【2017年4月25日 東京発】
日本ユニセフ協会は4月25日(火)、「子どもにやさしいまちづくり事業(Child Friendly Cities & Communities Initiative=CFCI)」に取り組む韓国の地方自治体と、日本の地方自治体との交流会を、ユニセフハウス(東京)で開催。八王子市子どものしあわせ課の中正由紀課長による歓迎の挨拶で始まった本交流会は、子どもの権利を尊重し、子どもの社会参画を推進する子どもにやさしいまちづくり事業について、日韓の自治体の事例発表と、経験や知見に関する情報交換が行われました。
© 日本ユニセフ協会/2017 |
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韓国におけるCFCIのアプローチは2015年に始まりました。今では、韓国の全自治体の約17%にあたる41の自治体が「子どもにやさしいまちづくり事業」に取り組んでおり、2017年4月現在で7つの自治体が「子どもにやさしいまち」と認証されています。
ユニセフ本部が提唱する、「子どもにやさしいまちづくり事業(CFCI)」には、この事業の成立要件として9つの基本的な項目があります。韓国では、この9項目に加え、独自に「子どもの安全」を10番目の項目として設けています。これは、子どもの安全に関する問題が、韓国国内で大きな問題として浮上していることから追加されたものです。
韓国ではCFCIを次のプロセスで進めています。まず始めに、CFCIを促進するための市長会に、CFCIに関心がある各自治体の市長に参加してもらいます。次に、そうした自治体と韓国ユニセフ協会とで覚書を締結します。その後、各自治体が子どもに関する実態調査を実施し、10の基本項目に基づく行動計画を策定します。そして、当該自治体は子どもにやさしいまちの認証の授与を求めて、それらを纏め、必要書類として提出します。韓国ユニセフ協会と外部専門家委員からなる、子どもにやさしいまち事業認証審査委員会が、当該自治体への認証の授与に関しての審査を行います。子どもにやさしいまちの認証が授与されるのに欠けている部分等があれば、是正勧告がなされます。自治体はそうした指摘に沿って是正を加えます。こうした措置を経て、当該自治体へのCFC認証が授与されます。認証期間は4年間です。その期間が経過した自治体は、再び実態調査を行い、新たな行動計画策定等の作業をする必要があります。
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完州(ワンジュ)郡は2016年1月、韓国で2番目に「子どもにやさしいまち」として認証された自治体です。完州郡が目指すのは、「未来の世代である子どもが幸せなまち、子どもが健康で安全で尊重されるまち」です。
農村地域である完州郡は、子どもの遊び場や保育園がなかったので、NPOの予算を使って、民間と協力して子どもの遊び場「シンギバンギ(とても不思議な)遊び場」を作りました。その運営は、地域住民が中心です。子どもたちが遊びたい場所、子どもたちの居場所となるよう、数回のワークショップを通じて子どもたちの意見を取り入れ、この遊び場づくりを行いました。
子どもにやさしいまちは、完成されたものではなく、子どもの権利を守り、地域の住民と一緒につくっていくものなので、これからも官民が協力してこの取り組みを進めていければと考えています。
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ソウル市江東区も、子どもにやさしいまちづくりの10の基本項目に基づく、まちづくりを進めています。子どもに関する実態調査を行った結果、子どもの社会参画と市民権の項目に最も課題があるということが分かりました。そこで、江東区では、子どもたちが社会に参画できる機会づくりの一環として、4つの子ども・青少年の参加機構を設けています。そのうちの一つ、青少年議会は、「私たちの代表は私たちの手で」という合言葉の下、選挙の企画、準備、広報、投票、開票、当選証書の付与まで、子どもたちが主体でおこなうものです。
その他にも、CFCに関する条例の策定、子どもの権利を守るための機関の設立などの取り組みを行っています。また、子ども政策チームの予算を昨年と比べて13倍に増加するなど、「子どもにやさしいまちづくり」事業を精力的に行っています。
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日本でCFCIが始められたのは、川崎市が日本で初めて、「川崎市子どもの権利に関する条例」を制定(2000年)するために作業を行った頃に遡ります。それから20年近くなり、子どものための権利条例あるいは総合条例を制定した地方自治体は40を超えています。
