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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

じゅうたん製造地帯の児童労働をなくすために
<インド>


インドは児童労働が最も深刻な国だとされています。学校に通っていない子どもの数や、貧困家庭の数から推計すると、労働に従事する子どもの数は、1100万人とも1億人以上とも言われています。児童労働の引き金になるのは、極度の貧困や、識字率の低さであり、貧困に苦しむ世帯ほど、収入を得る能力が充分にないことも原因です。

1991年のインド国勢調査による推計では、インドで労働に従事する子どもの20%はウッタルプラデシュ州にいます。現在、ウッタルプラデシュ州では、150万人の子どもが働いていると考えられます。彼らは家族労働の一員として、あるいは借金に縛られた形で、法律の目が届かない日陰の仕事をさせられているのです。


ウッタルプラデシュ州は社会経済的に立ち遅れていますが、輸出向けじゅうたんの85%がここで生産されており、織機も15万台を数えます。字の読み書きのできない人が多く、貧困と負債が深刻で、おとなの失業率が高いために、子どもが働きに出ざるを得ません。また、じゅうたん業界はもともと規制の届きにくい形態で製造が行われており、それも子どもを労働力に使う要因になっています。

ユニセフが支援するBal Adhikar Pariyojana(BAP)プロジェクトは、児童労働の防止と根絶をめざし、コミュニティーを拠点とした取り組みを行っています。このプロジェクトは児童労働の根本原因にまで立ち戻り「危機的状況にある」家族に、生活の質を向上させる機会を提供することを主眼としています。

1997年10月に始まったBAPプロジェクトは段階的に活動が進められており、各期間ごとに150の村々を網羅します。現在は第3期に入っており、バドヒやミルザプールというじゅうたんの2大製造地において、州内の3つのブロックに属する450以上の村々、あわせて110万人以上の住民が対象になっています。(第1期は1997年10月、第2期は1999年1月、そして第3期は2000年6月に始まりました。)

そのうちユニセフが支援しているのは、コミュニティ、地域レベルで人々の意識を変革していくための環境づくり、正規の学校と学校に替わる学習センターでの質の高い教育を促進するための技術的・物質的支援、自助グループを通じた女性のネットワーク形成と運営、プロジェクトの実施状況のモニタリングといった領域です。

全体的に見て、今回の報告対象期間では、個々人の間のコミュニケーションや伝統的なメディアを活用した環境作りの努力が実を結び、コミュニティーでは子どもの権利に対する認識が浸透し、具体的かつ積極的な取り組みが見られるようになりました。その結果、仕事をやめて学校に通う子どもが増えたことが何より重要です。

2000年7月には、教育省との協力で本格的な村単位のキャンペーンが展開され、300の村々で学校に通っていなかった子ども3,683名を、正規の小学校に入学させることに成功しました。また質の高い教育への期待に応えるため、6〜12歳の子ども5,185名を代替学習センター(ALC)に通わせています。その半数以上は、まだ学校で勉強をしたことのない子どもたちです。地域参加で運営されるALCでは、正規の学校に上がる準備として、子どもの立場に立った「橋渡し」的な指導を行なっています。

子どもを学校から中退させないための地域ぐるみの試みは、このプロジェクトの重要な取り組みのひとつですがが、これまでのところ限られた成功しか収めていません。この状況を打開して中退者を減らすために、Shikshan Sahyog Kendras(教育サポートセンター)を実験的に開設しています。

また、地域における女性の地位向上に向けた重要なステップとして、5,801名の女性が自助グループ作りに参加しています。2001年4月の時点で、グループ数は438、開かれた銀行口座も427にのぼります。メンバーが、毎月22米セントから1米ドル強のお金を毎月積み立てたおかげで、グループの元金も総計4万2,970米ドルになりました。このお金を、メンバーに低金利で貸し付けることで、地元の貸金業者に頼らなくてすむのです。自助グループはこのほかにも、女性が地域で自信を持って意思決定できる能力を育て、自立を進めるための活動を幅広く行なっています。

BAPプロジェクトがおこなってきたことを、今後いかに持続させるかも重要な課題です。第1期の対象となった150の村では、コミュニティーに主導権を移し、BAPプロジェクトが撤退した後も取り組みを継続させるための戦略が展開中です。その一環として、自助グループは「子どもにやさしい村作りのための12の約束」を採択しています。

BAPプロジェクトが成績をあげ、また好ましい影響を与えていることに刺激を受けて、政府およびその他の援助機関も、児童労働の問題の解決と予防に向けて、BAPプロジェクトと同じようにコミュニティー主体のアプローチを採用しつつあります。

さらに詳しく知りたい方は下記をクリック

■ じゅうたん製造地帯と児童労働について
■児童労働を生み出す要因について
■BAPプロジェクト(2000年5月〜2001年4月)の報告
■前進を続ける——コミュニティー主導への移行

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