【2019年10月7日 東京発】
©日本ユニセフ協会/2019 |
日本ユニセフ協会は8月23日(金)、文部科学省や厚労省社会保障審議会児童福祉文化財に選定された映画『ちいさな哲学者たち』の上映会を、東京都港区のユニセフハウスで開催しました。
子どもの権利条約が国連で採択されてから30年を迎える今年、日本ユニセフ協会は「子ども」を主題にした映画13作品を5月から12月にかけて連続上映する、ユニセフ・シアター・シリーズ「子どもたちの世界」と題したイベントを開催しています。第6回目となる今回は、フランスにある幼稚園で3歳からの2年間、哲学の授業を設けるという画期的な取り組みが行われている様子をドキュメンタリーにした作品『ちいさな哲学者たち』を上映しました。
上映後には、開智日本橋学園中学・高等学校の土屋陽介先生から、日本における子どもの哲学の現状をご紹介いただいたうえで、哲学対話ミニ実践の参加型セッションを行いました。
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『ちいさな哲学者たち』は、パリ近郊のZEP(教育優先地区)にあるジャック・プレヴェール幼稚園での2年間の哲学の授業を記録した、ドキュメンタリー映画です。
ZEP(教育優先地区)とは、親が失業していたり生活保護を受けていたり、貧しいひとり親世帯が多く住んでいたりする、社会的・経済的に恵まれていない地域。移民が多く住む地域でもあり、この地区内の学校は行政による財政面・教育面の特別な支援を受けています。
ジャック・プレヴェール幼稚園に通う子どもたちの背景は様々。フランス語で思考し表現するという訓練としても適していると判断し、「哲学」の授業を取り入れているといいます。
哲学の疑問を使って、子どもたちと一緒に考える練習をするという教育は1970年くらいから世界中で授業が行われています。Philosophy for Children (P4C)、またはPhilosophy with Children (PWC)と呼ばれます。「子どもの哲学」の創始者は、アメリカの哲学者マシュー・リップマン。ベトナム戦争の際に若者たちが過激化してしまったり、対話のことばを持っていないことに危機感を抱いて、小学校教育から取り組みをおこなう必要性を感じたことから始めたプログラムだといいます。これは、哲学の知恵・理論や哲学者の考えを子どもに教える教育(teaching philosophy)ではなく、子どもと一緒に、ひとつの答えが見つからないような哲学の疑問について考え、対話を通して子どもと一緒に哲学をするという教育手法です。
現在は、アメリカだけでなく世界各地で取り組まれています。例えばコロンビアでは、子どもに対する暴力における回復の過程で、哲学対話を応用した対話の手法を取り入れたりもしています。この10年の間にも、日本を含む各国で導入が進められています。
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中学校では、クラス全員で円になって話をしたり、グループに分かれて話をしています。例えば、中学2年生の授業で「人気とは何だろうか?」という対話をしました。中学3年生では、動物園など動物の倫理について話した回もありました。また、中学1年生では、「ロボットに心はできるのか?」という問いに取り組みました。
哲学対話というのは、このように生徒たちが自分たち自身で考えた「問い」で、普段はあまり考えないけれど、よくよく考えてみると不思議で常識がゆさぶられるような哲学的な「疑問」について、全員で話しながらゆっくり、じっくりと考えを深めていく対話の時間(授業)をいいます。“考えを深める”ことを一番の目的とした対話なのです。
◇子どもの哲学(哲学対話)では次のことはしません
・結論を出したり、答えを一つにまとめたりはしません
・相手を打ち負かすために、問い詰めたり論破したりはしません
・お互いの意見や考えをただ交換しあうだけでは終わりません
・発言を強制したりはしません
◇“5つの心得”
・手をあげて話すことよりも、よく考えることを大事にしよう
・真剣に考えたことであれば、ほかの人を傷つける発言でないかぎり、どんなことでも自由に話してよい
・わからないときは恥ずかしがらずに「わからない」と言おう
・「意見」よりも「質問」を大事にしよう
・沈黙は気にしない
・相手の話をよく聞こう
相手の考えをいかして自分の考えを深められるように。教室にいる全員が安心して自分の考えを話せるように
哲学対話によって、多様性のある子どもたち一人ひとりが安心して学び、考えられる学校づくりに結びつくと考えます。
今回は、ユニセフ・シアター・シリーズ初となる参加型セッション(グループワーク)を実施。ご来場の皆さまに選んでいただいた問い「しあわせっておもうのはどんなとき?」について、発表者の方が意見を言い、周りの方が質問をしていく「質問ゲーム」を行いました。
会場はにぎやかな会話であふれ、ご参加いただいた皆さまからもご感想をいただきました。
土屋先生の発表資料はこちらからご覧いただけます。
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子どもたちの成長する姿を描いた本作品についても、多くのお声を頂戴しました。
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子どもの権利条約が採択されてから30年を迎えるにあたり、「子ども」を主題とした作品を5月~12月にかけて毎月連続で上映する日本ユニセフ協会主催の映画上映会です。「子どもたちの世界」を基調テーマに、「そもそも子どもとは?」「それでも生きていく子どもたち」「子どもを取り巻く世界」「女の子・女性の権利」という4つの視点から選んだドキュメンタリーとフィクション計13作品を上映します。
※参加申込や今後の上映予定についてはこちら
監督:ジャン・ピエール・ポッジ、ピエール・バルジェ
配給:ファントムフィルム
2010年 / 102分/ フランス
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