2024年8月14日東京発
アフリカ教育支援にご協力をいただく毎月の募金プログラム「ユニセフ・マンスリーサポート・プログラム スクール・フォー・アフリカ」を通じた日本の皆さまからのご寄付は、特に困難な状況にある子どもたちが質の高い教育を受けられるよう、アフリカ西部ブルキナファソと南東部モザンビークの子どもたちのために、大切に活用されています。
2024年6月26日、ユニセフハウスにおいて、ユニセフ西部・中部アフリカ地域事務所の渋谷朋子 地域教育アドバイザーが、アフリカの状況やブルキナファソとモザンビークの子どもたちへの教育支援について報告しました。
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報告会概要
西部・中部アフリカの子どもたちの状況
現在、アフリカの子ども人口は、1999年と比べて約3倍の5億7,500万人以上に上り、今の増加傾向が続くと2050年には世界の子ども人口の40%を占めるようになると予測されています。ユニセフ西部・中部アフリカ地域事務所は、セネガルを拠点にブルキナファソを含む24カ国を支援しており、対象地域の子どもの数は世界の子ども人口のおよそ12%を占めます。以下の指標が示す通り、同地域の子どもたちの権利は、教育を含む様々な分野において十分に守られていません。
スクール・フォー・アフリカとは?
教育は、貧困や飢餓から抜け出す手段となり、子どもたちが健康に成長することを促すとともに、暴力や虐待の被害者になるリスクを回避することを可能にします。そして、子どもたちが自身の力で未来を切り開く大きな力にもなります。
ユニセフは2004年、ネルソン・マンデラ*財団とピーター・クラマー*財団とともに、「アフリカの、そして世界中のあらゆる子どもたちへの教育が阻まれてはいけない。私達は必ずこの目標を達成する」との理念のもと、特に就学状況の厳しいアフリカの子どもたちへ集中的に教育支援を行うためのプロジェクト「スクール・フォー・アフリカ」を立ち上げました。
世界の皆さまからのご寄付により、ユニセフは「スクール・フォー・アフリカ」を通じて、これまでに約20カ国で3,000万人以上の子どもたちに教育支援を届けてきました。
しかしながら、未だにサハラ以南のアフリカでは子どもたちの5人に1人が小学校に通えておらず、特に10歳の子どもたちの半分は、就学後も十分な習熟度に達していません。また、世界の他の地域では学校に通えない子どもの数が減少しているにもかかわらず、サハラ以南のアフリカでは人口増加に加えて、新型コロナウイルス感染症や紛争の影響により、その数は依然増加傾向にあります。
*ネルソン・マンデラ氏:元南アフリカ大統領
*ピーター・クラマー氏:ドイツの実業家
ブルキナファソとモザンビークってどんな国?
ブルキナファソ
アフリカ西部に位置するブルキナファソは1960年にフランスから独立し、60以上の部族で構成されています。公用語はフランス語ですが、様々な現地語(モシ語、ディウラ語、グルマンチェ語など)が使われています。宗教的にはイスラム教徒が人口の約50%、キリスト教徒が約10%を占め、その他の伝統的な宗教も多数信仰されています。主な農作物は綿や落花生などで、石けんや金も貴重な収入源です。
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モザンビーク
モザンビークは1975年にポルトガルから独立したアフリカ南東部の国で、公用語はポルトガルですが、8つ以上の現地語があります。主に11の民族から構成され、宗教的にはキリスト教徒が人口の約40%、イスラム教徒が約20%を占め、その他の伝統的な宗教も多数、信仰されています。主要産業は農業と漁業で、主な農水産物であるエビ、カシューナッツ、綿に加えて、鉱物資源も豊富です。
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初等教育の修了率においては、ブルキナファソではこれまでの支援の結果、女の子の修了率が62.1%と、男の子の58.4%を上回っています。一方、モザンビークでは男の子と女の子の修了率はそれぞれ51.4%、47.8%と、男女間の教育格差の解消が必要です。また農村部の貧困層における修了率は、ブルキナファソとモザンビークそれぞれ37.8%と4.6%と非常に低く、両国での大きな課題となっています。
ユニセフによる支援の内容と成果
現在、日本の皆さまからのご寄付のもと、ブルキナファソでは5つの地方(サヘル、中北部、東部、北部、ブクル・デュ・ムウン)において、またモザンビークでは2つの州(ナンプラ、ソファラ)において、主に就学前教育と初等教育における支援を実施しています。教育機会の拡大に加えて、初等教育では質の向上、学校設備の整備、制度の強化にも取り組んでいます。
これまでに皆さまのご寄付で実現した支援についてご報告いたします。
ブルキナファソ(2023年支援)
