|
|
HOME > ニュースバックナンバー2014年 >
|
中央アフリカ共和国:
|
© UNICEF/2014/Jordi Matas |
武装勢力との交渉で重要な役割を担うユニセフ・中央アフリカ事務所スリマン・ディアベット代表。 |
ユニセフ・中央アフリカ共和国事務所では、武装勢力から子どもたちを解放し、社会に復帰させる取り組みに力を入れています。今年だけで、1,000人以上の子ども兵士を武装勢力から解放しました。子ども兵士の解放のためには、長期間にわたり、細心の注意を要する交渉が必要です。それぞれ中央アフリカの別々の地で子ども兵士の解放に向けて尽力する3人のユニセフのスタッフの活動を、ユニセフ・中央アフリカ事務所ジャン・ロケンガ子どもの保護担当チーフとマデリン・ローガン広報官が紹介しています。
* * *
ユニセフ・中央アフリカ事務所代表のスリマン・ディアベットは、旧セレカの戦略コーディネーター代表とバンギで話し合いを行いました。2013年から、ディアベット代表は子ども兵士の解放を求める旧セレカとの交渉で主要な役割を担い、何百人もの子どもたちの解放に貢献してきました。武装勢力の司令官のほとんどが、子ども兵士の解放に消極的です。なぜなら、子どもたちは最も優れた戦力になると考えているからです。そのため、武装勢力を説得するためには、リーダーに対する敬意や私たちは敵ではないということを示し、細心の注意を払って交渉を続けることが必要とされます。
交渉にあたったスタッフが、軍には子どもたちを含め、住民を守る責任があるということを司令官に訴えました(司令官たちは、自分たちは中央アフリカの民衆のヒーローだと考えていることがよくあるからです)。そして、司令官たちと共に、“子ども”の再定義を行いました。多くの人々が子どもは5歳未満だと認識しているため、10代の子どもたちを守ることためにも子どもの年齢の幅を広げ、正しく定義をする必要があるのです。ディアベット代表による交渉の結果、旧セレカは子ども兵士の廃止に向けて取り組むことをユニセフや国連と再び合意しました。
© UNICEF/2014/Jordi Matas |
武装勢力に徴用されていた子どもと、話を聞くスタッフ。 |
同じ日、南西部の町Pissaでは、同僚のサムがアンチバラカと行動を共にしている子どもたちの情報を登録していました。解放に向けた準備を進めるためです。アンチバラカの司令官から部下の子どもたちの情報が申告されました。しかし、子ども兵士の解放にあたっては、申告された 情報に誤りがないことや、実際に武装勢力に徴用されていたことの確認のため、年齢や経緯、武装勢力との関係について子どもたち自身から話を聞 く必要があります。徴用された場所や日時、最近戦闘が行われた場所、最後に両親に会った日など、サムが子どもたちに簡単な質問をしていきます。
その後、訓練を受けたソーシャルワーカーが記入された登録用紙を見て、子どもたちが武装勢力の一員であったのかを判断します。ユニセフの社会復帰プログラムに参加する子どもたちは、職業訓練やその他の必要とされる支援を受けることができます。また、武装勢力に徴用されていなかった子どもたちもプログラムに参加をすることができます。約80%の子どもの情報が偽りのないものだと検証されています。
当初、子ども兵士に関する情報の検証はユニセフのスタッフのみが行っていましたが、武装勢力に徴用されている子どもの増加に伴い(現在武装勢力に徴用されている子どもは8,000人〜1万人)、ソーシャルワーカー70人以上に検証作業手順の訓練を実施しました。
武装勢力と国連の間で交わされた合意の元、現在は子どもたちを徴用したり、解放された子どもを再び受け入れることは禁止されています。
© UNICEF/2014/Jordi Matas |
解放された子どもたちは、再び新しい人生を歩み出す。 |
同じ日、中央アフリカの東部では、同僚のベイノットがユニセフのパートナー団体とトランジット・センター(一時受け入れ所)の設置状況に関するミーティングをしていました。トランジット・センターが設置されれば、この地域で旧セレカから解放された200人以上の元子ども兵士を受け入れることができるようになります。設置作業は順調に進んでおり、解放される予定の多くの子どもたちを受け入れる準備ができていました。
国の東部に位置するこのセンターは、現在中央アフリカで唯一のトランジット・センターです。他の地域では、解放された子どもたちはホストファミリーの下で生活を始めます。バンギのトランジット・センターは、受け入れていた子どもたちが無事、故郷の家族の元に戻った後、閉鎖されています。
トランジット・センターでは、子どもたちが再び人生を立て直し、再び戦闘行為に携わることなく、新しい未来を築いていくための支援が行われています。学校に戻る子どもも、職業訓練を受ける子どももいます。社会への順応度にもよりますが、子どもたちは1〜3カ月トランジット・センターで生活し、授業や心のケアを受けている間、家族の追跡作業が進められます。準備が整い次第、子どもたちは家族と再会することができます。そして再び家族と暮らすことがかなわない子どもは、里親の下で生活を始めます。
家族の捜索・追跡作業はパートナー団体によって行われ、家族や住んでいた場所、避難していた場所について子どもたちに質問をしながら情報を集めていきます。家族が見つかるまでに通常1〜4週間、家族が国境を越えて避難している場合には、それ以上の時間を要します。
子どもたちを武装勢力から解放するプロセスは複雑で、長い時間がかかります。ユニセフは武装勢力の幹部などとのハイレベルの交渉だけでなく、家族や地域の住民と協力しながら子ども兵士の解放や家族の再会に向けた取り組みを進めています。子どもたちが武装勢力から解放され、再び社会に復帰する日を迎えるには、沢山の時間や労力を要します。しかし、国中の人々が子どもたちのために一致団結した時、この国から子ども兵士をなくすことが可能になるのです。