スタディツアー視察報告
カンボジア スタディツアー報告 (2007年7月22日〜29日実施)
3. 「セッコマー(子どもの権利)」事業の視察—日本の学校の子どもたちが支援する指定募金事業
今回のツアーで視察した3つの「セッコマー」事業をご紹介します。「コミュニティ幼稚園」、「保健センター」、「村の人々が主導的に取り組む水と衛生」です。日本ユニセフ協会学校事業部は、さまざまな取り組みが行われている「セッコマー」事業の中で、「コミュニティ幼稚園」などを支援しています。
(3-1)コミュニティ幼稚園
「コミュニティ幼稚園」は、農村の子どもたちの小学校就学前の教育です。 すべての子どもが小学校へ入学し、卒業することにつなげる取り組みです。幼稚園でいろいろなことを学んだり体験することで、小学校での学習や生活に早く慣れ、中途退学が減るという成果が出ているからです。
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青空幼稚園の学習(トゥベンコール村) |
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夢中で勉強 |
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幼稚園は週5日、朝7時〜9時に行われます。研修を受けたボランティアの先生が授業を行います。出席率は平均して約60%。20名くらいの子どもが通ってきています。
私たちはコンポントム州トゥベンコール村で青空教室の幼稚園を、同州サンコールコール村でユニセフが支援する園舎(カンボジアの伝統的な建築様式を活かしたつくり)で行われている幼稚園を訪問しました。
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小さな貝を使い文字の学習※ |
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幼稚園の園舎(サンコールコール村) |
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※小さな貝を使い文字の練習:日本で見かけるしじみのような小さな貝に色を塗り、クメール文字の上に並べて文字の練習をする。
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歌って踊る子どもたち |
見学した感想は、「幼稚園の授業は有意義で、とても楽しい!」ということです。 踊りながら歌を歌う。次にクメール語の文字を学ぶ。次に数字を学ぶ。子どもたちが飽きないように、テンポよく内容を変えて楽しく授業が進められていくので子どもたちは夢中になっています。 まわりで親たちも楽しそうに見学しています。視察する私たちも思わず引き込まれて、子どもたちと一緒に文字の発音練習をしてしまいました。 歌は、生活習慣や自然についての内容で、学習に結びついています。踊りはリズミカルに体を動かす訓練です。先生の話をしっかり聞き、積極的に答える。文字からさまざまな知識を覚える。数字を覚える。仲間と仲良くする。
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楽しそうに見ている親たち |
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質問に答えてくれた親子 |
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コミュニティ幼稚園で学ぶこと、体験するさまざまなことは小学校での学習や生活に早く慣れるために、とても大事だと実感しました。
(3-2)保健センター
お母さんと子どもの命を守り、子どもが健やかに発育するための活動が保健センターで行われています。
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母親と子どもたち |
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発育観察ノートに記録 |
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訪問したプレイベン州プレイスバイ村の保健センターは、17村、約1万4700人の村の人々の病気の予防や健康を守る活動を行っています。 具体的には、子どもの発育観察、予防接種、ビタミンA補給、妊産婦ケア、流行している病気に対する注意喚起などです。安全な水や、衛生的な施設が整っていない地域のため下痢をする子どもが多く、ORS(経口補水塩)の使い方指導も行っています。
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予防接種を受ける子ども |
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ワクチンを保冷するボックス |
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保健センターには7名の職員がおり、いつも2グループに分かれて活動しています。保健センターは無料で利用することができます。
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布のポスター |
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下痢を改善するORS |
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デング熱の注意喚起チラシ |
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(3-3)村の人々が主導的に取り組む水と衛生の改善
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村の様子 |
子どもたちが清潔な生活を送ることは、健康を守るための基本です。
訪問したコンポントム州ロピークペン村は、昔、「水がない場所」といわれていたほど、水に苦労してきた村でした。
2006年5月から、この村で「コミュニティ主導の衛生プログラム」が始まりました。 このプログラムの目的は「村の人々が学び、理解して、自分たちで習慣を変え、生活を改善していく」ということです。
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水浴びをする子どもたち |
2007年6月、村にユニセフ支援の井戸がつくられました。村の代表者5人が井戸の管理を行い、壊れた時には村人がお金を出し合って修理をすることになっています。
手押しのポンプは子どもでも安全に使用できます。訪問したのは非常に暑い午後でしたが、子どもたちが水浴びをしていました。
「水が使えてどうですか?」と質問すると、「サバーイ!(楽しい。気持ちよいの意味)」と笑顔いっぱいに答えてくれました。
しかし、村には以前から使用している浅井戸が多くあります。浅井戸は水が不衛生で、乾季には枯れてしまうこともあり、これからの改善課題です。
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衛生について学ぶ教材 |
衛生についても5人の代表者を選び、その人たちが中心になって活動を進めています。長年続いてきた習慣を変えることは容易なことではありません。衛生について理解をするために、数家族ごとの少人数で教材を使って衛生知識を学んでいきます。学習した村人たちは、衛生的なトイレづくりに取り組むことを約束し、そのあと、きちんと実行しているかどうかがモニタリングされます。
実際に衛生的なトイレを使うと下痢や腹痛などの病気が改善されるため、成果を実感できます。この成果や実感を基盤にしてさらに普及を進めていきます。
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