●就学前教育の提供
- 地域の幼稚園20園を立ち上げ、3~5歳までの子どもたち1,000人に就学前教育を提供しました。
●初等教育の機会の拡大
- 子どもたちが教育の機会から取り残されないよう、2023年に「学校へ戻ろう」キャンペーンを実施し、1万5,000個の学習キットを調達・配布。また、2024年の展開に向けて物資調達を準備しています。
- 学校に通っていない子どもたちが基礎的な学習スキルを身につけ、学力に適した学年に就学できるように、また、中退した子どもたちが再度教育の機会を持てるように、勉強の遅れを取り戻すための補習教育プログラムを実施。1万5,823人の子どもたちが同プログラムを受講しました。
- 治安の悪化により国内避難民が多い地域では、短期集中型の授業を実施するために学習センター30カ所を開設しました。
- 障がいのある子ども322人の就学を支援しました。
●初等教育の質の向上
- 小学校355校の教員1,415人が、「子どもにやさしい学校」モデル導入校の拡大と、「セーフスクール(安全な学校)」プログラムのさらなる展開を目的に研修を受講。平和構築の研修も開始しています。
- 355校に学校クラブを設立し、児童17万1,463人が参加できるようになりました。
●中等教育年齢にある子どもたちへの支援
- 経済的に困窮している女の子150人が中等教育や職業訓練を続けられるよう奨学金を支給し、また、学校に通っていない若者300人に職業訓練を実施しました。
モザンビーク(2020~2023年)
●就学前教育の提供
- 子ども約2万人が短期集中就学準備プログラムに参加。プログラム修了後、参加したすべての子どもたちが小学校に入学できました。また、プログラムに参加した子ども2万人の保護者が、就学前の準備の重要性と乳幼児期の脳の発達に関する知識に加えて、基本的な算数や言葉の教え方を学べる子育て教育を受講しました。
●初等教育の機会の拡大
- 学校運営委員会のメンバー約4,000人が、地域の子どもたちに学校に通ってもらうための方法に関する研修を、また、教員95人が障がいのある子どもを支えるインクルーシブ教育*の研修を受講しました。
- ナンプラ州とソファラ州で、給水所36カ所と手洗い場を備えたトイレ15個を建設。ソファラ州では10の教室を建設中です。
- 2023年2月に発生したサイクロン・フレディで被災した子どもたちに、学習キット2,200個を配布し、学習スペース20 棟を建設しました。
*インクルーシブ教育:障がいの有無にかかわらず、すべての子どもを受け入れる教育
●初等教育の質の向上
- 教員約350人が読み書き・計算における指導力向上を目的とした研修を受講しました。
- 小学校の児童約8万3,450人が、子どもの権利に関する知識とライフスキル*を身につけるための学校クラブの活動に参加しました。クラブ活動は、子どもたちがより活発に、楽しく学校生活を送るための手助けにもなります。
*ライフスキル:日常生活に生じる様々な問題や要求に対して、建設的かつ効果的に対処するために必要な力
●初等教育のシステム強化
- 学校運営を円滑に行い、抱えている課題を解決できるように、校長先生190人を対象とした研修を実施しました。また、より効果的で適切な監督指導ができるよう、地区教育委員21人への研修も実施しました。
※ユニセフ・ブルキナファソ事務所:1981年に設立され、本部を首都ワガドゥグに、現場事務所を3カ所に構える。
※ユニセフ・モザンビーク事務所:1975年に設立され、本部を首都マプトに、現場事務所を4カ所に構える。
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ユニセフは、今後も皆さまからのご寄付のもと、ブルキナファソとモザンビークの子どもたちのために教育支援を継続していきます。引き続き「ユニセフ・マンスリーサポート・プログラム スクール・フォー・アフリカ」を通じてあたたかいご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
渋谷朋子
東京都出身。日本の英字新聞記者を経て、青年海外協力隊員として1999年にガーナの村の学校に赴任。以後、25年間アフリカの教育開発に携わる。ユニセフには2005年にブルンジ事務所に教育担当官として赴任して以来、モザンビーク事務所の教育専門官、ギニアビサウ事務所、ブルキナファソ事務所、ニジェール事務所、モザンビーク事務所の教育プログラム・チーフを務める。2023年8月より、西部・中部アフリカ地域事務所で地域教育アドバイザーとして勤務。
*渋谷地域教育アドバイザーは、ユニセフ・ブルキナファソ事務所で教育プログラム・チーフを務めていた2015年、2016年、2017年にも、同国の子どもたちの状況やユニセフの教育支援について報告しました。こちらのページ下部にある「スクール・フォー・アフリカ報告会」欄をご覧ください。