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公益財団法人日本ユニセフ協会

カンボジア
障がいのある若者たちが制作
1分間のビデオで届けるメッセージ

【2015年7月20日 カンポット(カンボジア)発】

ビデオカメラの使い方を学ぶ聴覚障がいのあるシャロンさん(21歳)。
© UNICEF Cambodia/2015/Sam Waller
ビデオカメラの使い方を学ぶ聴覚障がいのあるシャロンさん(21歳)。

部屋に集まった19人の若者の表情には、興奮と不安が入り混じっていました。今日、生まれて初めてビデオカメラを使う若者たち。21歳のシャロンさんは、「全く初めての経験です。今まで、ビデオカメラを手にしたことさえなかったのですから!」と、ワークショップが始まるのが待ち遠しいとばかりに語ります。

1分間に込めるメッセージ

カンボジア南部にあるユニセフ・カンポット現場事務所が開催したワンミニッツ・ビデオ・ワークショップの初日、この特別なイベントを取材するため、会場に向かいました。1週間以上にわたって行われたこのワークショップでは、参加者の若者たちが絵コンテを作ることから始まり、監督、撮影を自ら行い、1分間の映像で物語を伝える方法を学びました。

このワークショップは、単に映像を制作するという以上の意味を持っています。参加者は全員、ユニセフ・カンボジア事務所のパートナー団体の学生たちです。この団体は、障がいのある子どもや若者を支援し、インクルーシブな(誰もが受け入れられる)アート活動を行っています。参加者の若者たちは、ユニセフと協力してワンミニッツ・ビデオ・プロジェクトを進めるワンミニッツ・ファウンデーションの専門家のガイダンスをもとに、1分間の映像制作を進めていきます。そして、参加者はワークショップを通して新しい技術を学び、チームでお互いに助け合い、彼らの生活にとって大切な、力強いメッセージを伝えることができるようになるのです。

参加者一人ひとりが自分でストーリーを考え、撮影を指揮し、1分間のショート・ムービーを撮影しました。障がいのある若者たちの声が込められたこの作品はYouTubeで配信され、カンボジア国内だけでなく世界中で見ることができます。

さまざまな壁に直面する、障がいのある人々

撮影の練習をする少年たち。
© UNICEF Cambodia/2015/Sam Waller
撮影の練習をする少年たち。

カンボジアで障がいのある人たちは最も貧しく、最も社会的に除外された存在です。教育へのアクセスには多くの壁が存在します。カンボジアの識字率は全体で80%ですが、読み書きができる障がいのあるおとなは、たった56%に留まっています。保健ケアを提供する人々が、障がいのある人たちを支援するための知識を十分伴っていないだけでなく、そのケアを受ける費用は非常に高額です。そのため、障がいのある家族をもつ家庭は、極度の貧困状態*に陥る可能性が2倍に上ります。
*1日1.25ドル未満で生活する、必要最低限の生活水準が満たされていない状態。

見ることや歩くこと、聞くことが難しいから、障がいがあるのではありません。平等に市民生活に参加することが、身体的、社会的、法的な壁で阻まれたときに、障がいが生まれるのです。ワークショップで若者たちが撮影した、力強く、胸を打つ映像をご覧ください。若者たちのたぐいまれなる才能を見てとれることでしょう。彼らのディスアビリティ(障がい)ではなく、アビリティ(才能)を感じていただけると思います。

「障がいのある子どもたちや家族は、日常生活のあらゆる活動に参加する等しい権利とポテンシャルを持っています。このワークショップは、障がいのある若者たちもカンボジアの社会経済に参加し、貢献することができるということを証明する機会となったのです」と、ユニセフ・カンボジア事務所、子どもの権利のための地域自治部門チーフのトーマス・ジェンセンが語ります。

ユニセフは障がいのある子どもやおとなの権利の保護と促進を行うと共に、障がいのある人たちも取り込んだガバナンスやコミュニティ開発を行うことができるよう、現地の意思決定者の能力育成への支援も行っています。また、ユニセフは障がいのある人々への支援に特化したNGO団体を通して、障がいのある子どもたちへの支援を行っています。

可能性を最大限に生かせるように

カメラ位置を調節するサユンさん(20歳)とチータさん(22歳)。
© UNICEF Cambodia/2015/Sam Waller
カメラ位置を調節するサユンさん(20歳)とチータさん(22歳)。

ワークショップ最終日に行われたスペシャルイベントで、参加者全員の映像が大きなスクリーンに映し出されました。若き映像クリエーターたちにとって、緊張の一時でもあり、興奮の瞬間でもあります。聴覚障がいのあるソカナさん(22歳)は、「人との繋がりは言葉だけではない」というメッセージを込めた映像を制作しました。

「大きなスクリーンに私の映像が映し出されるなんて、とても不安でした。でも、自分が作った作品を見た瞬間、鳥肌が立ち、とても幸せな気分になりました。あんなに多くの人たちが私の映像を見てくれるなんて!」と、ソカナさんがカンボジアの手話を使って話します。カンボジアで聴覚障がいのある人は5万1,000人。その大半の人々は、生涯でたった一度も手話を学ぶことができず、その98%の人々が会話や手話、筆談なしで生活を送っているとみられています。

カンボジアのすべての子どもたちが人生の公平なスタートラインを切ることができるようになるまで、長い道のりが必要だということは明らかです。しかし、ワンミニッツ・ビデオのようなイニシアチブが、障がいのある若者たちが声を上げ、可能性を発揮する機会を与え、若者たちのエンパワメント(能力の育成)を支えていくのです。これは、カンボジアのすべての人は尊い存在であると認められると共に、それぞれの持つ可能性を最大限に生かすことができるような社会に向けた道のりの、大切な一歩です。

  • ソカナさんのワンミニッツ・ビデオはこちら

他の学生たちが作ったワンミニッツ・ビデオも、こちらでご覧いただけます。

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