|
|
HOME > ニュースバックナンバー2014年 >
|
パキスタン:ポリオ根絶へ向けて
|
© UNICEF/Pakistan/2014 |
イスラマバードで行われた署名式の様子 |
日本政府は、パキスタンにおけるポリオ根絶活動を支援するため、ユニセフを通じて5億6,200万円の一般プロジェクト無償資金協力を実施することを決定しました。首都イスラマバードで17日、在パキスタン日本大使館、国際協力機構(JICA)およびユニセフによる署名式が行われました。
今回の支援は、2014年12月から2015年11月までの1年間、ユニセフのパキスタンにおけるポリオ根絶に向けた取り組みのために使われます。これを受けてユニセフは、予防接種キャンペーン用の経口ポリオ生ワクチン1,500万回分と、連邦直轄部族地域(FATA)やカラチといったポリオ感染のリスクが高い地域に住む子どもたちに投与される不活化ワクチン130万回分を調達します。このほか、太陽光発電による保冷機材100台をハイバル・パフトゥンハー州とFATAに、停電時でも適切にワクチンを低温で管理できるよう、自家発電機と温度管理システムを中央のワクチン倉庫とハイバル・パフトゥンハー州、バロチスタン州、FATAに配備します。さらに、コールドチェーンの設備や人員体制の改善により、予防接種の実施体制を強化します。
在パキスタン日本大使館の猪俣弘司特命全権大使は、日本政府が1996年から同国におけるポリオ根絶計画を支援していることを改めて強調し、ポリオという予防可能な病の根絶に向けた日本の決意を再確認しました。日本政府による現在までの支援総額は約1億4,900万米ドルに上ります。
パキスタンでは今年に入り、ポリオの症例数が大幅に増加していることから、猪俣大使は同国政府とパートナー機関に対し、根絶活動を阻んでいる複雑な課題の解決に向けて、より一層の努力を行っていくことを呼びかけました。また、ナワズ・シャリフ首相が議長を務めた国家レベルのタスクフォース会合(11月5日開催)にみられる政府の対応を歓迎し、ポリオが根絶される日に向けて共に協力していくことを述べました。
© UNICEF/Pakistan/2014 |
イスラマバードで行われた署名式の様子 |
JICAパキスタン事務所の河崎充良所長は、予防接種プログラムのサービス提供が適切に行われる必要があることを強調したうえで、「今回の支援は、パキスタンにおけるポリオを取り巻く状況への対応が急を要するものであることを示しています。この支援により、2012年6月から予防接種を受けられずにいたFATAの子どもたちに対して、避難先での投与が可能になります。太陽光発電による保冷機材の整備と人員体制の強化は、予防接種活動をさらに効果的なものにします。今回の支援が、パキスタンのポリオ根絶に向けた取り組みを最終段階へと導くことを期待しています」と述べました。
ユニセフ・パキスタン事務所のアンジェラ・カーニー代表は、「今回の日本政府からの支援は、ポリオ感染により手足がまひする子どもの数が増加し、他国への感染拡大の恐れが近年で最も高まっている極めて重要な局面で実施されるものです」と強調しました。
パキスタンは今、ポリオ根絶への道のりにおいて岐路に立っています。国内での感染者数が増加傾向にあるなか、この状況を打開し、ポリオのない世界を実現するため、さらなる協力が求められています。パキスタンにおけるポリオ根絶は、国内だけでなく、世界中のすべての子どもたちにとっても、極めて重要な意味を持っています。
■参考情報
ポリオは、主に5歳未満の幼い子どもが感染します。脊髄の運動神経細胞がポリオ・ウィルスに侵されると、四肢に一生まひが残ったり、延髄から上の神経を侵されたりする恐ろしい病気です。有効な治療法はなく、ワクチンだけが感染を防ぐ唯一の方法です。世界的なポリオ根絶のための取り組みが始まった1988年、野性株のポリオ・ウィルスが常在する国は125カ国以上に及び、患者数は年間で約35万人にも上っていました。しかし、予防接種の強化により、現在、常在国はアフガニスタン、ナイジェリア、パキスタンの3カ国のみに減少。患者数は2013年には416人、今年は279人(11月12日現在)と、1988年比で99%以上減少しています。一方で、パキスタンでは今年に入り患者数が236人に上るなど、予断を許さない状況が続いています。