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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたちは今

ソロモン諸島:
集中豪雨で5万人以上が被災
濁流から生き延びた、8歳の男の子

【2014年4月8日 ソロモン諸島】

アイザイア・アンドリューくん8歳
© UNICEF Pacific/2014/ATahu
洪水の被害にあったアイザイア・アンドリューくん8歳

アイザイア・アンドリューくん(8歳)は、何百もの家を押し流し、甚大な被害をもたらした鉄砲水から生き延びた、おそらく最も幼い生存者のひとりです。4月7日時点で17人が死亡、30人が行方不明、推定1万2,000人が家を失いました。

アイザイアくんは両親と一緒にチョイスル州のワギナ島で生活しています。1週間の学校の休みを利用して、いつものように離れて暮らす姉に会うためホニアラ島にやって来ました。洪水の1週間前のことでした。楽しいはずの休みが、一生忘れることのできない辛い記憶になるとは、その時は誰も知る由はありませんでした。

一瞬の出来事、突然押し寄せた鉄砲水

アイザイアくんのお姉さんは、マタニカウ川を3、4キロ上流に上ったところで、夫の家族とともに暮らしています。4月3日木曜日の午後、アイザイアくんは家の近くの川のほとりで、川に設置されたはしごに座っていました。その時、突然川の水が急増したのです。

「川の水がみるみるうちに増えて、とても驚きました。家の周りに水が押し寄せてきて、流れてきた金属や瓦礫で溢れかえっていました。どこにも逃げることができませんでした」

アイザイアくんは、救助された今も、ショック状態が続いています。 すべての出来事が一瞬のことで、気が付くとココナッツの木の幹に必死につかまっていたとアイザイアくんが語ります。

「ココナッツの木に、必死につかまりました。でも川の水の勢いがとても強く、流されてくる金属や草、泥、プラスチックがぶつかってきました。お姉ちゃんの家が崩れていくのが見えました。家が僕のほうに倒れてきそうだったので、ココナッツの木から手を離すしかなかったのです」

数メートル離れた高台で暮らす住民は、アイザイアくんを救けようと試みました。しかし、鉄砲水はあまりにも急に押し寄せ、水面も急上昇したため、救出することはできませんでした。

「なす術もなく、立ち尽くすしかありませんでした。そして、最悪の出来事が起こりました。その男の子はココナッツの木から手を離し、濁流の流れの中に消えてしまいました」

あきらめずに泳ぎ続けた

洪水の被害にあった家
© UNICEF Pacific/2014/ATahu
アイザイアくんの姉の家。洪水で流され、セメントの基礎部のみが残った。

アイザイアくんは濁流にのみこまれ、人生で初めて無力、孤独、不安を感じたと語っています。

「ずっと、お父さんとお母さんのことを考えていました。だからこそ、再び力が湧いたのです」

アイザイアくんは心を強く持ち、流れに逆らうのではなく、流れとともにできる限りの力で泳ぐことにしたのです。3、4回深く息を吸って、荒れ狂う川に潜り、押し流されてくる瓦礫のなかを泳ぎ続けました。

「心の中で、『止まってはだめだ、泳ぎ続けるんだ』と自分に言い続けました」

アイザイアくんが息をするために水面にあがったときには、川の水位は古い橋を水没させるほど上昇していました。

「古い橋が目の前に迫っていました。迷わず川に潜りました。そうしていなかったら、橋にそのままぶつかって、命はなかったと思います」

流れは激しく、勢いを増していました。次に息をしようと水面に上がると、別の橋の下にいました。アイザイアくんは流れてきた丸太まで泳いでしがみつき、海まで流されていきました。

「振り返ると、ホニアラ島の両端のホワイトリバーもルンガも見えました。僕は、あきらめないで生き延びようと思いました」

家族を失い、悲しみに沈む

丸太の上で何時間も漂った後、アイザイアくんは漁船に救助されました。そして後に、アイザイアくんは3人の幼い姪と甥、祖父が依然として行方不明だと知らされました。

そして今日、3人は遺体となって発見されました。家族や友達が追悼し、残された家族を支えるために集まっています。甥や姪が恋しい、自分の命と引き換えに助けてあげたいと、アイザイアくんが語っていました。

近代的な建築方法で建てられたアイザイアくんの姉の家は、セメントで作られた基礎以外、すべて流されてしまいました。今は親せきの家に身を寄せています。 政府の環境・気候変動・災害対策・気象省は、ガダルカナル島全土とホニアラに被災地域宣言を出しました。避難所では食糧や防水服、調理器具が緊急に必要とされており、現在も救助活動が行われています。

2014年4月3日から5日にかけて発生した洪水で、2万4,000人の子どもを含む5万人以上の住民が被災しています。被災した住民の差し迫ったニーズに対応するため、ユニセフはソロモン諸島政府を支援しています。1万2,000人が避難所に身を寄せており、住む場所、食糧、水、清潔な衛生施設、保健ケアとカウンセリングが必要とされています。学校の校舎も被災し、避難所として使用されているため、子どもたちは学校に通うことができていません。ユニセフは可能な限り早く子どもたちが再び学校に通い、日常を取り戻すことができるよう、支援を実施しています。

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