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マリ:栄養不良の子どもを守る
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欧州委員会人道援助局(以下、ECHO)とユニセフは共同で、栄養不良の子どもへの治療と栄養価の高い食事の提供のために、地域社会を支援しています。
© UNICEF Video |
保健員が栄養不良の検査のため子どもの二の腕を測る様子。 |
2歳のソゴナちゃんは、マラリアによる高熱で命拾いしました。「お祈りに行くモスクに医者が来ると聞き、熱のあった娘を連れていきました。その時に、娘が栄養不良であることも分かりました。」と母親のアミナタさんは語ります。
首都バマコから35キロ離れたバンコクルには、医療関係者が定期的に診察に訪れ、集団健診で子どもたちの栄養状態を確認するほか、食事に関するアドバイス、母親向けに調理を交えた栄養指導も行います。この診察は、ユニセフのパートナーである国際救援委員会(IRC)からの保健普及員と、ECHOからの資金によって行われています。
ユニセフはECHOの資金で薬や治療食を購入し、マリ南部で必要な人や地域に届けています。また、緊急時に重症の子どもとその母親を搬送する救急車も支援を受けて配備しています。
マリは、急性栄養不良の発症率が高く、特にバンコクルがあるクリコロ県の状況は最も厳しい場所の一つです。
診察日、午前中には母親向けの調理実習が行われ、“ラロ”というお粥のレシピが紹介されました。ラロは、魚かピーナツをメインに、エネルギーとなるようトウモロコシか小麦粉を加え、玉ねぎ、トマトや塩などの、地元で手に入りやすく、欠かせない材料を使っています。いくつもの食材がバランスよく使われており、栄養価の高いレシピです。自宅に持ち帰りができるよう、大量のラロを調理しました。
続いて、集団健診で、子どもたちの体重、身長、二の腕の太さを測ります。二の腕の太さは、子どもの栄養状態を示します。ユニセフ・マリ事務所栄養担当官のテオファネ・トラオレは、緑・黄色・赤の3色に色分けされたメジャーを使って、ソゴナちゃんの腕の太さを測りました。11センチメートル、非常に危険な状態であることを示す赤でした。210人の子どもを調べた結果、21人が12.5センチメートル以下、うち7人が、11.5センチメートル以下でした。重度の急性栄養不良で、すぐに治療が必要と判断されました。
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栄養治療食のプランピー・ナッツ®を食べる子どもたち。 |
翌日、ソゴナちゃんの父親は妻と娘を21キロ離れた保健所に連れて行きました。母親のアミナタさんは「体重を測った後、マラリアの薬と“プランピー・ナッツ®”を渡されました。ここに来た母親たちにも、石けんが配られ、プランピー・ナッツ®を子どもたちに食べさせる前に手を洗うように指導されました」と語りました。
トラオレ担当官は、ソゴナちゃんは回復すると考えています。ソゴナちゃんはマラリアにかかり、体重は8.5キロ、二の腕は11センチメートルしかありませんが、食欲検査によく反応していました。「食欲検査とは、治療食を子どもたちに与え、それを食べる姿を観察することです。45分以内に食べ終わることが出来れば、一般的に外来診療で治療を続けることに問題はありません。ソゴナちゃんは、必要な薬と一日三回分のプランピー・ナッツ®を持って、帰宅できます。彼女が健康的に体重を増やすことが出来るように、一週間後、もう一度保健センターに連れてきてもらいたいです」とトラオレ担当官が話します。
他の子どもたちの場合、このようにうまくはいきません。栄養不良が危機的状況にまで達してしまい入院する子どもたちがいます。中には、衰弱症、消耗症とタンパク質が欠如することで発症するクワシオルコル症の子どもたちも含まれています。
1歳のアミナタ・カマラちゃんは、呼吸器感染症に加え、栄養状態の急激な悪化で脂肪、筋肉が落ちる消耗症と診断され、5日前に入院しました。救急車で搬送される前、母親はアドバイスを受け、古くからおこなわれてきた方法(野生の果実を砕いたペーストを子どもの額に塗るという方法)で治そうとしました。入院先では、治療用の栄養ミルクと抗生物質の注射が与えられました。
「安心しました。娘は母乳を飲もうとしませんでした。今、娘は治療を受けられ、私も食事がもらえます。すべてが無料で安心です」と語りました。
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現地で手に入る材料でラロを作る保健員。 |
重度の急性栄養不良に加えて、関連する感染症にもかかっている子どもたちには、二段階の治療が必要だとトラオレ担当官は言います。「例えば、呼吸器感染症の場合は、抗生物質を用いて治療しなければなりません。また、体力をつけてもらい、正常に機能していない代謝を元に戻すために治療用の栄養ミルクも必要となります。これらの治療を経て初めて、プランピー・ナッツ®を徐々に取り入れながら、体重を増やせるようになるのです」と説明します。
栄養不良には、3つの主な原因があげられます。まず、食糧を安定的に確保できないこと、続いて保健サービスを利用しにくいこと、最後に生後6カ月間は母乳を与えないといった誤った習慣です。こうした原因は、貧困や気候に根付いたもので、解決するのは容易なことではありません。しかし、私たちには、子どもたちの可能性を広げるための最良の方法を母親たちに教えることができます。
バンコクルに戻り、ソゴナちゃん一家は、栄養のとれる食生活を始めようとしています。ソゴナちゃんの母親は、「これまでほかの料理を作っていましたが、娘が二度と栄養不良で苦しむことがないよう、これからはラロを作ります」と話しました。
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