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公益財団法人日本ユニセフ協会

南スーダン:
自宅から避難し、泥水の中で生活する人々
日本人 水と衛生専門官による報告

【2014年9月22日 南スーダン発】

激しい紛争が続く南スーダン。ユニセフ南スーダン・マラカル現地事務所で活動する熊丸 耕志・水と衛生専門官が、現地での活動の様子を報告します。

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© UNICEF South Sudan/2014

マラカルという地での仕事は衝撃的な日々です。目で、耳で、鼻で、五感でその痛烈な環境を感じています。現地の人々は限られた敷地内にひしめき合うように設置されたテントに2家族がひとつのテントを共有し、ひとたび雨が降れば泥沼化し、人々は泥水の中で寝食を営むという本当に厳しい環境下で生活を強いられています。私たちは全力をもって支援に臨み、改善へと向かっていることを肌で確かに感じますが、まだ多くの課題が残されていることも事実です。

南スーダンの三大都市のひとつ、マラカル

今年の6月より、水と衛生専門官としてユニセフで働き始め、世界で最も新しい国、南スーダン北部に位置するマラカル現地事務所に勤めています。南スーダンという国はまだ生まれて3年という新しい国ですが、昨年12月に起こった暴動により数百万という数に及ぶ人々の生活は荒廃しました。私はマラカルの街中ではなく、国連PKOミッションが構えるマラカル郊外の基地に滞在しています。紛争が起こった当時より、この基地内の避難民キャンプに数千数万という人々が安全を求めて逃げ込んできました。現在でも2万人弱の人々がこの避難民キャンプの中で暮らしています。そしてそういった避難民のほとんどは女性や子どもたちばかりなのです。

避難民の方々は安全を求めてキャンプでの生活を営んでいますが、国連基地は元々それほど大規模な数の人々を受け入れる施設ではないため、現在の生活環境は非常に厳しいものがあります。人々は簡易テントでの生活を強いられているため、私たちは日々生活環境の向上に勤めていますが、現在も続く長い南スーダンの雨期は住居環境を水浸しにし、文字通り人々は泥水の中で暮らし、先の見えない環境に疲弊している状況です。

水と衛生と、健康問題

© UNICEF South Sudan/2014

水と衛生専門官として、清潔な水の提供やトイレ施設の設置、排水を含めた生活環境の改善が目下の仕事です。南スーダンの多くの地域に見受けられるように、マラカルは低湿地帯で長期的に続く雨期がその脆弱な生活環境に追い打ちを駆けています。豪雨によりその地盤がゆるみ、雨期に耐えるべく補強されたトイレ施設も氾濫することがあり、キャンプで暮らす人々の健康、そして命をも脅かす危険となります。ちょうど私が南スーダンに赴任した頃から、コレラが南スーダンで大流行の兆しを見せ始めました。

ひしめき合い混雑した住居環境、そして豪雨により未処理の生活廃水が入り交じることは、キャンプでのコレラ大流行を引き起こす可能性に繋がります。ユニセフとパートナー団体は、避難民の方々が毎日清潔な水を利用できる環境を整え、またパートナー団体と共にマラカル避難民の方々への予防接種を行いました。こういった事業はその効果を発揮し、国連基地内では非常に限られたコレラ事例に留めることに現在まで成功しています。

しかし、十二分なワクチン供給ができないため、南スーダンのすべての国民に予防接種を施すことは、現実的に難しいのが現状です。そして、ワォ シュリックというマラカルから僅かに離れた街でのコレラ大流行が発生したのです。この街の人口は元々2,000人弱でしたが、紛争による戦禍を逃れて4万人近くの国内避難民がワォ シュリックに流入しました。

© UNICEF South Sudan/2014

マラカルとワォ シュリックは共に白ナイル川に面していて、人々は白ナイル川の水を飲み水や生活用水として直接利用していました。また、トイレ施設が皆無であったため糞尿が垂れ流しとなり、コレラ菌が川の流れに乗じて被害が拡大する危険がありました。ユニセフとパートナー団体は迅速にその対応に当たっています。私たちはコミュニティーの人々を集め、川の水を浄化する手法をトレーニングし、また石鹸やバケツ、家庭用浄水剤も支給しました。また、公衆衛生の向上を目指して、女性や若者を中心として手洗いの重要性、下痢やコレラを未然に防ぐ衛生環境を家庭レベルで行えるように訓練し、家々を廻ってその普及に努めました。また、パートナー団体との協力により迅速にトイレ施設の建設を進めることができ、結果としてコレラ事例の急激的な減少に繋げることができました。

紛争による子どもたちへの影響

ユニセフ南スーダン・マラカル現地事務所、熊丸 耕志・水と衛生専門官
© UNICEF South Sudan/2014
ユニセフ南スーダン・マラカル現地事務所、熊丸 耕志・水と衛生専門官

私にとっては紛争国、そして緊急支援の仕事は初めてではありません。南スーダンに赴任する前はソマリアで2年間、水と衛生の分野で仕事をしていました。けれども緊急支援を数多く経験する多くの同僚が口を揃えて言うように、現在の南スーダンの状況は、過去の多くの緊急事態を凌駕するものがあります。昨年の12月より170万人を越える人々がその住み慣れた家を、街を追われ、その半数以上が子どもたちです。40万人以上は今も隣国で難民として暮らし、そして130万人に及ぶ人々が南スーダン国内の仮設テントで暮らし、その多くが深刻な食糧難に直面しています。子どもたちは社会的に非常に脆弱な立場に立たされ、数多くの子どもたちがその命を紛争により奪われ、重傷を負い、大切な家族を失い、そして住処を失いました。更に生き延びた子どもたちの多くは少年兵として連れ去られることがあります。ユニセフは子どもたちと女性たちをあらゆる面でサポートし、特に水と衛生分野、そして子どもたちの栄養、健康、保護そして教育に尽力しています。私たち自身もまた困難な環境で仕事をしていますが、私たちは継続してこの支援を続けていく重要性を肌で感じています。

子どもたちの笑顔は、その家族にとって、そして私たちにとってかけがえのない大切な未来であると信じています。日本の皆様によるユニセフへのご寄付、そして日本政府による助成金により、この支援活動は成り立っていると申しても過言ではないほど、多大なご支援をいただいていることに、心より御礼申し上げます。今後も皆様のお力添えにより、女性や子どもたちの心からの笑顔がひとつでも多く宿ることを切に願います。

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