しかし、日本には子どもにやさしいまちづくり事業に関して共通の認証基準、認証の審査機関はなく、この事業の取り組む自治体が各々の方法で子どもにやさしいまちづくり事業を行っています。その為、色々な地方自治体が熱心にこの事業に取り組んでいても、横の連携を持たぬままで行っているのでなかなか広がって行きにくい状況となっています。
少子高齢化と人口減少が急速に進み、保育園や学童保育の「待機児童」や「子どもの貧困」、「格差拡大」、「虐待」等の問題が深刻化する中、地方自治体が、「子ども」や「子育て」に関わる施策を以前よりも重視する状況が広がっており、既にCFCIの実践を試みている地方自治体からは、かねてより、日本ユニセフ協会に、CFCIの日本国内での推進にも指導的役割を担って欲しいと望む声が上がっていました。そこで、日本ユニセフ協会は地方自治体、学識経験者、NPO関係者等出来るだけ多くのアクターに参加してもらい、CFCI作業部会を昨年11月に設立し、ユニセフが2004年に発表した「子どもにやさしいまちづくり-行動のための枠組み」にある9つの基本項目や、本年3月に完成した「子どもにやさしいまちづくり事業ツールキット」を参考に日本型CFCIモデルを構築する事業に取り掛かかりました。これにより日本でのCFCIに取り組む地方自治体の横の連携が促進され、子どもたちの健やかな成長に寄与するものと期待されています。
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東京都世田谷区は、区の人口が増加し続けており、特に乳幼児・小学生の人数の増加が著しくなっています。認可保育園の申込者数も年々増加しており、昨年3月の申込者数は10年前と比較すると2.5倍に上ります。そこで区は、認可保育園の新設を中心に整備を進め、2015年度は1,259名分の定員拡大を行うなど、保育のニーズに応えようと取り組みを進めています。
また、国の「子どもの権利条約」の批准・発効を背景に、子どもの問題に対する区民の関心を高めるとともに、「子育てを地域社会全体で支える」という社会合意を形づくる仕組みづくりのため、子ども条例の策定に向けた議論を進め、2002年4月に「子ども条例」を施行しました。また2014年には、子どもの人権擁護機関として「せたホット」を設置しました。
その他にも、区民が参加できる子育てメッセや、発達障害児支援、子どもの貧困対策など、「子どもがいきいきわくわく育つまち」をつくるための具体的な取り組みを行っています。
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「子どもが住み続けたいまち」を目指している町田市では、2017年からの5カ年計画の一環として、「将来を担う人が育つまちをつくる」という基本目標を掲げています。青少年の健やかな成長を支える環境をつくるために、学童保育クラブの整備、放課後子ども教室の実施等のほか、「子どもの参画」の推進にも取り組んでいます。それは、次代を担う子どもたちが「まちづくり」に主体的に参画し、その意見を反映させることを主旨とし、中長期計画等の策定等の政策決定プロセスにおいて、子どもの意見を聴取する仕組みをつくる、というものです。
子どもの参画の一例として、子どもセンターの取り組みがあります。子どもセンターは、子どもや親が自由に出入りのできる場所で、子ども委員会が苦情処理も含めた主体的な運営を担っています。昨年12月には、「2030年の未来に向けたワークショップ」を開催し、その様子は市の広報誌でも取り上げられました。そして、2017年度中には、「市長と語る会 in 子どもセンター(高校生version)」の開催を予定しています。
昭和薬科大学の吉永真理教授が司会進行を務めたフリーディスカッションでは、日韓の自治体からそれぞれ4名が登壇し、互いに質疑応答と経験の共有を行いました。下記はその一部です。
© 日本ユニセフ協会/2017 |
韓国ユニセフ協会が自治体へのCFC認証を始めた時、自治体側ではどのような対応をしましたか?(日本の自治体→韓国の自治体への質問)
ユニセフは「子どもにやさしいまちづくり事業(Child Friendly Cities & Communities Initiative=CFCI)」を提唱してから20年目となる昨年より、この事業の世界中でのさらなる推進に取り組んでいます。これを受け、日本ユニセフ協会でも、子どもの貧困など喫緊の問題への取り組みはもとより、すべての子どもの健やかな成長を図るため、地方自治体の皆様とこの活動に関する情報や課題を共有する「子どもにやさしいまちづくり連絡会」を立ち上げ、日本型CFCIの推進を図っております。
詳しくは、子どもにやさしいまち事業(CFC) 特設ページをご覧ください。
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