で、バケツを使って泥と泥水を家から道路にかき出す女の子。

ベネッテさんは妹と一緒に、9:00頃、学校にやってきました。手渡されたのはシャベルでした。ふたりは、泥まみれの男性作業員に混じって、この前まで学校の食堂として使っていたホールへと入って行きます。 ハリケーンの被害に遭って床は泥だらけです。

ベネッテさん(21歳)は、こんなことが起きなければ、中等教育の最後の年を迎えるはずでした。しかし、連続的に襲ってきた4度のハリケーンのせいで、低地は水浸しとなり、家も道路も、人々までもが泥まみれになってしまいました。

被害があまりに広範囲でひどかったために、学校の新学期開始が全国的に1カ月遅延されました。しかし、教育は、緊急事態下でも、またその後も、子どもたちや人々に心の安定をもたらすものです。また、国を再建する力となります。

1カ月遅れの新学期の開始日10月6日を目前に控え、ゴナイブの学生の何割が学校に戻って来ることができるのかは分かりません。

「きれいに清掃し直さなければならない学校が200校、修復が必要な学校が100校、20校は一から建て直さなければなりません」と語るのは教育省の課長アルノール・クリスチャンです。

学校再開はいつ?

ゴナイブ市内の中学校の一階で、泥をかき出す子ども。10月6日には1カ月遅れの新学期が始まる。
© UNICEF video
ゴナイブ市内の中学校の一階で、泥をかき出す子ども。10月6日には1カ月遅れの新学期が始まる。

泥まみれにならずに済んだ学校もあります。ところがこういう場所は避難してきた人々で溢れています。いまだに推定6万5,000人が公共の建物を避難所として使っているのです。市当局は、避難民たちを別の場所に移そうとしていますが、3週間もの間、最低限の施設しかない学校で、多くの人たちが窮屈な生活をしていたために、避難民たちを移動させるだけでは済みません。どうしても清掃や修繕が必要となります。

「この泥とゴミだらけの状況をみていると、いつ学校が再開できるのかと心配になります。」サノン・ベルレーヌさん(18歳)は、瓦礫とゴミが散乱した校庭を見つめながらつぶやきます。

サノンさんの学校には、各教室約60名が生活しています。外廊下には、汚れた洗濯物や、調理鍋が散乱し、子どもたちがほうぼう中よじ登って遊んでいます。この3週間の間に、4人の女性がこの学校で子どもを出産したと言います。ある年配の女性は、被災してからここでどのように寝ているのかを、机の上に横たわって見せてくれました。

どれを優先にするか?

ユニセフは、教育省と緊密に協力して、どの学校をすぐに再開し、どの学校は、仮の校舎で再開すべきかを検討しています。

「首都部の学校や被災していない農村部の学校は来週には新学期を開始できそうですが、ゴナイブ市内では、被災者たちの避難所として使われている学校もあるので事態はより複雑です」ユニセフ・ハイチ事務所のベアトリス・マレブランシュ教育担当官は話します。ゴナイブ市内の学校の清掃と修繕にはまだ数週間かかるでしょう、と彼女は付け加えました。

「家財道具や家畜を全て失った親たちにとって、子どもたちを学校へ通わせることは、非常に難しいことです。」(マレブランシュ教育担当官)

緊急事態のもとでの教育

ハイチでの教育問題は、自然災害に見舞われていないときでさえ、複雑です。貧困とインフラ整備が進んでいないハイチでは、学校の問題は、政府の優先順位として高くないのです。

ハイチの就学年齢児のうち、学校に通えるのはわずか50パーセント。その多くが、5年生になる前に学校をやめてしまいます。ハイチのほとんどの学校は私学。学費は、ひとり当たり50ドルほどですが、これでも一日2ドル未満で生活している人々にとっては重荷だといえます。

ユニセフ・ハイチ事務所は、より多くの子どもたちが教育を受けることができるように、文具を配布し、最も貧しい家庭の人々に、学費の支援を行っています。それでも、子どもたちの学費を払うのに四苦八苦している家族にとって、この一年は、特に厳しい年になりました。食糧不足と世界の食物価格の高騰のあおりを受けて、ハイチのほとんどの家庭の家計が圧迫されているのです。現在、ゴナイブ市の多くの人々にとって、学費を払うこと自体が夢物語なのかもしれません。

「いままで、子どもたちを学校に行かせるために小売店主として働いてきました。」5人の子を持つ母親ララ・ピエールさんは言います。現在サノン小学校で避難生活をしています。「仕事を失ったいま、どうやって学費を払ったらいいか分かりません。」

社会の安定に貢献する学校

ゴナイブ市の学校に避難している家族。約600人が学校を避難所として使い、ベンチや床に寝る生活を3週間以上にわたって続けている。
© UNICEF video
ゴナイブ市の学校に避難している家族。約600人が学校を避難所として使い、ベンチや床に寝る生活を3週間以上にわたって続けている

今年のハリケーンシーズンに起きた大災害によって、ハイチは多くの面で後退し、子どもたちを以前よりも厳しい状況へと追いやりました。学校を修繕し、これを機会に、「以前よりも良い学校」を作ることは、被害を受けたコミュニティの安定のために、絶対に必要なことです。

「もちろん、疲れています。でも、みんな学校に戻って、きちんと卒業しなければなりませんから」ベネッテさんは、泥かきの手を休めて、このように話しました。

子どもたちの生活がこのような緊急事態に邪魔されたとしても、子どもたちを学校に戻すことができれば、子どもたちの回復、あるいはハイチ全体の回復を促進することができるのです。

「学校が機能しなければ、街も機能しないことはみんなが理解しています」と、教育省のクリスチャン部長は言います。「仕事が再開できないからです。こうしている間も、人々は、街から郊外へと避難したり、他の都市に移ったりしているのですから。」

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