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2003年世界子供白書
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ユニセフ事務局長キャロル・ベラミー 「2003年世界子供白書」発行にあたり2002年12月11日 メキシコ・シティ |
ユニセフにとって最も重要な日のひとつ、2002年12月11日に「世界子供白書」−子どもの権利に関する重要な成果に関する報告書−の発行を、ここメキシコ・シティで迎えることができ非常に光栄です。ここラテンアメリカは、「世界子供白書」発行を発表するにふさわしい場所です。なぜなら、メキシコをはじめラテンアメリカのすべての地域の指導者が、平和な世界と正義という夢が、子どもの権利の実現により始まることを、言葉だけでなく行動で示してきたからです。
もし私たちが社会の様々な分野で広く子どもの権利を認めることができるならば——もし私たちが国連ミレニアム開発目標に具現化された民主的な理想を推進し、紛争に傷ついた社会を癒すことができるならば——そして、もし私たちが「子どもにふさわしい社会」を築きあげることができるならば——。それは、私たちが子どもと若者の声に耳を傾けることができて初めて実現することです。
なぜそう言えるのでしょうか。「2003年世界子供白書」では、次の3つのポイントをあげています。
ここで明らかにしなければならないのは、子どもに対する責任の大部分はおとなにあるということです。私たちには、子どもたちの見解や意見を聞き、真剣に取り上げる義務があります。そして、子どもや若者たちが正統かつ意義ある参加を実現するためのスキルを身につけていく手助けをする義務があるのです。
私が今日、ここに紹介する「2003年世界子供白書」は、そうしたおとなの義務に目を向けています。子ども参加については、急速に理解が進んでいます。1989年に成立した子どもの権利条約から生まれたこの発想は、子どもが自由に意見表明する権利、そして子どもの健康や福祉に影響を及ぼす意思決定に子ども自身が参加する権利を保障するものです。
ここメキシコでは、1997年、子ども参加が目に見えるかたちで実現しました。連邦選挙機関(IFE)とユニセフが組織し、約370万人の子どもたちが参加して、子どもの権利条約の中のどの権利がもっとも重要かを投票しました。その結果、教育を受ける権利がトップとなり、次いできれいで持続可能な環境への権利、暴力から解放される権利などが続きました。2000年には、IFEとメキシコ中の様々な団体から集まった6万人のボランティアが子どものコンスルタ(Consulta)を組織し、約400万人の子どもが投票によって、暴力と差別を非難し、おとなが子どもに尊厳もって接し、社会参加の場を創り出すよう求めました。
にもかかわらず、いまだに多くのおとなが、子ども参加とはおとなの意思決定権を未熟な子どもに手放すことだと誤解しています。しかし、子どもの権利条約は、子どもたちは成長に伴いその能力に見合った責任を与えられるべきだと、明確に述べています。つまり、多くの場合、子どもの「最善の利益」を考えて、おとなが最終的な決断を下す必要があるのです。
ユニセフは、これまでの活動の経験から、子どもや若者の参加が、社会変革のために必要な大きな力となりうることを知っています。コロンビアの子どもたちによる平和運動。アパルトヘイト撤廃に貢献した南アフリカの若者たち。戦争やHIV/エイズに反対するルワンダの子どもたち。——子ども参加は世界に大きな影響を与え始めています。
同時に、こうした子ども参加の具体的な事例は、世界がまだ公正ではないことを教えてくれます。「2003年世界子供白書」にある統計資料は、私たちが改善しなければならないことを示しています。ユニセフは、不公平な世界を是正するために、子どもたちが私たちに大きな刺激を与えることができると信じています。子どもたちは慈善の対象ではなく、より良い未来をもたらす源泉であり、理想であり、原動力なのです。
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